ガチレズ大井の入水とその後

ガチレズ大井bot @oi_bian

「サアドウシタ？　恥ズカシイ悩ミナノカ？　モシカシテ望マナイ妊娠カ？」 「違います」 　第一、妊娠なら秒単位で望んでいる。相手が北上さんという条件付きですが。

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「ジャア、暗イ本ノ読ミ過ギカ？　太宰治カ、ウェルテルデモ読ンダカ？」 「人間文化に詳しいですね」 「元艦娘ダシナ私」 「ん？」 「何デモナイ」 　今、世界観の確信に触れた気がするが、気にしない方向でいこうと思います。

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「貴方はさっき、親から貰った命を粗末にするなといいましたよね」 「言ッタ」 「その、親が原因なのです。私達艦娘の場合、親代わりといえば提督」 「提督ト喧嘩シタノ？」 「喧嘩どころじゃないです。結婚するんです」 「誰ト？」 「私が。提督と」

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「読メタゾ。好キデモナイ提督ト結婚サセラレル前ニ、北上ト心中シヨウトシタンダナ」 「そう、なり、ますね」 　

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　ヲ級さんはコーヒーもう一杯いるか？　と聞いてきたが、ここはケーキをもう一個くださいとお願いする私です。お菓子のお代わりをする客なんて前代未聞だ、という顔をされたけど気にしない。

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「大井、オ前ノ気持チハ分カラナクモナイ。デモナ、死ヌナンテ短絡的ジャナイカ。オイ、ケーキ食イ過ギダロ。取リアエズ生キテ、何カ解決策ヲ探セバイイダロ。チョット、オ前ケーキドンダケ 食ウンダ」

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「私だけが嫁ぐというのなら、まだ我慢できますよ。どうせすぐ私の人柄に幻滅して離婚されるんですから。でも北上さんまで娶るなんてありえない。北上さんは性格がいいから、提督と婚姻期間が長引きそうじゃないですか」 「ケーキガ……ケーキガ……」

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「こめかみに銃口を突きつけられながら、無理矢理提督デレな台詞を収録させられた屈辱が貴方にお分かりか」 「ソンナニ嫌ナ奴ナノ？　提督ッテ。後ケーキ代払エヨ。ソレ三人前ダカラナ。オイケーキマダ食ベ、ヤメロ……クダサイ……」

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「提督？　うちの提督！？　最低ですよ。脳味噌の代わりに子宮が詰まってるような女です。そのうえ万年生理不順で、ヒステリー＆ヒステリー。あげく人前で欝ると同情して貰えると自覚してる下衆。同属嫌悪で千倍憎い」 「ソウカ、似タモノ同士ダカラ余計ニ嫌ナンダナ……ケーキ残シテ、ナ？」

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「ヨシ分カッタ。一肌脱ゴウ。戦艦ル級ニモ声ヲカケテ、今夜、舞鶴鎮守府ヲ襲撃スルヨ」 「提督を殺してくれるんですね！？」 「オ前、私ヨリ敵キャラジミテルゾ」

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「鎮守府、壊滅サセテヤルヨ。修理費デ、ケッコンカッコカリ用ノ資金ナンテ吹ッ飛ブダロ」 「おお」 「アト大井ト北上ハ、全力デ手ヲ抜イテ戦エ。提督ニ幻滅サレル勢イデ。ドウセ提督LOVE勢ガ、良イトコ見セヨウトシテ奮戦スル筈」 「それでついでに提督を殺すんですね？」 「殺人カラ離レロ」

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「提督ガ他ノ艦娘ニ惚レルヨウニ誘導スルッテ事サ。ダカラケーキ食ウノ止メロッテ。ヤメ……分カッタ、鎮守府マデ送ッテクカラ。ケーキハモウイイダロ？　私ガ悪カッタヨ」

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ケッコンカッコカリ、そんなものもありましたね。でも私は合法的に回避。私はレズ。私が嫁ぐのは北上さん相手のみ。ありがとう空母ヲ級さん！　そこらの艦娘より話が通じる貴方って何者？

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【前回までのあらすじ】 『絶対正義の体現者、大井と北上は果敢にも敵地へ潜入する。そこで出会うは深海棲艦、空母ヲ級。大井のカリスマに恐れをなしたヲ級は跪き、ジュウコンカッコカリからの開放を手伝うと誓うのであった』

