200Ｆ企画：男の話をしよう（7）

「女の話をしよう。」 @MarchenML

今宵も時間と相成りました。劇場の幕が上がります。アンデルセンが語りまするは、高らかに生を謳った英雄の話。どうぞ、お見逃しなきように――！　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

革命は今、松明に焔を灯せ！怒りは重い身体を巡り、血潮となりて傷から流れ落ちる。身軽になるなら構わない、元より何も持ってはいない。だからこその叛乱。だからこその下剋上。傲慢な人の王に誅伐を！憤怒の群れは歓喜に震え、獣の雄叫びを上げる。　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

男は遠く、大陸の先の海を望んだ。人の身でどこまで行けるか、どこまで届くか。歩む彼を止められる者はいない。腕を振るい、略奪、征服。行先に敵は多く、味方も増えた。気が遠くなる行軍の末、男はついに水面の煌きを目にした。それは遥か、神々が愛した海原だった。　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

一瞬にして会場が王の軍勢に……。(ドン引き)

「女の話をしよう。」 @MarchenML

研ぎ澄まされた刃は、ひと撫ですれば大樹を両断する。男は名刀、一寸の狂いなく命を奪った。雲霞烟る高みから打たれる、その拳はただ一度。無駄は一切なく、不純は寸断される。極まった拳打は、ときに山川のせせらぎの如く美しい。　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

竜を倒した武勇。女に裏切られた滑稽さ。果たしてどちらを語るべきか、どちらが男の本質か。竜血を浴びて不死となった男も、背のひとひらを人に刺されあっさりと朽ちた。男は無二の英雄であり、同時にどうしようもなく、人なのだった。　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

次の二作は、同じ人物を語ったもの。しかし作者が異なるため、違う側面から眼差してみた。うまく行っていなかったらオレの力不足だ。

「女の話をしよう。」 @MarchenML

我が沃土を穢すのならば、死よりも陰惨な死を与えん。もう二度と手出しせぬよう、総身を串刺しにしてしまおう。男は火よりも苛烈、氷よりも冷酷なり。理解など求めない、民が恐怖に律すればそれで良し。玉座に在す鋭き眼光。庇護される民は言う、彼こそが鬼なのだと。　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

彼を恐れた民草は、口々に彼を化物とした。曰く、人の血を啜る鬼だと。曰く、惨死こそが彼の快楽だと。そうではない、と訴える声は届かない。男は清らかな心で、聖母の光を信じ闘う。血の臭いが消えずとも、救いはあると信じ続けて。　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

白銀の甲冑を纏い、陽光を背負う。男は主君を盲信し、故に強靭だった。練達の剣技は我が王のために。そう、信じさせてくれれば、良かったのだ。完全な王の間違いすら気づけない。血塗られた丘で、今際のきわに男は知った。王はひとり、泣いていたのだと。　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

漆黒の甲冑を纏い、闇夜を背負う。男は強靭、故に主君を疑った。王の隣で、泣き濡れている女がいる。迷いながら、剣の鋒を我が王へ。その道の間違いすら気づけない。血塗られた丘で、今際のきわに男は知った。王はひとり、泣いていたのだと。　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

善悪とは定まらぬもの。全き善であるために、悪と呼ばれるものを殲滅して回る男がいた。姑息に、無慈悲に、無感情に。機械の振る舞いを強要する自意識は、果たして善か、はたまた悪か？全てを滅ぼし己も死ねば、きっと平和は訪れよう。果てないその日の到来まで、銃口は敵を探す。　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

先のは、アンリミテッド・エミヤ・ワークスからあぶれたものだ。

「女の話をしよう。」 @MarchenML

人が生き、人が死ぬ。そこに意味はあるのだろうか？男は戦場をさ迷い、生きる人を、死にゆく人を見た。無為、ひたすらに無為だった。死ぬために生きるのならば、生まれてくるのが間違いだ。男の想いは亡霊となり、生者の前に立ちはだかる。この無駄な生(せかい)に、幕を下ろそう。　#男の話

「女の話をしよう。」 @MarchenML

人間は考える葦である。而して、葦如きにかような悲痛を叫べようか。人生とは見苦しく、痛々しいもの。傷だらけで汚れを吸った物語こそ、俺の愛でるところである。今宵はこれにて本を閉じよう。続きはまた、次の夜に。　#男の話