ウォルフレン『日本/権力構造の謎』まとめ

カレル・ヴァン・ウォルフレン 『日本/権力構造の謎』まとめ
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H.Takano @midwhite

興味深いことに、一般的な日本人は満州国を「我々の植民地」であったとは考えていない。それは陸軍の植民地だったのであり、日本の植民地ではなかったのだ。日本人は自分が明確に国家の一員として責任の分担を引き受けるとは思わないところがある。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 01:32:06
H.Takano @midwhite

ここに明白な矛盾がある。日本人は一方で大日本帝國の征服や勝利に熱狂し、他方で陸軍の行為を否定するのに矛盾を感じていない。というのは、陸軍が自分たちの国家を代表していたとは思っていないからである。それは数ある集団の1つに過ぎなかったのだ。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 01:35:08
H.Takano @midwhite

政治的な中心や責任の所在の欠けた日本の政治組織を、筆者は<システム>と名付ける。外国人が日本でよく感じるのは、ここに「国家」という概念だけでは包括できない何かの存在だ。そのヒントが、流行語にもなった「日本株式会社」という言葉だ。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 01:49:50
H.Takano @midwhite

日本の官僚は営利事業に関わる許認可権を握り、助成金、税法上の特典、低利融資などを駆使して異常に大きな権力を持つ。省庁は行政指導を用いて民間組織を「自発的に」従わせ、海外および国内市場で各産業を全体として最適な形に構成し、作り替えた。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 01:55:40
H.Takano @midwhite

日本の企業は一時期、資金を殆ど銀行借入金だけに依存していたため、大蔵省と日本銀行には強力な規制力がある。80年代に大多数の大企業が莫大な利潤によって豊かな自己資本を持つに至ったが、今もなお、官界と産業界は緊密な関係を保っている。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 02:00:18
H.Takano @midwhite

また官僚は多くの公益法人を統括し、退職後の再就職先を確保する。これらは主に日本の郵便貯金制度を原資に運営されるが、その予算は事実上、議会のコントロールを受けないため、人目を引かずに官僚の目的を遂行するために支出することができる。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 02:03:06
H.Takano @midwhite

戦後の日本には、圧力団体が雨後のたけのこのように続々と誕生した。主婦、戦没者の遺族、退役軍人、傷痍軍人、農地改革で土地を失った旧地主、旧植民地からの引き揚げ者、そして売春業者などはよく知られている。中政連は後に中小企業の中核組織となった。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 19:28:06
H.Takano @midwhite

新たに登場した新手の圧力団体に対する国民の反応は複雑だった。1958年に2つの復員軍人団体が軍人恩給予算の300億円増額に成功し、一方で日本医師会も210億円の上乗せを勝ち取った。政治評論家や新聞は、民主政治の転覆を危惧した。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 19:31:47
H.Takano @midwhite

国内で圧力団体が全体のための福祉へ配慮に欠けると非難された一方で、西欧では漸く日本に民主主義が根付き始めたと評価された。しかし日本の圧力団体は政府の補助金および最小限の譲歩と引き換えに、官僚や自民党によって逆に利用される。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 19:37:43
H.Takano @midwhite

日本の権力者は、自分を脅かしうる集団を無力化あるいは吸収するという技に磨きをかけてきた。歴史を遡れば、その最初の例は仏教が「既存の社会体制および伝統的価値体系の中の単なる小道具の1つ」と化したことだったことが分かる。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 18:43:26
H.Takano @midwhite

他国では宗教が世俗の支配者に対抗して権力を求める最も強い勢力を生み出してきた。日本が主権在民の公式モデルとしている近代政治制度は、西欧世界が何世紀にも渡り政治的論評の主題としてきた政教分離という基本的な前提から生まれたものである。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 18:47:08
H.Takano @midwhite

日本の政治的現状に逆らって変革を試みる者は、相手が変幻自在で実体が無く、攻略も何もできないという難関に直面する。日本の権力は分散され過ぎていて捕らえ所が無く、不平分子は<システム>の構成員に抱き込まれてしまい、結局その一部として機能する。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 18:50:59
H.Takano @midwhite

