【第二部-小話】熊野の自家製プリン #見つめる時雨

鈴谷×熊野 ※R-15
4

鈴谷視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「鈴谷は、甘いモノはお好き?」 部屋で一人でゴロゴロしていたら、何処からか戻ってきた熊野が、そう言った。…熊野の言う甘いモノとは、果たしてどの程度のものか。スイーツとかは嫌いではない。むしろ好きだけど。でも流石に歯が溶けるような甘いものは、苦手だ。ほどほどが好き。

2014-04-30 21:30:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

熊野の言っている甘いモノというのは、言い方からしてスイーツの類なのだと思う。思うのだけれど…真っ先に思い浮かんだのはそれではなくて、鈴谷の目の前にいる、甘いモノだった。甘い者。歯は溶けないけれど、脳が溶けそうになる、そんな甘いスイーツ。鈴谷の、大好物。

2014-04-30 21:35:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…たべていいの?」 「あら、そんなにお腹空いていたんですの?」 そうじゃないけど、熊野見てたら、お腹空いてきたんだ。…と、冗談はこの辺にして、熊野が手に持っているものに興味を移そう。…何だろ、あのカップ。熊野も鈴谷の視線に気づいたようで、それを見せながら、得意気にする。

2014-04-30 21:40:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「これ、気になりまして?」 「気にして欲しかったんじゃないの?」 「…ええ、そうですけど」 熊野が少しムッとする。でもちょっとすると、またさっきの得意気な顔に戻った。 「これはプリンですわ」 「買ってきたの?」 「いいえ、これは自家製プリンですわ」 「…自家製」

2014-04-30 21:45:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…熊野、実家にでも帰ってたの?」 熊野の実家って何処だろう。神戸?でも、艦娘には故郷はあっても実家はない、はず。強いて言うなら、今はここが実家だろうか。 「んもう、そうじゃありませんわ。手作りって意味でしてよ」 ああ、やっぱり。でも、何で自家製なんて言葉を使ったんだろう。

2014-04-30 21:50:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

まぁ、深い意味はないのだろうけど。今日はそんな気分だっただけに違いない。 「鈴谷はこれ、食べてみたいかしら?」 …食べて欲しいと言わんばかりの熊野の視線。うーん、ここまでわかりやすいと…ちょっと弄りたくなってしまう。我ながら、質が悪い。

2014-04-30 21:55:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「いや、昼間にプリン食べたから、今日はもういいかな」 「え…そ、そうでしたの…」 熊野があからさまにガッカリする。わかっててやったことだけど、ちょっと罪悪感感じる。でも…可愛い。 「ねぇ、熊野はさ、鈴谷にそれ…食べて欲しかったの?」 「…え?い、いえ…そういうわけでは…」

2014-04-30 22:00:50
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

立ち上がり、熊野の元へ歩いて…熊野の顎に、そっと指を置いた。 「熊野は、鈴谷に食べて欲しかったんじゃないの?この熊野の手作り…自家製プリン」 熊野がほんのり顔を赤くする。そしてジトッとした目で、鈴谷を睨む。 「…鈴谷も性格悪いですわね…」

2014-04-30 22:05:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

素直に「食べて」って言わない熊野が悪い。だからこんなに、弄りたくなってしまう。可愛すぎて。 「…はぁ、もういいですわ…」 熊野が溜息をついて視線を下の落とした。あ、もしかして怒らせちゃったかな…?そこまでのつもりはなかったんだけど…。

2014-04-30 22:10:19
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「あはは、熊野、ごめ…」 からかい過ぎたことを謝ろうとしたら、熊野が鈴谷の胸元に、プリンのカップを差し出してきた。…あれ? 「…頑張って作ったんですのよ。…た、食べて下さらない…?」 …へ? 熊野が少し上目遣いになって、鈴谷を見ていた。

2014-04-30 22:15:25
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…もしかして、本当にお昼にプリンを…?わたくしのは…貰ってくれないのかしら…」 熊野が本当に残念そうな顔をし始めた。慌てて、さっきまでの言葉を撤回する。 「うぇ!?いや、嘘!嘘だって!」 「じゃあ…貰って下さる…?」 「うん!熊野の自家製プリン、超欲しいから!」

2014-04-30 22:20:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

そう言った直後、熊野が笑顔になった。…ちょっと不敵な感じに。 「ふふ、鈴谷ならそう言ってくれると思っていましたわ。どうぞ、召し上がれ?」 あれ、もしかして…さっきまでのは…わざと…? 「あら、どうかなさいまして?あ、これ、スプーンですわ。はい」

