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「レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ヘイトレッド」#7
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寂しい秋。陽光無きネオサイタマの陰鬱な午後。あまり治安の良くないスラム街、テモダマ・ストリートの端。解体工事の途中で放棄された高層集合住宅、アドミラブル・テモダマ。その廃墟をもとに作られた、違法頽廃ホテルの一室。 1
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部屋の中は荒れ果て、もはや二度と交換される事のないであろうタタミは、ひび割れたベランダから染み込んできた重金属酸性雨に湿る。かつてそこに住んでいた家族の残置物が、何年間もそのままで使用されている。憔悴したタニグチは、錆びたパイプベッドの上に寝かされ、覚束ない眠りを眠っていた。 2
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ジジジジジ……漏電したタングステン・ボンボリ灯が火花を散らし、どうにか持ち直す。それは壁に掲げられたKMCの旗を照らす。チャブの上には銃器、グレネード、医療キット、小型UNIX、無線機材、食べかけのスシなどが置かれている。 3
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「安い、安い、実際安い」「エッ過激!アナキストがあなたの隣に?」「すぐさまローン」遠い繁華街の上空では、横腹にモニタを掲げたマグロ・ツェッペリンが、赤いホロトリイ・コリドーの近くを滑るように空中交差していた。それを見ながら、デリヴァラーは脛に受けた散弾を熱したハシで摘出する。 4
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KMC第3アジト壊滅後、デリヴァラーはタニグチを背負って逃げ、断続的な戦闘と、撤退と、潜伏と、休息のサイクルを繰り返した。あの夜、ゼンめいた忘我の境地と、名誉ある革命家のセプクを目前にしていたタニグチは、息子の身勝手により死に損なった。だが彼は、決して息子を責めはしなかった。 5
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デリヴァラーは最後の銃弾を摘出する。痛みは感じない。一時的に痛覚を閉ざしたからだ。そしてスシを食う。ニンジャソウル憑依者となった彼は、この極限状態の中で研ぎ澄まされ、自らの肉体を一個の武器のように、淡々と整備してゆく。彼の回復速度は速い。だが父のそれは、もどかしいほどに遅い。 6
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「アルヨ多幸感ー!」暗いスラム街の向こうでは、マグロツェッペリンが極彩色ネオン光を放射し、底無しに明るいアイドル曲を大音量で撒き散らす。デリヴァラーは立ち上がり、UNIX時計を確認し、父の寝息を聞いた。本来はずっと背中に負っておきたいが、それでは彼の回復効率が悪いのだ。 7
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デリヴァラーは医療キットから精力アンプルを取り出し、眠る父に注射する。少しは回復が早まるだろう。果ての見えない戦いだ。だが全世界を敵に回そうと、タニグチを失うわけにはゆかぬ。父を失えば、己の魂も砕けると悟っていた。邪悪なニンジャソウルは、その時を待ち望んでいるようでもあった。 8
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「マジなんだろうな?思想犯が潜伏してるって」デリヴァラーの鋭敏ニンジャ聴力は、接近する声を聞きつけた。「フロントが言ってたから、間違いねえだろ」「ハイデッカーを呼ばなくていいのかよ?」「DJだろ確か。俺たちでやっちまう」男が四人。「懸賞金だ!」「ヤッタ!」銃の撃鉄を起こす音。 9
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建物の四分の一が鉄球破壊された状態のアドミラブル・テモダマは、裏側から見ると、さながら爆撃を受けて放置された廃墟のようだ。武装ヨタモノたちは、剥き出しになった鉄筋の上を器用に渡り、ハイエナめいて群れ集う。このような光景は、犯罪都市ネオサイタマではチャメシ・インシデントだ。 10
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444号室近くに到達すると、武装ヨタモノは声を潜め、サイバーサングラス液晶面で会話する。『敵は何人ですか』『2人です』『とりあえず全員殺します』『IC鍵で開けます』彼らは銃や棍棒を握り、舌なめずりして突入準備を整える。その直前。背後の細い鉄筋橋にデリヴァラーが回転着地した。 11
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BLAMBLAM!デリヴァラーのサイレンサー付き二挺拳銃が火を噴き、スラッシャー崩れの眉間を撃ち抜く。「アバッ!?」「アバーッ!」BLAMBLAM!「ニ、ニンジャアバーッ!」「ニンジャナンアバーッ!?」残る二人も射殺。使えそうな武器を手早く奪う。あのバッジを持つ者はいない。 12