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「ナンデモナイ……ヨウナコトガ……シアワセダッタト……オモウ」 　何故かヲ級さんは憂鬱なテンションですが、そんな些細なことに気配りの出切る私ではなかった。 「あーなんということでしょう！　敵襲です！　敵襲です提督！　我が鎮守府がもう滅茶苦茶にやられてます♥」

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　何で嬉しそうなんだ大井ふざけんな貴様、などという提督の喚き声をBGMに、快刀乱麻の活躍を見せるヲ級さん。凄い。惚れる。きっとタチ。 「アンマリクッツクナヨ。歩キ辛イダロ」 「だってぇ」 　なんという面倒見の良さ。高度なバリタチを感じる。

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「バリタチ違ウ。チョット昔ヲ思イ出シタダケ」 「昔？」 「ソウ、昔。ヨク妹ノ世話シテタカラナ。大井トハ全然タイプガ違ウケド、手ノカカル所ハ似テルカナ」 　手のかかる妹を持った空母……。 「私ガ被害担当艦シテヤラナイト、何モ出来ナイ子ダッタ」 　ヲ級さん、貴方の本当の名前はもしや。

ガチレズ大井bot @oi_bian

ヲ級さんは鶴姉妹の部屋の前で、なにやら考え事をしておりました。うちの鎮守は既に、翔鶴さんも瑞鶴さんも揃っています。 「同じ種類の艦娘が同時に複数存在する仕様って、残酷ですよね」 　過去の自分と同じ顔をした他人が、最愛の妹と寄り添っている図を見たヲ級さんは今どんな気持ちなんだろう。

ガチレズ大井bot @oi_bian

「やっぱ瑞鶴さんと会いたいですか？　話つけてきましょうか？　酸素魚雷で脅せばすぐですよ」 「イヤ、イイヨ」 　ヲ級さんは首を横に振る。 「大井、イイ事教エテヤルヨ」 「いいこと？」 　なんだろ、レズなテクニックかな……。

ガチレズ大井bot @oi_bian

「轟沈シタラサ、全部オシマイダト思ッテタンダ。妹ヲ庇ッテ海ニ沈ム姉。格好イイダロウ？　デモ違ッタンダ。コンナ姿ニナルナンテ思ワナカッタ。今ハマシダケド、時々無償ニ暴レタクナル。深海棲艦ニナルッテソウイウ事ナンダ。自我モ壊レテク。私ハ私ジャナクナッテク」

ガチレズ大井bot @oi_bian

「コンナニ落チブレテモ、私ハマダ、オ姉チャンナンダナ。今デモ夢ニ見ルヨ、瑞鶴ヨ。元気カナッテ」 「ヲ級さん、やっぱり会いましょうよ瑞鶴さんと」 「ダメ。モウコノ鎮守府ニハ、私以外ノ翔鶴ガイルンダロ？　ダッタラ私ニ出来ル事ナンテ、瑞鶴ニ討タレテ手柄ニナッテヤルクライサ」

ガチレズ大井bot @oi_bian

タチじゃなくて長女故の面倒見の良さだったのか……。 って、ん？ 「起きて、翔鶴姉！」 「大変。敵襲！？」 　と、どうやら部屋の前で騒いだせいで、鶴姉妹のお二人が目をさましたようで。 「深海棲艦！？　なんで鎮守府の中にいるの！？」 　瑞鶴さんは弓を振り絞り……待って、この流れは。

ガチレズ大井bot @oi_bian

――言ッタロ大井。私ニ出来ルノハ、瑞鶴ニ討タレテ手柄ニナッテヤル事クライダッテ。

ガチレズ大井bot @oi_bian

「やったぁ！　見てた？　翔鶴姉」 　瑞鶴さんは、姉と抱き合っている。 　ヲ級さんの破片を踏みしめながら。 　精鋭部隊として鍛え上げられた瑞鶴さんの一撃は重く、ただただコゲ痕だけを残して全てを終わらせました。

ガチレズ大井bot @oi_bian

この件で瑞鶴さんは昇進。新たに提督のお気に入りとなり、ケッコンカッコカリの候補へ。私と北上さんはろくな活躍が出来なかったため、提督の求愛対象から外れました。万事解決。めでたしめでたし。 でも、あのヲ級さんはもういない。 いないんです。