ソ連はユダヤ人に支配されてたの？ ― 「ユダヤ・ボリシェヴィズム」陰謀論のウソ

直立演人 @royterek

ボリシェヴィキ及びソ連はユダヤ人に支配されていたという陰謀説が日本でも相当出回ってしまってますが、これがいかにトンデモないでっち上げであるかは、英語のwikiの"Jewish Bolshevism"の"Jews in the Bolshevik party"を見れば一目瞭然です。

直立演人 @royterek

「ユダヤ・ボリシェヴィズム」陰謀論（http://t.co/1SKkw9eRuK）の日本での受容は、第二次大戦前、特にロシア革命直後のいわゆる「シベリア出兵」の時代に遡る。ロシア革命はユダヤ人の仕業だという陰謀論は、反革命の白軍側の人間が広めたのを、その後ナチが大々的に利用した。

直立演人 @royterek

うひょー、palezioの「ロシア革命とユダヤ人解放運動とソビエト」というまとめ（http://t.co/bd6N1GeFJx）、レーニンとスターリンも「ユダヤ人」にしちゃってるトンデモ資料そのまま提示しちゃってるよ。レーニンは母方の祖母のみがユダヤ系という説が有力ではあるが。

Don Quixote 3001 @DonQuixote3001

@royterek この表自体はリチャードコシミズ信奉者の （アットマーク）thot_gukumatz 氏が作られたもので、架空の人名ではないでしょうか、たぶん。

直立演人 @royterek

【重要】１０月革命で発足したソビエト政府の閣僚名簿、palezioが引いている捏造リスト（http://t.co/XeaBhnbwbk）と英語wikiのOriginal People's Commissars（http://t.co/keQGgMr6BS）をよく見比べてください！

直立演人 @royterek

10月革命直後に発足した「ソビエト政権」の閣僚（人民委員）は全部で１６人。そのうち、確実にユダヤ人だと言えるのはトロツキーのみである。レーニンは母方の祖母がユダヤ人と言われているが、彼を「ユダヤ人」とみなし得るのは、本人がそう認めている場合だろうが、そのような事実は伝わってない。

直立演人 @royterek

なお、wiki"Jewish Bolshevism"によれば（出典あり）、1923年から1930年のあいだに存在したソビエト政権の閣僚（＝人民委員）２３人のうち、ユダヤ系は５人だったとのこと。http://t.co/1SKkw9eRuK

直立演人 @royterek

palezioが引いていたトンデモ版「10月革命で発足した「ソビエト政府」の閣僚」名簿（http://t.co/XeaBhnbwbk）の由来が気になったので、46年まで存続した「人民委員」名簿を調べたところ、チチェーリンとシュテインベルクの二人のみ確認できた。ただし前者は露貴族。

直立演人 @royterek

ちなみに、新生ソビエト政権の閣僚（人民委員）ポストには収まらなかったものの、トロツキー以外で、ソビエト初期においてボリシェヴィキ幹部として有名だったユダヤ人に、ジノヴィエフ、ウリツキー、カーメネフ、スヴェルドロフ、ソコルニコフがいる。ただし、カーメネフは母がロシア人。

直立演人 @royterek

「1922年の党の統計では、ユダヤ人共産党員の数は19,564人で、党員全体の5.21％を占めていた（http://t.co/zF2K7NwgtU）。1917年の10月革命以前に党に参加したユダヤ人は党員全体の7.1％を占めていた（http://t.co/4RcLvwnDAS）」

直立演人 @royterek

「1929年のソ連中央執行委員会メンバーの民族別構成は以下の通り：ロシア人402名、ウクライナ人95名、ユダヤ人55名、ラトヴィア人26名、ポーランド人13名、ドイツ人12名。ユダヤ人の代表者の数は1927年の60名から減少した（http://t.co/xBQGHTFCyd）」

直立演人 @royterek

「（ソ連政府の指導部に当たる）政治局内のユダヤ人の割合は、1918年8月、政治局の最も過激なメンバーだたモイセイ・ウリツキーの暗殺を皮切りに、急速に減少し始めた。続いて、ヤアコフ・スヴェルドロフが1919年3月に病死し、ソコルニコフが失脚した。」