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違法興奮薬物メン・タイの臭いを含んだ薄汚い血が、湿ったコンクリートに染みを広げてゆく。ここももう安全ではない。発砲音は隠せても、鋭敏なニンジャ感覚は欺けないだろう。匂いを嗅ぎ付けて、鮫が寄ってくるはずだ。デリヴァラーは部屋に戻り、装備を整え、未だ眠りの中にある父を背負った。 13
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重金属酸性雨が強くなる。だがそれも、二人の逃走を覆い隠してはくれなかった。……見よ!無慈悲なる二人のアマクダリ・ニンジャが、テモダマ・ストリートの闇を渡る。マーシフルとアイアンゲートだ。彼らは急いていた。ゆえにツェッペリンやハイデッカー装甲車両を大きく後ろに引き離している。 14
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「ホーホーホー、まだ生きてるぞ、奴ら」マーシフルが笑う。顔面には鉄拳カラテ制裁の跡が見えるが、こたえていない。彼は元から少々頭がおかしいのだ。「今度は遊ぶな。頭を吹き飛ばすのは要らん」アイアンゲートは殺気立っている。あの夜、彼の一味であるパイロマンサーが消息を絶ったからだ。 15
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彼らは中枢から派遣される実行部隊「アクシス」のメンバーではない。脅威度の低い敵に対し、アマクダリが一段階目に取るプロトコルは決まっている。それに従って動いたアイアンゲート率いる一味「テツノモン」は、アマクダリの下部セクトであり、その勢力範囲はこのテモダマ・ストリートまでだ。 16
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あの夜、アイアンゲートの一味はデリヴァラーの追撃に予想以上に手こずり、隣接する他の下部組織のテリトリーを干渉しかけた。功を焦ったパイロマンサーは、デリヴァラーの退路を断つべく緩衝地帯へ踏み込んだ。その挙げ句に消息不明だ。パイロマンサーの失態は、まだセクトに報告していない。 17
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ネオサイタマ暗黒社会も随分と様変わりしたものだ。元ソウカイヤであるアイアンゲートは、微かな苛立ちを覚える。全てが恐ろしいほど整然と管理され、彼ら下部組織は、隣接するテリトリーの情勢も12人の詳細も知らぬ。たとえ彼らを拷問しようと、セクトの敵は絶対に12人に到達できぬのだ。 18
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「ニンジャスレイヤー=サンとやらに、やられたんじゃ無いのかァ?」「無い。死神があの場にいたならば、我々も無傷では済まなかった」「じゃあ、何だ?あの小僧が?」「ヤバレカバレを侮るなよ」「ホーホーホー」マーシフルは鋭敏なニンジャ感覚で獲物の痕跡を察知し、先導するように駆ける。 19
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そして彼らは獲物に追いついた。複雑に交差した高架道路と屋台街を跳び渡る、異様に着膨れしたサイバーレインコート。この先の橋を突破されれば、またテリトリー外に逃げられる。「挟撃するぞ」アイアンゲートとマーシフルは、全身のニンジャ筋力を躍動させた。イクサだ。ニンジャの血が騒ぐ。 20
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デリヴァラーも追っ手の接近に気付いた。前方の橋はハイデッカーによって封鎖され、検問所が作られている。川には武装屋形船も浮いている。「敵」「ワオワオワオワオ!」突如の加速と、目の回るような連続パルクールを体験し、タニグチは叫んだ。そして無線スイッチを入れる。レディオの時間だ! 21
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突風!テイルスピン跳躍!サイバーレインコートが向かい風を孕んで大きく翻る!「ヘイ、人々、俺はアノヨから帰ってきたぜ!」デリヴァラーの背にはタニグチを乗せる金属パイプ、そして第2アジトで調達した小型機材が!出力は弱くノイズまみれ。妨害にも脆弱。だが声と僅かな音楽を届けられる! 22
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2014年4月27日
レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ヘイトレッド #1 http://togetter.com/li/646824 レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ヘイトレッド #8 http://togetter.com/li/654861
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