悪い男に騙されない榛名 外伝『霧が晴れたら』演習編 #2

ついに始まった演習、武蔵VS五十鈴、木曾ペアの勝負の行方は・・・? プロローグ:http://togetter.com/li/660114  前 演習編#1:http://togetter.com/li/661525 次 邂逅編:http://togetter.com/li/662339
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五十鈴改 @isuzu_kankore

「―――さぁ、行くぜぇ!」 先に仕掛けたのは木曾だ。主砲を惜しみなく連射して弾幕を張りつつ、雷撃可能距離まで突っ込んでいく。 「その自慢の46cm砲も、懐に入れば!」 「なるほど果敢だな、見立ても悪くはない……だが!」 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:00:52
五十鈴改 @isuzu_kankore

武蔵さんがやや斜め前を向くと、主砲周辺にマウントされていた25mm機銃が火を噴いた。機銃ゆえ有効打にはならないが、ゴム弾の斉射は木曾の突撃の勢いを大幅に削いでいく。 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:07:16
五十鈴改 @isuzu_kankore

「痛て、痛てて!くっそ、それ対空兵装だろ!」 「くく、君が撃ってくる砲弾に対処しているつもりなんだがな。近すぎるから当たってしまった」 そう言いながら、スピードを落とした木曾に対し悠々と砲弾を構える。 「―――迂闊ですよ!」 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:12:42
五十鈴改 @isuzu_kankore

言うが早いか武蔵さんの後ろから砲弾を浴びせる。何発かはわざと逸らし、周辺に水柱を上げて視界を塞ぐ。そのまま左斜め後ろから逆サイドへすり抜け、すれ違いざま魚雷を放つ。 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:15:50
五十鈴改 @isuzu_kankore

「……ふむ、成る程。最初に木曾と逆方向に動いて、お互いに軽巡ならではの速度で相手を挟撃、一撃離脱か。悪くない、だが…」 水柱の向こうから出てきたのは、全くダメージを受けた様子のない武蔵さん。私も木曾も苦虫を噛み潰したような顔になる。 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:19:48
五十鈴改 @isuzu_kankore

「狙いが甘いな、五十鈴。残念だが当たったのは砲塔天蓋だ。いつぞやのヘルダイバーを思い出したぞ」 とんとん、と塗料で染まった天蓋を指で叩く。いくら直撃といえど、分厚い装甲を持つ砲塔天蓋ではほとんどダメージにならない。何せ爆弾すら弾き返したのだ。 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:23:36
五十鈴改 @isuzu_kankore

最後に撃ち込んだ魚雷もさほどのダメージにはならなかったらしい。即席だったとはいえ、二人の速度を利用した連携を仕掛けてもこれか。今なら彼女を「モンスター」と呼称したかつての米軍の気持ちがわかる気がする。 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:25:39
五十鈴改 @isuzu_kankore

「ほら、もう終わりか?まだ数発しか撃ってきてないだろ?」 武蔵さんがくいくい、と指を曲げて挑発してくる。 「くっ…まだやってやる!捕まえられると思うなよ!」 「あ、ちょっと木曾…!」 私の制止も聞かず、今度は之字運動で木曾が向かっていく。 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:29:31
五十鈴改 @isuzu_kankore

武蔵さんも機銃で応戦するが、今度は怯まない。右肩の装甲を前にして防御しながら、ショルダータックルのような体制で突っ込んでいく。 「うぉらあああ!つか、まえ…たっ!」 そのまま肩ごとぶつかっていく。首尾よく懐に入り込み、にやりとして見上げる―――と。 「ようこそ」 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:36:57
五十鈴改 @isuzu_kankore

武蔵さんも……笑っていた。 獲物が自ら飛び込んできてくれた…そんな、肉食獣の目で。 「どうだ具合は?居住性は大和より上だぞ。くつろいでいくといい」 「へッ、生憎そういうのは性に合わなくてね!」 その迫力にしかし、木曾は気圧されることなく獰猛に笑う。 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:41:06
五十鈴改 @isuzu_kankore

「武蔵旅館はしばらく休業してもらうぜ!」 鳩尾を狙って下からのボディ。だが武蔵さんに受け止められる。 「フ、そういうのも嫌いでは…ないな!」 武蔵さんが空いている方の手でチョップを撃ち込もうとし、木曾に手首を掴まれ止められる。 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:47:34
五十鈴改 @isuzu_kankore

