福島県立いわき総合高校卒業式での校長式辞

いしいみちこ @mcmckokoro

今日は卒業式でした。ほんとうにイイ卒業式でした。３年生たちが学舎を巣立っていきました。きみらが幸せな社会をつくっていってくれることを、幸多からんことを、心から祈ってます。本校校長の式辞をここに載せたいと思います。

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ただいま栄えある卒業証書を手にされた生徒諸君、卒業、おめでとう。そして、第10期生の保護者の皆様に、心からお祝いを申し上げます。併せて、今日まで本校に寄せられた数々の御協力に対し、教職員を代表して感謝の意を表します。

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今年度第３年次として本校を牽引した第十期生の皆さんの３年間は、平成23年３月11日の東日本大震災とそれに続く東京電力福島第一原子力発電所事故について触れずには語れません。当時の様子を、アトリエ公演「ブルーシート」で第58回岸田國士戯曲賞を受賞した飴屋法水氏は、次のように記しました

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『結局、４月25日に、延期された、「入学式」の時には、北校舎はもう、入れないことに、なっていました。それで、最初のうちは、近くの小学校の教室借りたり・・・そんで高校生うるさいって怒られたり・・・そこにみえる体育館の中を、何個もこう、壁でしきったり、それが俺たちの「教室」でした。

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それから、１年の２学期になる頃に、そこに見える、その２階建ての、プレハブの「仮設校舎」ができて、そこに移ったわけです。』

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北校舎があった先の崖にかけられていたブルーシートは消えましたが、今日の日まで、この「仮設校舎」が教室となりました。被災し、避難し、今なお不自由な生活を送っている仲間も多い。皆さん、よくがんばってきました。

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さて、今年度、本校の沿革の起点となる内郷村立農業補習学校設置から100年、同女子部誕生から90年の年、福島県立内郷高等学校の歴史と伝統を受け継ぎ、進化を遂げた本校は、いわき総合高等学校十周年記念式典を挙行しました。この記念の年、本校生は、あらゆる分野で活躍しました。

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第10回研究発表会に向けて、全員が、課題研究、作品制作、資格取得に取り組みました。１月16日(木)に本校で開催された、第13回福島県総合学科高等学校生徒発表会においては、本校を代表して、Mさんが「ジョン・レノンの死」を発表し、大きな拍手を受けました。

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芸術表現系列の諸君の公演会や作品発表は学びの集大成として見事なものでした。また、部活動やクラブ活動では、東北レベルの大会に出場したハンドボール、陸上、家庭クラブをはじめ、多くの部が、県大会において優秀な成績を収めました。

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陸上部、柔道部は個人の部で東北大会に出場し、写真部は明年の全国高等学校総合文化祭に推薦されています。演劇部は、震災後の日常を過ごす本校生の姿を『F. F for XI.Ⅲ.MMXI』『北校舎、はっぴーせっと』『あひる月 １３』の３つの作品にまとめ、豊岡市や東京都で公演を行いました

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校内には、吹奏楽部が奏でる音楽や合唱部の歌声が響き、華道部や美術部の作品が潤いをもたらしています。生徒会活動も創造的で、その伝統は、前生徒会長　木村君から、現生徒会長　鈴木さんに確実に引き継がれました。ボランティア活動に地道に取り組んでいる生徒諸君の姿もすばらしい。

いしいみちこ @mcmckokoro

このように、本校は生徒諸君が自らを表現する場を多数用意し、多くの生徒が日々喝采を受け、別の日には仲間に喝采を送っています。学校のあるべき姿がここにはあります。歴代の先生方と生徒諸君が作りあげた、この創造的で自由闊達な校風を一層発展させることを、改めて固く誓います。

いしいみちこ @mcmckokoro

さて、今日、本校を卒業される皆さんに、私は「人を幸せにする知性」という言葉を送ります。人を幸せにする知性を、自ら育み続けてほしい。知性とは、自分が知らないことを知ろうとする謙虚さや積極性、物事を冷静に価値づけ、周りの人々に理解してもらおうとする態度、そして行動する力のことです。

いしいみちこ @mcmckokoro

その知性を、人々を幸せにするために使ってほしい。

いしいみちこ @mcmckokoro

いつの時代も様々な課題が存在するものですが、とりわけ今は、福島県の復興は始まったばかりであり、原子力利用を含めたエネルギーと環境の問題、少子高齢化と人口減、諸外国との関係等々、我が国には課題が山積しています。

いしいみちこ @mcmckokoro

世界に目を向ければ、より大きな格差による貧困、衛生、食糧、教育の問題、国や民族間の紛争など、問題がたくさんあり、君たち一人一人が、それらの問題の所在を理解し、自らの判断により適切に行動することが、ますます重要になっています。

いしいみちこ @mcmckokoro

それらの問題は、今現在、判断を行っている大人の問題であるよりも、むしろ皆さんのような若者や皆さんの子供達、つまりは日本や世界、地球の未来に関わる問題なのです。あなたたちが本校で学んだことや自らを表現する力は、きっと、一人一人が判断し行動するための基礎的な力として、

いしいみちこ @mcmckokoro

君たちを助けていってくれるでしょう。時には、否定したり否定されたり、しかしそれは、人格をではなく、考え方に対してのものであり、意見の違いや考えの違いを乗り越えて、周りの人々と、ちゃんと関係を持っていってくれるものと期待しています。

いしいみちこ @mcmckokoro

これから、皆さんには何度もの春が巡ってきます。そのたびに、今日の良き日を、自分が自らの足で歩み始めた出発点として、思い出してほしい。すべては、私の成長の糧であったと。記憶はうすれるかもしれないが、しかし、決してなくならない。君たちの頭の中にちゃんと残っている。

いしいみちこ @mcmckokoro

大切なのは、思いを持ち続けること、それを誰かに伝えること、そして行動すること。そうして初めて、思いは現実になる。

いしいみちこ @mcmckokoro

皆さんの今があるのは、未来があるのは、何年たっても変わらぬ思いを持っていられるとしたら、それは、あなた自身の努力の賜であるとともに、あなたの家族や友の笑顔によるのです。ここ、いわき総合高等学校があなたの居場所であったからなのです。

いしいみちこ @mcmckokoro

あなたたちが３年間で作り上げてきた未来の図面を、思ってきたことを現実にしていってください。若い皆さんの、その人生は始まったばかりです。皆さんの前途を祝します。 平成２６年３月１日 　　　　　　　　　　　　　　 福島県立いわき総合高等学校長　吉田豊彦