一日二行小説「ゴーストゲーマーアカギ(仮)」
いつも見慣れた盤上遊戯部の部室だ。 所狭しと置かれたボードゲームの山が、目覚めた僕の眼前に広がっていた。#一日二行小説
2014-04-29 01:05:33一瞬、僕も何が何だかわからなかった。なぜ、部室にいるのだろうか、と。 訳が分からないまま、咄嗟にボードゲームの箱を手にとろうとした。#一日二行小説
2014-05-01 06:55:07「あれ?」だが、その手は虚しく空を切った。 いつも触りなれていた箱の感触はおろか、スチール製のラックさえ僕の手は素通りしてみせた。#一日二行小説
2014-05-01 06:55:52最初は夢を見ているのかとも思った。でも、僕の記憶はすぐさまそれを否定した。 すぐに思い出せたのは学校からの帰り道の風景だ。#一日二行小説
2014-05-01 06:56:27部室で眠りこけてしまったせいで辺りはすっかり暗くなっていた。 ケータイにはメールが届いていた。僕はそれに返事を打ちながら歩いていた。 #一日二行小説
2014-05-02 06:28:50急ぎ足で、ケータイを見ながら、赤信号の交差点に僕は飛び出して。 けたたましいクラクションの音。ブレーキがこすれる嫌な音。何かがぶつかったような鈍い音。#一日二行小説
2014-05-03 07:41:13そして今に至るのだから、僕は死んだのだろう。 不思議と驚きや悲しみはなかった。ただ淡々とその事実を受け入れる自分がいた。#一日二行小説
2014-05-03 13:15:07そんな時、不意にガチャリと部室のドアノブが回った。 僕は驚いて身構える。勢いよく開いた扉から現れたのは女の子だった。#一日二行小説
2014-05-04 01:03:54高校指定の女子用制服を着ているが、首のタイの色から一年生だと言うことがわかる。 耳元辺りまでの長さの髪と、きりっと整った目鼻だちから、快活な印象を覚えた。 #一日二行小説
2014-05-06 13:13:50「いや、見失った」 外から誰かを探すようなやりとりが聞こえる。彼女はそれを聞くまいと目をつむって耳を塞いでいた。#一日二行小説
2014-05-08 03:56:26様子から見ると、彼女はどうやら追われているようだった。 不意にガチャガチャとドアノブを回す音が聞こえて、彼女はびくりと肩を震わせる。#一日二行小説
2014-05-08 03:57:01「ここは鍵がしまってるわ。向こうを探しましょう」 外からそんな言葉が聞こえたあと、何人かの遠ざかる足音と共に、部室には再び静寂が訪れた。 #一日二行小説
2014-05-09 14:42:34僕はそんな様子を黙って(半ば呆然としていたとも言う)見ていた。 彼女は耳を塞いでいるので、追跡者が去ったことを気付いていないようだ。#一日二行小説
2014-05-13 09:38:42「おーい、危機は去ったぞー」 僕はふざけ半分にそう声をかけてみる。もちろん聞こえるわけがないだろう。#一日二行小説
2014-05-13 09:39:18驚きの声をあげてから、咄嗟に彼女は自分の口をふさいだ。 そしてドアの向こうに聞き耳を立て、しばらくじっと動きを止める。#一日二行小説
2014-05-13 09:40:31