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【魔法少女まどか☆マギカSS】 ラブアフェアー・アンド・ニンジャ 【ほむさや】

さやかちゃん(16)が恭介に惚れ直されたりニンジャと戦ったりほむらとイチャつくSS
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GammaRay @sizuoka074

絵に描いたような悲恋の話だ。家督を守るために政敵に差し出された姫と、それを慕う武官の情愛。姫はやがて帰ってくることを男に誓い、男はその場所を守り続けた。彼女と永久の愛を誓った場所、音楽と恋愛を司る神・弁財天を奉った鳥居を、まさしく藍の色へと塗って。

2014-04-19 17:31:02
GammaRay @sizuoka074

「恐らくはあの鳥居に取り憑いた、年代物の魔獣でしょうね」本を閉じ、ほむらがシーツに潜り込む。気の滅入る話を聞いた。またしても恋破れた男の話。さやかが引導を渡すことまで同じだ。弁財天が水の女神なら、さしずめ自分は船幽霊か。自嘲するさやかの体に、ほむらがそっと寄りかかってくる。

2014-04-19 17:36:39
GammaRay @sizuoka074

「私が代わりにやってもいいわ」さやかは首を左右に振った。あの哀れな忍を倒すのは、自分でなくてはならない気がする。だがどうやって。愛を殺すことは出来ない。他でもないさやか自身が、それをなにより理解していた。

2014-04-19 17:39:17
GammaRay @sizuoka074

「愛は……」「ええ、愛は殺せない。だけど、失われることはある」服を脱いだほむらは嗤い、そっとさやかに耳打ちをする。悪魔のような微笑みだったが、しかしさやかには女神に見えた。

2014-04-19 17:45:59
GammaRay @sizuoka074

翌日、さやかの携帯に、仁美からメールが送られてきた。些かではあるが覚悟してたが、恭介についての話ではない。両親と共にドイツを訪れ、そこで知り合った男性と恋に落ちたという惚気話だ。不思議と胸は痛まなかったが、覚悟の決め手には十分だった。

2014-04-19 17:50:00
GammaRay @sizuoka074

「どうも、ダメ男さん。クソ女です」さやかはしめやかにお辞儀をすると、ずらりと剣を抜き放ち、柿色の忍者と対峙した。魔獣死すべし、慈悲はない。彼は所詮、負け犬だ。惚れた女が去ろうとするなら、奪えばよかっただけのこと。繋ぎ止めることが出来ないのなら、それは愛の敗北なのだ。

2014-04-19 17:53:27
GammaRay @sizuoka074

『◆◆◆◆◆◆!!』お辞儀から十分の一秒後、魔獣の一撃が飛来した。執念という毒で満たされた魔獣の手裏剣。南無三、食らえば全てが終わりだ。剣風で十二枚を跳ね返し、すり抜けてきた三枚を、左手の指先で挟んで止める。続く手裏剣をブリッジ回避し、勢いを利用して蹴りをうつ。

2014-04-19 18:01:19
GammaRay @sizuoka074

「イヤァーッ!」『◆◆◆◆!』互いに裂帛の気合いを込め、決断的に剣を繰り出す。だが空手の実力差は絶対的だ。さやかが繰り出した剣撃を最小限の動きで回避しながら、魔獣は拳打でさやかを打ち据え、確実に体力を削いでいく。

2014-04-19 18:07:09
GammaRay @sizuoka074

『◆◆◆◆!』渾身の一撃が腹部を殴打し、さやかは石ころのように吹き飛んだ。壁に当たり、コンクリートの破片が飛び散る。肩胛骨が破砕していた。さやかの治癒力を持ってしても、これ以上の戦闘は不可能だ。忍者の姿をした魔獣が手刀を構え、一歩一歩と近付いてくる。

2014-04-19 18:12:00
GammaRay @sizuoka074

南無阿弥陀仏か。さやかが口元を歪めたその時、「――」しゃなりと鈴の音を響かせ、何者かが魔獣とさやかに割って入った。桜色の帯、銀の簪。顔を絹の衣で覆い、口元には艶やかな紅。桜の精霊としか思えない可憐な少女がさやかを抱きしめ、玲瓏と魔獣を見返した。

2014-04-19 18:18:28
GammaRay @sizuoka074

「姫。どうぞこちらを」佇み、硬直する魔獣の前で、さやかは少女の顎に手をかけ、唇と唇を重ね合わせた。桜の香りが廃墟にうつろい、桜色の少女は溜息をつく。

2014-04-19 18:20:49
GammaRay @sizuoka074

どれほどそうしていたのだろうか。さやかが少女との口付けを解き、視線を部屋へと彷徨わせると、そこに忍の姿はなかった。愛は死なない。だが失われることはある。戦わずして負けた己を、男は思い知り、去った。

2014-04-19 18:26:33
GammaRay @sizuoka074

「それで、いつまでこうしているの?」腕の中に抱いた少女が、悪魔の声でささやいた。暁美ほむらだ。こうして近くで見つめていると、目眩がするほど美しかった。長い口付けでよれた紅は、さやかをひどく魅了する。

2014-04-19 18:29:43
GammaRay @sizuoka074

「電話掛け終わるまでちょっと待ってて」「電話?誰に?」「恭介。やっとなんて言うか決まった」変身を解き、電話を取り出す。ほむらを抱きしめ、再びキスする。彼女を愛しているのだと、彼に告げられる勇気が得られた。 〈おわり〉

2014-04-19 18:34:01