(もう一度……!) 武蔵さんは前方の木曾に集中している、今ならもう一度後ろから奇襲をかけることができる。 そう考え突っ込んだ時、武蔵さんの艤装から稼働音が聞こえた。 異常を感じた時にはもう遅く、背面の主砲、そして機銃がこちらへ弾幕を浴びせてくる。 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:50:01
五十鈴改 @isuzu_kankore

「きゃぁぁぁぁ!」 主砲の直撃は何とか避けられたが、攻撃のタイミングは完全に逸してしまった。そして馬力の関係で、あのままの力比べでは木曾が不利だ。 「五十鈴、インストラクション・ワンは確かに馬鹿の一つ覚えだとは言ったが、読まれやすい行動を繰り返すのとは違うぞ!」 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:52:35
五十鈴改 @isuzu_kankore

木曾を少しづつ押し戻しながら、武蔵さんが叫ぶ。ぐうの音も出ない。 ……しかし、木曾はまだ笑っていた。 「どうした木曾、頼みの相棒の仕掛けは失敗したぞ?空元気か?」 「随分と余裕だな武蔵さんよ、窮鼠猫を噛むって知らないか?」 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:55:21
五十鈴改 @isuzu_kankore

まだ死んでいない闘志の籠った木曾の言葉に、武蔵さんがふっと微笑む。 「その窮鼠の噛み付きってのは……こいつのことかい?」 言うが早いか、目にもとまらぬ速さで足を振り上げる。その足に何かが当たり、吹っ飛んでいく。木曾もそれに釣られて吹き飛ばされる。 #霧が晴れたら

2014-05-03 01:57:40
五十鈴改 @isuzu_kankore

「両手を塞ぎ、五十鈴に注意を向けさせてからの3段構え…これも悪くはないが、いかんせん顔に出るのが、な」 武蔵さんが苦笑する。 木曾は空中で自分ごと吹っ飛ばしたもの―――可動式アームの先に付いた主砲を畳むと、何とか水面へ着地した。 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:03:49
五十鈴改 @isuzu_kankore

「遅い!」 着地点を狙って46cm主砲が火を噴く。被弾の声すらも着弾の轟音に飲み込まれる。模擬弾でもあんな音出るのね。 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:05:57
五十鈴改 @isuzu_kankore

もちろんそれを黙って見ていた私でもない。前も後ろもダメなら今度は横からだ。射角を制限させるため、低い姿勢で右舷から突っ込んでいく。 機銃、副砲が撃ってくるが、射角が合わずうまくこちらを捉えていない。チャンス。 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:08:14
五十鈴改 @isuzu_kankore

もう少しで雷撃可能距離。すれ違いざまに主砲、魚雷を一斉射して高速離脱。このヒット&アウェイを繰り返す。とりあえず、これを繰り返すしかない。 まずは一発―――そう思った瞬間、凄まじい轟音が響いた。 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:10:28
五十鈴改 @isuzu_kankore

轟音と共に立ち上る水柱。先ほど私が撃ちこんで作ったものの倍以上の高さがある。 …46cm主砲を海面に撃って、目くらましにしたのだ。先ほど私が武蔵さんにしたのと同じように。 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:12:16
五十鈴改 @isuzu_kankore

「くっ、電探で……!」 それならばと21号対空電探を起動させ、位置を特定しようとした……その時。 「どこを見ている、私はここだぞ?」 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:13:59
五十鈴改 @isuzu_kankore

左から声がしたと思ったら、腕を掴まれる。そのままふわりと宙に浮く感覚。 あ、綺麗な巴投げ、と思った次の瞬間、私の体は勢いよく海面に叩きつけられていた。 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:15:26
五十鈴改 @isuzu_kankore

「ふむ、今日も私の勝ち……と。いや、だが筋はよくなってるな。初めて2日目とは思えん」 演習後、岸壁へ私と木曾を両肩で支えながら武蔵さんが満足げに言う。 ―――そう、今の演習は2日目。昨日からお互い、演習しては休憩、演習しては休憩、を3人で繰り返しているのだ。 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:18:42
五十鈴改 @isuzu_kankore

「あまり実感はないですけどね……」 「毎回ボコボコにされて終わってるイメージしかねえ」 「ははは、自分が成長しているかどうかは、こういう時はわかりにくいものさ。君達は結果が同じだった記憶しかないが、私としてはだいぶ手こずらされてきている」 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:21:55