『それでも夜は明ける』、集中し続けた(息をひそめ続けた)2時間超。惹きつけられる演技、表情、十分な間。映画を観たゾ! というガッチリとした手応えのある力作だった。
2014-03-12 00:32:35血と汗と涙と唾と鼻水と。そうしたものが全てのやるせなさと理不尽と生き抜く意志を象徴しているようで、これはまさしく「人間の物語」なのだと実感させられた。
2014-03-12 00:32:58まず素晴らしかったのは、主演キウェテル・イジョフォーの様々なものを背負った者の表情。世界的な称賛も当然のことと思う。けど、個人的にはそれよりもマイケル・ファスベンダーに惹きつけられた。
2014-03-12 00:35:57ファスベンダー扮するエップスは悪逆非道というより重度の粗忽者。ファスベンダーの難しいところはエップスという固有の役柄として演じるだけでは足りず、彼を通して当時の南部の白人農場主は(程度の差こそあれ)みんなああなんだと観客に思わせないといけないと思うだけど、そこんとこ完璧だった。
2014-03-12 00:36:06逆にブラッド・ピットはなんであそこまで物分かりがいいというか進歩的なの? という感じ。いろんな土地を渡り歩いた素性知らずの風来坊なら、「政治や制度のことはよくわからんが人が人を飼うってなんか違うと思うぜ」とかなんとか言ってほしかった。「理屈ではなく本質を見抜く者」として。
2014-03-12 00:38:40突然出てきて「奴隷制は法的にも宗教的にも間違ってるぜ」ってあからさまに現代人の視点ぶっこんでるようにしか思えないんだけど。「これは実話です」の御触書がなかったら結構冷めたかも。
2014-03-12 00:39:14映画としては非常によくできているんだけどね。自分が冒頭でやられた「自由(解放)への使い」が最後にやってきて、パッツィーや他の奴隷を残して自分だけ救われていくという後味の悪い真実には深く考えさせられるし、首吊りの場面やパッツィーを鞭打ちにした後の表情の長回しは非常に印象に残った。
2014-03-12 00:43:09だけど、奴隷制の酷さ惨めさ救いのなさが『ジャンゴ』ほどには感じないのは、タランティーノみたいなイっちゃった描き方してないのももちろんあるけど、主人公自身が実に有能な点にあると思う。彼は奴隷だったけど、粗忽者エップスですらも必ず一目置く男だった。
2014-03-12 00:44:07だから激しい暴力の仕打ちは彼の絶望の大きなファクターではない。突然の境遇の変化がもたらす惨めさ、先の見えなさ、そして家族と二度と会えない悲しさがその核だった(と思う)んだけど、黒人ながら支配者夫人に収まったオバさんがこぼした「全部入り」の残酷さに比べればまだマシだと思えてしまう。
2014-03-12 00:46:54だから重いのは重いんだけど、ズッシリと落ち込むほどではなく。とても意地悪だけど、救いがないままの方がよかったんではないかと思ってしまう。残された奴隷たちに思いを寄せた方がよっぽど「悪しき人間の歴史」への嫌悪感は募りそう。主人公の視点で見ると個人の物語に収斂されそうでヤなんだな。
2014-03-12 00:50:45そういう意味では、思いっきりエンターテイメントしちゃってスッキリするけど『ジャンゴ』の方が本能的な恐怖に訴えかけてるように思う。棺桶みたいなのに入れられる灼熱地獄の拷問とか鬼の所業でしかなかったしな。
2014-03-12 00:59:15って、あれ? なんか批判みたいになってる! いや、かなり見応えのある作品だったんだけどね。Filmarksでも4.0付けてますし(;^_^A
2014-03-12 00:59:50てことで、グダグダになりましたが、いい映画だったと思います。キャストがみんなよかったし、甘くない! 描き方には好感が持てました。
2014-03-12 01:00:01あ、あと2時間超えの長尺ながらテンポはよかったんだよねえ。最初に拉致されるまで、そこから農園に送られるまで、最初の農園から次へ売られていくまで。あとは船内の出来事や、お使い頼まれついでに逃走を図ろうとして目撃したこと。説明セリフなく理解させる描き方は見事だった。
2014-03-12 01:00:10それでいて、長回しの場面は惜しみなく。というのもニクい。そのストーリーテリングの妙たるや流石スティーブ・マックイーン監督ですな!
2014-03-12 01:00:14