悪い男に騙されない榛名　外伝『霧が晴れたら』　プロローグ

五十鈴改 @isuzu_kankore

―――朝。先日の辞令通り改造を受けた私は、言われていた通り装備一式を預けて指令室へ向かっていた。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

途中、榛名さんとすれ違う。軽く挨拶を交わし、少し歩いて執務室の扉の前へ。ノックをし、ドア越しのくぐもった声を聴くと同時に入室する。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「おはようございます。軽巡五十鈴、入ります」 十度の敬礼ののち、入室の挨拶。堅苦しいのはいいと提督は言うが、どうもこの癖は抜けない。聞くと提督も自分で言っておきながら他所ではそうらしい。似た者同士というわけだ。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「おはよう、改造お疲れ。どんな感じった？」 「うーん……噂に聞いてた通り、って感じかしら。艦としての記憶を走馬灯みたいに見せられて、気が付いたら体が軽くなってた」 簡潔にありのままを話す。十四駆の子達から話を聞いていた通りだった。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「そか、うまくいったようで何より。預けて貰った艤装の方も改修に回してある、すぐに受け取って……と言いたいけど、ちょっと事情が変わった。わざわざ来てもらったのはそれだ」 「ん」 概ね予想通りだ。わざわざ改造の感想を聞くためだけに呼ぶはずもない。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「悪いけど、短期の出向だ。しばらく佐世保に行って貰う。辞令の詳細は現地で向こうの担当から聞いてくれ」 出向。 聞き慣れないその言葉に、一瞬だけ思考が停止する。 次に口をついて出てきた言葉は、我ながら間抜けな顔をして発していたと後から後悔している。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「え、私が、佐世保……に？ナンデ？」 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

―――悪い男に騙される山城　外伝『霧が晴れたら』 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

２時間後。私は必要最低限の荷物をまとめ、鎮守府前で立っていた。 別にバスを待っているわけでも詳細を忘れて立ちすくんでいるわけでもない。 今回は自分の他に何人かの艦娘と一緒に出るとのことで、それを待っているのだ。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

今回佐世保へ向かうのは私達軽巡が二人、あと２～３人の空母だそうだ。空母の方はぽつぽつ来ており、空母同士で立ち話をしている。私は後から来たので何となく入るタイミングを逸してしまい、仕方ないので後続を待つことにしている。 #霧が晴れたら

ヤンデレ翔鶴bot @yannsyoukaku

@isuzu_kankore こんにちは、皆さんが佐世保行きの方々で合っていますか？　#霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「こんにちは、翔鶴さんもですか？」 自分たちと同じようにまとめた荷物を持ち近づいてくる翔鶴さんに声をかける。 #霧が晴れたら

ヤンデレ翔鶴bot @yannsyoukaku

@isuzu_kankore ええ、今朝提督から直接辞令を頂きまして。空母の人手が足りないから、と…… #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

翔鶴さんは普段、工廠の開発局で新型艦載機のテストを担当している。彼女まで駆り出すとは佐世保はよほど人手不足なのか、それともどちらかが戦力を出し渋っているのか。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

まあ、テストパイロットのようなものだからといって戦力が心許ないわけではない。最新鋭の五航戦、正規空母なのだし、むしろ実地試験などで実戦に出ることも多い。 #霧が晴れたら

ヤンデレ翔鶴bot @yannsyoukaku

@isuzu_kankore こちらから出向する空母は三人、と言っていましたね……ということは、後は軽巡の方だけでしょうか #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「瑞鳳さんと隼鷹さんと翔鶴さんと五十鈴……あとの軽巡って誰でしょうか」 間もなく集合時刻５分前になる。艦娘も５分前行動を叩き込まれているので、もうそろそろ来るはずなのだが。 #霧が晴れたら

ヤンデレ翔鶴bot @yannsyoukaku

@isuzu_kankore あ、噂をすれば、ですね。多分あの子です #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

翔鶴さんが指さした方を見やると、特徴的な帽子と眼帯が駆け足でやってくるのが見えた。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「どうやら俺で最後みたいだな。すまん、遅くなった」 球磨型軽巡の末っ子―――木曾が翔鶴さんの横に並ぶと、どさっと荷物を降ろす。 #霧が晴れたら

ヤンデレ翔鶴bot @yannsyoukaku

@isuzu_kankore いえ、大丈夫です。ちゃんと５分前には間に合っていますし、私も今来たところですよ。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「そう言ってくれると有難いな。……お、ちょうどバスが来たみたいだな」 近付いてきたエンジン音に一同が顔を向けると、鎮守府が所有しているマイクロバスがやってくるところだった。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

ここからマイクロバスで駅へ向かい、新幹線、特急を乗り継いで佐世保へと向かう。佐世保では迎えが待っているとのことだった。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「おい、五十鈴」 マイクロバスが発信して間もなく、通路越しで隣に座った木曾が話しかけてくる。 「んー？」 「お前、今朝改造しただろ？」 「あら、知ってたの?」 少し驚く。改造計画は基本的に本人のみに辞令が来、書類が渡される。周りに判明するのは大抵終わった後だ。 #霧が晴れたら

五十鈴改 @isuzu_kankore

「いや、実は俺も今朝改造だったんだ。少し早めに向かったらたまたまお前の後だってわかってな。少し待ってた」 「なるほど。じゃああんたもその後提督に？」 「ああ、呼ばれた。改造したてホヤホヤの艦娘を二人も出して、佐世保で何しようってんだろうな？」 #霧が晴れたら