例えば消費者運動を担った主婦会は政府に懐柔され、消費財の不当な値上がりに沈黙する。日本消費者連盟などは、農産物の輸入規制撤廃に反対している。その代表が、日本で最も保護主義的な官庁である農水省の高級官僚を退職した竹内直一だったのである。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 19:00:25
H.Takano @midwhite

日本医師会は日本では珍しく、官僚を懐柔して意志を通すのではなく、官僚に真向から対決する姿勢を選んだ。彼らは医療政策を支配するため、新聞に広告を出して激しく政府を攻撃し、利益の厚い中絶医療産業を保護することに成功した。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』

2014-03-21 19:04:58
H.Takano @midwhite

<システム>の外部に身を置きながら最も成功した戦後の圧力団体は、公害運動だ。彼らは70年代後半になると、この運動は地域レベルで政治関心を喚起し、恒常的な変化の到来すら予感させた。一方で自民党は彼らの政策を取り入れ始め、市民運動を収束させた。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 19:11:25
H.Takano @midwhite

消費者運動や公害運動が次第に衰退する一方、政治に圧力を加えるのではなく自民党議員の利益に資する圧力団体が生き残った。彼らは自民党に集票で貢献し、自民党は選挙区に利益を誘導すべく、官僚との友好的な関係構築に励む。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 19:21:57
H.Takano @midwhite

<システム>は、反対勢力を潰し、金で黙従を買うために、行政上の柔軟性を大きく犠牲にする。関係省庁は管轄下の団体との繋がりを深め、吸収する。そうすることで<システム>自体の維持を目論むが、それが<システム>の一部を麻痺させるのは皮肉である。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 19:26:22
H.Takano @midwhite

農協は農民の政治的行動を未然に防ぎ、また自民党の国会における不動の過半数を保証する。農民自身は無理やり組み込まれたこの組織に割り切れない感じを抱いているが、農林中央金庫や各種サービスによって強固に管理されている。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 19:34:39
H.Takano @midwhite

現代日本の調和的な労使関係は一朝一夕で形成されたわけではなく、確立までに多くの組合が潰されてきた。戦後、占領軍当局は財閥の力を抑制するため労働運動を奨励したが、中国の革命後は防共の最前線という役割を重視し、弾圧に乗り出した。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 19:42:27
H.Takano @midwhite

今や急進的な共産主義の組合は、一部の外資系企業に潜り込んでいる。これは2つの面で<システム>に都合が良い。第一に日本の大企業を巻き込まず、共産主義者の活動場所が与えられる。第二に海外の企業や代表団に、日本に事務所を開く際の抑止力となる。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 19:45:37
H.Takano @midwhite

<システム>に参加せず対立した結果、徹底的に弾圧されたのが日教組だった。彼らの不倶戴天の仇敵である文部省は、学校に「正しい考え方」が必要であり、そのための道徳教育や愛国教育の必要性を信じたが、日教組は戦前を回顧させるあらゆるものに反発した。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 19:52:23
H.Takano @midwhite

教師たちは戦時中、強い罪悪感に苛まれながら、国粋主義的イデオロギーを民間に流布するための主要な役割を果たしてきた。戦後は「二度と我々の教え子を戦場に送ってはならない」というスローガンを作り、今日まで繰り返して強調してきた。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 19:57:46
H.Takano @midwhite

日教組が自らを「教育労働者」と規定したことに、文部省は強く反発した。この表現は、戦前の国粋主義者が用いた、教師は「聖職」という見方を暗に拒絶していた。官僚や自民党の日教組に対する反対は、教育の質を鑑みるのではなく、常にイデオロギー的だった。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 20:01:35
H.Takano @midwhite

なぜ教師だけが執拗に<システム>と闘い続けたのか。教師には東大その他のエリート輩出校を出た者がおらず、日本の政策決定から完全に締め出されていた一方、彼らは社会への責任を自覚するインテリだったが、信じてもいない国粋主義的な教育を強いられた。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 21:00:19
H.Takano @midwhite

思想教育が厳格と定評のある師範学校で教育された当時の教師たちは、信じてもいない国粋主義的な神話の拡散に加担させられ、自分の仕事の意義を真剣に反省せざるを得ず、年を経てからは自分の考え方を頑なに守ろうとする知識人の立場に立つことにもなる。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-21 21:17:14