加賀さん観察日記 Part11

キタユキ @k_t_y_k

「何度も同じ話で恐縮ですが、このゲーム、元は侵略者に陸上・空中戦の訓練/模擬戦闘用に『調整』された軍事シミュレーターだったのです。簡単にいえばガンダムが人間で、パイロットが我々。戦闘機にあたる一部の人間は我々の技術を以て強化改造を施されました」#加賀さん観察日記

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「その戦闘機が【艦娘】です。軒並み雌型なのは調達・繁殖が用意なのと、あと痛みに強いからですね。下腹部に格納スペースもありますし、集団行動意識が雄よりも強いのでチーム戦にはもってこいです。深海棲艦も改良に改良を重ね、現行モデルに近い形となりました」 #加賀さん観察日記

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「そしてシュミレートすること何万年。ある時、指揮官機に乗っていたパイロットが思いつくわけです。『これ、ゲームにして売ったらウケるし民兵訓練もイケるんじゃね？』と。当時は徴兵制でしたから軍事に対するハードルを下げる必要もありました」#加賀さん観察日記

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「そうして一番初めは指揮官操作型のシュミレートゲームとして発売されました。……後はまあ、長いので。今、私達がこうやって集っているのはそのゲームの続編の続編の……ＦＦでいうと11ぐらいですかね」結構前だな。ていうかＦＦ知ってんのか。「ええ、勿論」#加賀さん観察日記

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「最初のシミュレートゲームには問題がありました。我々がホモ・サピエンスの雌性体を全て『改造』してしまったおかげで、人間の繁殖が不可能になってしまったのです」何で最初に考えとかなかったの？「リョコウバトと同じです。何億と個体がいるのだから、そうそう滅びぬだろうと」#加賀さん観察日記

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アホだろ。「ええ。この大和も、我が先祖ながら恥ずべき不覚であると考えます。当時我々は品種改良こそできたものの、滅んでしまった個体を甦らせたり、有性生殖に頼らない繁殖方法を知りえませんでした。そこで、考え出された方法が一つ。『並行世界への移住』です」#加賀さん観察日記

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遺伝子のこと知らないのにシュタインズゲートは超えられたのかよ。「仕方ないでしょう！単性生殖なのですから。ほっといても増えますし。遺伝子という概念は、移住した先の人間達から学んだのですよ」お、おう。なんか意外だな。万能ってわけでもないのか。#加賀さん観察日記

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「そこからが大変でした。安定して並行世界移動ができるようになるまで、一つの世界線から知識を得ては滅ぼし、知識を得ては滅ぼし……まあ、３Ｌで済んだのは奇跡ですけが。あ、ＬっていうのがLOOTの略、ようは分岐世界のことです」ROOTじゃなくて？「まあ強奪品ですし」#加賀さん観察日記

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「科学的な知識以外の娯楽やスラングも、移住先の並行世界から色々輸入したのです。だからＦＦも知ってますし、アイカツだってしますよ」ワールドワイドすぎる。「プレイ環境とそこで発生する提督に合わせて、情報を入れ替えてますので」そうか…… #加賀さん観察日記

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「この辺は我々の書物を読んでいただいた方が解り易いのですが、如何せん、ゲーム内の並行世界に『リアル』の書籍は持込できませんもので。質問があれば何でも伺います」もうありすぎてわからん。お前が【プレイヤー】なのはわかったが。「有難うございます。大和、嬉しい」#加賀さん観察日記

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ところで、私が起こした行動でシナリオが変わるとか言ってたな。「言いましたっけ？」「言いましたよ」古鷹が紅茶を注ぎ直しながら苦笑いする。「最初の様式から大きく変わってまして。今のバージョンでは戦闘以外のシナリオイベントが付随した見守り形式になってるんです」#加賀さん観察日記

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見守りとは。「ランダムに能力を選出された指定のＮＰＣが、望むような行動を起こしてくれるように誘導する形式ですね。ようは、環境だけ整えて後は野となれ山となれ……ってところです」画面前で祈るのか。「まあ……【プレイヤー】ですし」 #加賀さん観察日記

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「本当はそういうの、特に何も考えずに動いてるのをぼーっと観察するだけなんですよ」それにシナリオを加えたのがここってか。「いくらでも並行世界に移転できるようになったおかげで、失敗してもすぐ新しい設定で再開できるようになったんですよ」失敗した環境は放棄して、か。#加賀さん観察日記

