#完全ノープラン艦これ与太話 【デス・スマイルズ・イン・ザ・ライト】 #3
けたたましく響く絶叫を聞きながら、夕立の視界はぐるぐると回っていた。もしあの時。一瞬でも気を取られることなく、すぐに跳んでいたら。前方車輌を掴めたかもしれない。あるいは衝動に身を任せていれば、あの戦闘機も踏み壊せたかもしれない。一瞬の優柔不断。夕立は崩れ落ちた。 #KZNPLN
2014-03-03 01:48:38泣き叫ぶ駆逐艦達の輪を横切り、崩れ落ちた夕立の元へ、羽黒がゆっくりと、決断的に歩み寄った。「夕立さん。どっちに」「……ぽい?」「どっちに、居たんですか」羽黒の瞳は、怒りに満ちていた。それが自分へ向けられた怒りではない事は、すぐに感じ取れた。「……あっち。南」 #KZNPLN
2014-03-03 01:51:05「わかりました。助けを呼びます」羽黒はゆっくりと、感情を押し殺すように、声を絞り出した。「皆さん。すぐに助けが来ます。待ちましょう、それまで」その感情が、悲しみなのか怒りなのか、殺意なのか、破壊衝動なのか。夕立にはわからなかった。 #KZNPLN
2014-03-03 01:52:58あれほどしつこく追いすがっていた戦闘機は、今や見る影もない。ヨコスカへ向かう前方車輌を追っているのか。暗い夜の海に、喪に服す暇を与えぬような風雨と雷光が鳴り響く。永遠とも思える時間の果てに、西からシンカンセンが向かってきた。救助だろう。 #KZNPLN
2014-03-03 01:54:40……だが、何かがおかしい!救助目的にしては、その速力は圧倒的!ブレーキをかける気配がない!シンカンセンはそのまま、放置された車輌の横を駆け抜け、東へ向かっていくではないか!擦れ違いは一瞬、そのまま救助は、遠くへ向かっていく…… #KZNPLN
2014-03-03 01:56:09ついに鎮守府から見捨てられたか。絶望が上塗りされていく。現在の燃料で、ここから海上を歩くのは難しかろう。ここで朽ち果てるのか。響と共に。……その時である! #KZNPLN
2014-03-03 01:57:59東の彼方に消えたかと思われたシンカンセンが、おお、なんということだ!逆走して戻ってきている!今度は徐々に減速し、擦れ違い……停車した!!だが、少し待て!皆一様に、更なる違和感に気付く!戻ってきた救助シンカンセンの、先頭車両が……無い!切り離されている! #KZNPLN
2014-03-03 02:00:08それだけではない!先程までそこにいた筈の羽黒が、車輌から姿を消しているではないか!怪奇!「おい!何ボサッとしてんだ!早くこっち移れ!」困惑する一同に怒号が飛ぶ!「エッ!?」「えっ、じゃねーよ!早く!鎮守府へ戻るぞ!離れるんだ!あの先頭車輌から!」 #KZNPLN
2014-03-03 02:02:21怒号の主、木曾は大急ぎで駆逐艦達を救助シンカンセンへ収容。壁の瓦礫の先、最早どのような手段でも救助不可能となった響へ向け、規律し着帽敬礼。シンカンセンが再び発進した。電たちの待つ母港へ向けて。 #KZNPLN
2014-03-03 02:04:35吹き荒ぶ暴風雨。鳴り響く雷鳴の中。東へ向けひた走る一両のシンカンセン先頭車両あり。その車内に艦の気配はなく、運転は自動操縦。そしてその屋上に、向かい合う2隻の巡洋艦。 #KZNPLN
2014-03-03 02:06:13「どうして、ですか」羽黒は暴風雨を身体で受けながら、眼前の艦影を凝視する。あふれんばかりの殺意と憎悪の詰まった、恐るべき視線。常人ならば即発狂か心停止に至るほどの視線を浴びて、それでもなお、神通は嗤っていた。「……かわいそう、だったから」 #KZNPLN
2014-03-03 02:08:28