直立演人 @royterek

「1922年には、中央委員会（政治局の新しい名称）のユダヤ人メンバーは。トロツキー、ジノヴィエフ、カーメネフの3人のみとなった。結局、彼らはみなスターリンによって抹殺された。ジノヴィエフとカーメネフは1936年に銃殺され、トロツキーは1940年に暗殺された。」

直立演人 @royterek

「1920年代には、中央執行委員、党中央委員、ソ連邦及びロシア共和国ソビエト幹部会幹部、人民委員（コミッサール）のメンバー417名のうち、ユダヤ人は全体の６％を構成していた（http://t.co/zF2K7NwgtU）」

直立演人 @royterek

スターリンが権力基盤を確立する1920年代末から1930年代前半にかけては、大飢饉や富農撲滅キャンペーンにおいては数的に最も犠牲となったのはウクライナ人であったはずだが、1936年以降の大粛清では、特定の民族が比率において突出して犠牲になることはなかったと思われる。

直立演人 @royterek

一方、スターリン時代において、スターリンの側近として悪名高かったユダヤ人が二人いる。そのポスト上最も悪名高かったのは、1934年から1936年までの約二年間の粛清業務を（当然ながらスターリンの事実上の指揮の下で）とり仕切った内務人民委員部（ＮＫＶＤ）長官ゲンリヒ・ヤゴーダである。

直立演人 @royterek

「スターリンの大粛清」と言えば、普通、ヤゴーダの逮捕に代わってエジョフがＮＫＶＤ長官に就いた1936年以降のテロルを指す。したがって、ヤゴーダの時代の粛清は相対的にマシだったとはいえ、テロ執行人がユダヤ人だったことは、ソ連市民における反ユダヤ感情の基礎の一つになったかもしれない。

直立演人 @royterek

スターリンのもう一人の側近のユダヤ人がラーザリ・カガノーヴィッチだったが、ウクライナ人の間に根強い反ユダヤ的感情ないしユダヤ人不信の歴史的要因の一つが、カガノーヴィッチというウクライナ出身のボリシェヴィキの存在にあったことは間違いない。http://t.co/8D4XDx5aDu

直立演人 @royterek

1927年の統計（共産党員の民族別構成を明示した最後の統計と言われる）によれば、ソ連全体のユダヤ人共産党員は党員全体の4.3％（全国平均の約２倍の比率）を占め、都市部で行政職に就いていたユダヤ人の全体に占める割合はモスクワで10.3％、ウクライナで22.6%、ベラルーシで30%。

直立演人 @royterek

この数字は、1927年の第15回共産党党大会でスターリンと同郷の共産党幹部オルジョニキーゼが行った報告に基づく。https://t.co/vlPipnCFpn

直立演人 @royterek

以上、ロシア革命からスターリン体制初期にかけての共産党およびソ連政府の指導層におけるユダヤ人の割合や著名な人物についてのあらましを紹介したが、ここから言えるのはだいたい以下のようなことだろう。

直立演人 @royterek

①ロシア帝国全体において、ユダヤ人は人口比的にはきわめて少なかったが、社会主義や革命運動に参加した人の割合が他の諸民族と比べて相対的に高かったことは疑いない（ただし、ラトヴィア人もおそらく同様）。こうした傾向はロシア革命後のソ連でも、少なくとも独ソ戦の開始までは基本的に見られた。

直立演人 @royterek

②ボリシェヴィキは他の社会主義ないし革命政党と比べて、党員の中に占めるユダヤ人の割合は比較的少なかったと言えるが、トロツキー、スヴェルドロフ、ジノヴィエフなど、幹部層において目立っていた。とくにトロツキーは赤軍総司令官として反ユダヤ主義者の恰好の標的になったことが知られている。

直立演人 @royterek

②（つづき）さらに、スターリン体制の確立期に、ヤゴーダとカガノーヴィッチという評判のよくないユダヤ人がたまたまスターリンの側近にいたことが、反ユダヤ的感情の一因となったことは間違いない。

直立演人 @royterek

②（つづき）なお、カガノーヴィッチは1925年から1928年にかけてウクライナ共産党第一書記を務めたことから、党とウクライナ民族主義者との闘争を率いた人物であった。カガノーヴィッチは、1930年代初頭のウクライナの大飢饉の時はモスクワにいたが、執行部として責任の一旦を担っている。