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古鷹と話しているとキュッキュッと磨くような音が足元でする。見やると駆逐イ級がこちらを見上げながら椅子の前をウロウロしていた。多摩の飼っているチロちゃんだ。スコーンの匂いにつられてきたのか。容器についていたカスを適当に剥がしてその辺に撒くと、土ごと頬張り始めた。#加賀さん観察日記

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「【プレイヤー】が指揮官でなく好きな艦娘を選択できるようになったのもここ最近のことですね」古鷹の話は続く。話を聞いている限り、本当にゲームなのは解った。普通に聞いてしまっているが、ようは人間よりもヒエラルキーが上の存在が下の奴隷で好きに遊んでいるみたいだが。#加賀さん観察日記

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「……で、今回はそれの大きい【大会】があるってことで、前回優勝者の巻雲さん達、前々回優勝者の私と加古がタッグを組もうって話になってたんです」突っ伏したままの巻雲の背にそっと手を乗せる古鷹。ドリームチーム凄いですね。「それほどでもありません」何故か大和が自慢げだ。#加賀さん観察日記

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ん？巻雲と古鷹が組むんだったら、大和と武蔵はどこからきたんだ？「それはその……」「私と巻雲が元々タッグだったのだよ」武蔵がカステラを鷲掴みにして頬張っていたのを飲み込み、口についた欠片を指で取った。「大和は別の奴と組んでいたのだが……まあ、諸事情あってな」#加賀さん観察日記

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「大和が元々プレイしていたのは、大和自身とその周りの艦娘達との好感度を上げることが鍵となるシナリオ……まあ言ってしまえば乙女ゲーだ」「失礼な！そのような耽美物ではありません！」大和の拳が叩きつけられ、皿とカップが宙に舞い、紅茶と菓子が勢いつけて飛んで行く。 #加賀さん観察日記

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「前のシナリオは坊ノ岬を共に迎えた仲間達との絆を深めたうえで大和との愛情を深める抜きゲーでしたでしょうに！それを乙女などとは言語道断！あちらで決着をつけましょう」立ち上がって武蔵の胸倉を掴み、建物内へ引きずっていく大和。武蔵は涼しい顔で（話を続けろ）と手を振る。#加賀さん観察日記

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余計気まずくなってしまった。残された古鷹とゴーヤはどちらから話を切り出していいものかと互いに顔色を伺いあっている。巻雲は以前ぐったりしたままだ。今日はこのぐらいにしておかないか、また機会を設けて。そう私が切り出すと、古鷹が苦虫を噛み潰したような笑顔を見せた。#加賀さん観察日記

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「大和さん、前はもうちょっとまともな方だったんですけど……前のシナリオ、さっき言ってたのとは別のなんですけど、そこで一緒に組んでいた信濃さんが、目の前でロストというか、ゲームから離脱してしまったらしくて……」そう言って古鷹は巻雲をちらりと見る。巻雲は動かない。#加賀さん観察日記

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「……ようはその、信濃さんのいなくなった穴を埋めるために、武蔵さんが私と加古に話を持ちかけてきてくれたんですね。一緒にやらないか、って。ずっと加古と二人で細々遊んできたわけですから色々戸惑っちゃったんですけど……結局は組んでよかったかなとは思ってます」#加賀さん観察日記

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「ゴーヤも古鷹さんと一緒にあそぶのたのしいよ？だってここいっぱいいじり放題なんだもん！」ゴーヤが机に手を置くと。そこを拠点にして深い紅を基調としたタータンチェックの敷き布が広がり、手を離すと吹き飛んだはずの茶器と菓子が元通りの位置へ現れる。#加賀さん観察日記

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前々から思ってたけどお前一体何者なんだ。「潜水艦伊五八です！」それは知ってる。「うーんとねー、シナリオに沿ってシステムをいじったりとか、ヘンなとこ直したりするよ？今回もシナリオでおかしくなってたところを全部なおしたでち。もう猫さんも出ないよ！」 #加賀さん観察日記

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猫。エラーやバグのことを猫と呼ぶとは聞いたが、バグとりのできる奴がいるのにどうして猫駆除がなされなかったんだ？加賀が産まれてからあいつずっと猫見てたみたいなんだが。「なんか面白いからそのままにしとけって武蔵さんが言ってたよ？」「確かに言ってましたね……」#加賀さん観察日記