2014-04-30 22:25:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ベッドに腰を掛け、カップにかかったラップを取る。中には熊野の言う通り、プリンが。ふーん、これが自家製。 「いただきまーす」 熊野は目をキラキラさせながら鈴谷の方を見ていた。…若干食べ辛い。気にしないようにして…スプーンでひとすくい取り、口に運ぶ。…あれ。 「甘くないね」

2014-04-30 22:30:26
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ええ、鈴谷はその方が好きでしょう?」 そうだけど。わざわざ鈴谷の好みに合わせて作ってくれたのかな。…作ってる最中も鈴谷の事を考えてくれてたりしたの?…ヤバイ。 「…鈴谷…?」 「あ!ええと…」 いけない、つい口元がニヤけてた…。私ってば、きも…。

2014-04-30 22:35:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「美味しい?」 隣に座る熊野が、覗きこむようにして聞いてくる。妙に嬉しそう。 「うん、めっちゃ美味しい!」 「本当ですの?よかったですわ!」 そしてそれは満面の笑みに変わった。思わず、目を逸らした。直視できなくて…。毎回思うけど、なんつー破壊力…。

2014-04-30 22:40:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「そういえば、何で作ろうと思ったの?」 「ええ、実は鈴谷が演習に出ている間ですけど、扶桑さんと翔鶴さんとで、お菓子作りでもしませんか?ってお話になって。それで早速、というわけですわ」 「へー、そんなことが」 熊野の話を聞きながら、プリンを食べる。…本当に美味しいな、これ。

2014-04-30 22:45:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「そんなに急いで食べなくても、逃げたりしませんわよ?」 「いや、ホント美味しいよ、これ。ほら」 スプーンに乗せた一口サイズのプリンを、熊野に差し出す。 「わたくしは味見で頂きましたわ」 そう言うと思ってたけど、鈴谷はそのまま差し出したまま、熊野を待った。 「…もう」

2014-04-30 22:50:19
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

熊野が髪を軽くかきあげ、スプーンに口を近づける。熊野の唇の間から、桃色の舌が見えた。 「ん…」 熊野の頬が動き、やがてそれが喉へと移動する。こくんと、飲み込む音が聞こえた。 「…甘さ控えめ、鈴谷好みのプリンですわ。ね?」 そう言う熊野に、鈴谷は笑顔で返事をした。

2014-04-30 22:55:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ごちそうさま!やー、美味しかった!」 「お粗末さまでした」 空になったカップを台の上に置く。そしてベッドに寝転んだ。 「鈴谷、行儀が悪くってよ」 熊野が鈴谷を見下ろしながら言う。そんな熊野に、手を伸ばした。 「起こして、熊野」

2014-04-30 23:00:42
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…もう、横着するのもほどほどに…きゃ!?」 手を掴んだ熊野を引き寄せる。熊野が鈴谷の胸の上に倒れこんだ。 「もう、何なんですの?」 「食後の運動をしようと思いまして。あと、おかわりも欲しいかなって」 熊野が呆れたような顔をする。 「…どっちか一つに絞れませんの?」

2014-04-30 23:05:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「だいじょーぶ、両方いっぺんにできるから」 「できるって…ああ、そういうこと…。鈴谷ったら」 呆れ口調の熊野だけど、特に嫌がる様子はしなかった。鈴谷に跨る姿勢になっている熊野のブレザーに手をかけ、下ろしていく。 「糖分の過剰摂取には、注意なさってね」 「んー、頑張る」

2014-04-30 23:10:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

上半身を起こし、左手を熊野の頬に添える。 「じゃ、頂きます」 「…どうぞ、召し上がれ?」 鈴谷の唇で、熊野のしっとりした唇に触れる。しっとりしていて、柔らかい。まるで、プリンみたい。鈴谷は唇を動かし、その感触を堪能した。 「…ん…ふ…」

2014-04-30 23:15:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

舌で熊野の唇を突付く。熊野はそれに反応して口を開き、鈴谷を迎え入れてくれた。…ここが、熊野のとっても甘いところ。甘さ控えめが好きな鈴谷も病みつきになる、極上のスイーツ。 「…ふ…ぁ…」 部屋に水音が響き渡る。熊野の口元から、透明なシロップがあふれた。

2014-04-30 23:20:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…ん…ふ…はぁ…。鈴谷、プリンの味がしますわ…」 「そう?熊野はね、熊野の味がするよ」 「もう…そんな言い方なさらないで…」 「いいじゃん、すごい甘いよ。甘くて、美味しい…」 熊野の薄い腰を抱き、もっと引き寄せる。そしてまた、熊野の自家製スイーツを味わった。

2014-04-30 23:25:20