【ニンジャの二次創作】スモルダーリング・ハンブル・ストールキーパー
- simanezumi88_n
- 2046
- 0
- 0
- 0
(当アカウントはこれからニンジャの二次創作投下マシーンとなります。これはやさすい漬けのマグロが水槽の中で見た夢であり、本編・公式・翻訳チームとは一切関係がございません)
2014-02-26 22:37:26(TLが私のツイートで埋まる可能性は実際高いです。煩わしく感じられたならリムーブ、ミュート等をお願いいたします)(専用の実況タグ #yasasui_nj が用意されております。生暖かい目で突っ込み感想何か実況用にどうぞお使い下さい)
2014-02-26 22:38:13ファーフォワーファーヒャラリートントントントントトトトトン。 立ち上る豊かな香り。ミコー・プリエステスと二頭のコマイヌが舞い踊る 。殺伐な日常を非日常に変える魔法の調べ。鬱蒼と繁るバンブーの林。時折吹き付ける生温い風。ここはネオサイタマ郊外のモモヤ寺。 1
2014-02-26 22:41:32重金属酸性雨越しに見える空がやがて茜色に染まり、人々の着込む耐酸性レインコートが色とりどりの華を咲かせる。古より続く境内の喧騒。今年の夏は例年になく蒸し暑く、竹林からのバイオセミの鳴き声が一層喧しく感じられる。 2
2014-02-26 22:44:06ハチマキをしめたイソシギが大粒の汗を光らせながらぼやく。「もう夕方なのにあっちぃな…。クソ暑いのに、みんなよく来るもんだよ」出店と人々でごった返すモモヤ寺の境内で、イソシギは得体の知れないボール状の焼き料理の出店を構え、器用な手捌きで来客応対する。 3
2014-02-26 22:46:12「ラッシャイ!暑い時こそ、これだ!」それは古より伝わる、名前の失われた料理。ひっそりとレシピとテクニックのみが口伝で細々と伝えられている。物珍しさから客の列は鈴なりとなり、イソシギはひたすらゼンマイ機械のように体を動かし続けていた。 4
2014-02-26 22:49:13半ば朽ちかけた朱塗りのトリイゲートから、灯籠の立ち並ぶ石畳を経て、人々は現世から祭りの場へと吸い込まれていく。ここは現実と幻想の狭間。普段は近付く事すら容易ではない得体の知れない物へ自然と引き付けられていく。 5
2014-02-26 22:52:23「それ、2パックちょうだい!」「マイド!美味しさに頬が落ちても知らないぞ!」降りしきる雨を物ともせず、人々の熱気は高まる。自分のワザマエを披露できる数少ない場。今年もなんとかモモヤ寺でのノルマを果たせそうだ。イソシギは安堵に思わず胸を撫で下ろす。 6
2014-02-26 22:55:11だが、最近はこの界隈で出店を開く仲間の数は減っている。プーレク玉埼もメンポ売りのマエダもバンブー職人のクメミヤの姿もない。場所代やロイヤリティの値上げ、厳しくなるヤクザの嫌がらせ、メガコーポを始めとするカチグミとマケグミの格差の拡大。 7
2014-02-26 22:59:05年々増す閉塞感と比例するように、オマツリへ出向く人々の熱気と数は上昇し、境内から押し出される人も出る有り様である。鳴り止まないバイオセミとフエとタイコ。先程からは、トリイゲートの脇でレッサーボンズが境内に入れない人々へしきりに謝りっぱなしである。 8
2014-02-26 23:01:43「スミマセン、これ以上は境内と皆様の安全がアブナイので、入れません。本当にスミマセン」まるで高速鹿威しのように頭を上下するレッサーボンズの側を、一人のスクエアカット男が通りすぎる。「悪ィな、俺を止めるとお前さんの命もアブナイぜ」「アイエッ?!」 9
2014-02-26 23:04:46剣呑な眼光でレッサーボンズを威竦めたスクエアカット男は、何事も無かったかのように境内の人混みの中へ吸い込まれていった。男の頬には無数の刀傷。石畳を踏みしめ、迷いなく男はイソシギの出店へ辿り着く。「よう。繁盛してるじゃねェか」「お客さん、今日は売り切…ヨウゾウ!」 10
2014-02-26 23:07:26イソシギとヨウゾウは地元の幼馴染みであり、長年つるんできた仲である。それ故に、イソシギは幼馴染みの目に映る燠火の様な気配に声が低くなる。「…お前、なんでこんな所に?」「ちと野暮用でな…、後でIRCへ連絡をくれ」「おう…?」 11
2014-02-26 23:10:25数時間後。バイオセミからバイオコオロギへ、モモヤ寺の喧騒の主は様変わりする。ミコー・プリエステスの舞と音楽はいよいよ激しくなり、オマツリもクライマックスと知れる。喧騒の片隅で、片付けを終え、ぬらぬら光るバイオ鯉を見やりながらイソシギはそっとIRC通話を行う。 13
2014-02-26 23:13:09「モシモシ。イソシギだ」『おう、ヨウゾウだ。お前…早い内にその辺りから離れろ。殺される』「ナンデ?何を言ってるんだ?」ポチャン。イソシギが慌てて振り向くと、バイオ鯉が跳ねる姿が見える。コロコロリーリー…無秩序なバイオコオロギの喧騒。 14
2014-02-26 23:16:20商売柄、鳶職のヨウゾウが物騒な筋に身をやつした事は知っているが、突然の物言いにイソシギは身を固くする。『お前、最近仲間の数が減っている事は分かっているだろう。つまりだ』「次に狙われるのは俺だ、と?ハッ、バカバカしい。慎ましく商売してナンデ殺されるんだよ」 15
2014-02-26 23:19:08『…奴らにとっては邪魔なんだよアイエッ』ブツッ。通信が途切れる。「モシモシ?どうした?ヨウゾウ?…オイッ!」…熱気冷めやらぬ周囲の中、 独り取り残されたイソシギの背中を冷たい汗が滑り落ちる。「…だが、俺はもう逃げる訳にはいかないんだ」 16
2014-02-26 23:21:27…イソシギはかつて一流のスシ職人を目指し、然るべきメンターの元で修行をしていた。しかし、厳しい教えの前にイソシギは挫折。逃げるようにヨウゾウの元へ転がり込み、名前を失った料理のメンターを紹介してもらい(紹介という名の厄介払いであろう)、今に至る。 17
2014-02-26 23:24:09…そのメンターも先日この世を去った。かつて通っていたスシ屋も合理化と低価格の激流に飲み込まれ、ネオサイタマの闇夜にかき消えた。何もかもが朧な、分厚い闇に反して儚いこの世。果たして俺は悔いなくして死ねるのか。危うい生活を凌ぎつつ燻るちっぽけな意地。 18
2014-02-26 23:24:35…かくしてイソシギは、己の生き様を刻むべく出店の準備へ向かう。そこに何があろうとも、最後まで人の笑顔と自分の意地を貫き通せたと、世話になりっぱなしのヨウゾウに己の意思を伝えるべく。行く末を見守るかのようなバイオ蛍が儚い光を明滅させる。 19
2014-02-26 23:28:20