ある「腐女子｣のヰタ・セクスアリス

かかし @kakasi32

私のボーイズラブにはまったきっかけはサンゾロなんですけどね。サンゾロのきっかけはゾロのすね毛が無くて、サンジくんにすね毛があったことなんです。

かかし @kakasi32

結局そのサイトに出会った時期をはっきりとは覚えていないんですけどね。もうサイト名もうろおぼえで、ブックマークも実家のPC入れ替えで消えてしまったんですが。とにかく私は出会ったんですよ。50代リーマン×60代リーマンBLサイトに。

かかし @kakasi32

衝撃的でした。どうしてこんな爺さんが、どう見たってすね毛あるしよぼよぼだし「加齢臭が」とか「老眼が」とか「ももひきが」とか台詞がわんさかあるのに。どうしてこんなに萌えるのか。この胸の高鳴りはなんなのか。どうしてこんな爺さんのキスシーンで興奮するのか。全てが衝撃でした。

かかし @kakasi32

自分自身が一番衝撃的でした。毎晩親の目を盗んでパソコンで漁りまくりました。すね毛を通り越して初老BL。自分の性癖にもどん引きましたが、同時にサイトの管理人さんを崇めました。どうしてこんなに素敵なCPを創造できるんだろう。感激と同時に、私はCPの幅を広げ始めたのです。

かかし @kakasi32

無料でいかがわしいサイトを漁れるというのは、若いうちにとっては金や仕事が無い分夢中になるものです。隠しリンクの探り方、暗号の解き方を執念深く掘り当てて、どんどんマニアックで神秘的なサイトに出会っていきました。ケモミミ、擬人化、無機物、骨格。一通りは見ていったと思います。

かかし @kakasi32

思うに、深夜に親の目を盗み、つとめて平然とした顔で隠しリンクを破りながら好みのBLを探したあの時期が、私の業を深くしたのかもしれません。もっと深く、もっとときめく、ホモを求めた思春期だったように思います。

かかし @kakasi32

そうこうしていて大学間近になると、お金もそこそこ手に入り、行動範囲も広がります。初めてアニメイトへ友人に連れて行ってもらったのは中学の時ですが、自発的にBLを求めて行ったのはやはり高校後期だったように思います。自我の芽生えです。良くも悪くも。

かかし @kakasi32

恐らく、物足りなくなっていたのでしょう。どんなもんかと覗いてみる気持ちもあったと思います。高校生ですから高いものは買えません。流行りジャンルの新刊、薄い本など買う頭はありませんでした。貧乏性だったのです。目指したのは中古、そして中身が厚い商業BLでした。

かかし @kakasi32

最初は普通の切ない系だったと思います。やはりすね毛は無いつるつる男子でした。かわいかったのは覚えています。商業BLは規定があるのか、かならずといっていいほどエロ描写が入っているのですが、不思議なことに私はそのシーンが来るとなんだか醒めていたのです。

かかし @kakasi32

あんなにサイトでは萌えの要素だったエロシーンが、商業BLでは醒めてしまう。不思議な現象でした。小さな世界ですが公に認められている分、背徳感が足りなかったのでしょうか。それとも展開が早すぎたのか。結局謎は謎のまま、ひたすら中古の商業BLを買っては売り買っては売りしていたのです。

かかし @kakasi32

そして衝撃の商業BLに出会ったその日を、私は恐らく一生忘れないでしょう。高校最後の夏休みのことでした。「それではみなさん。」内田かおる先生のガチムBLです。毛むくじゃらの熊のようなオッサンが、中学生男子（将来有望）に恋をされる。私の脳天を貫く興奮を、想像できるでしょうか。

かかし @kakasi32

すね毛なんて目じゃありません。剛毛です。胸毛もあるし筋肉ダルマ。男らしい男しかそこにいないのに、可憐な心理描写、話の繊細さ、そして攻めの力強さ、不安定な未来の見えない関係。恋。恋。恋。これは恋です。人生二度目の衝撃的恋。続編と一緒に即買いし、台詞を覚えるまで読み直しました。

かかし @kakasi32

貪るように読みふけり、なんて素敵な恋だろうと感激しました。感動したのです。BLで感動するような女です。業が深いのも打頷けます。しかし私にはそれが全てでした。ときめくBL、しかも２作。出会えた私はとても幸せなんじゃないかと思ったりもします。

かかし @kakasi32

大学に入り、社会人になり、金は増えましたが暇は減りました。ゆっくりと好きなCPを探したり見たりときめいたりという時間は少なくなってきました。短い時間で濃厚に萌える術なら学びましたが、あの頃のように衝撃に身を任せて好きな作品を一昼夜読みふける時間は中々ありません。

かかし @kakasi32

腐女子は卒業できないと言います。なぜならそれは病気だからです。言うなれば魂の病気です。根が深く腐っていて再生不可能。しかし本人は幸せです。でも幸せを得る形はやはり年齢や生活で変わっていくのだと思います。好きなものに触れる時間が薄れていく。それを卒業と呼ぶのでしょうか。

かかし @kakasi32

私の人生に大きな打撃を与えたあの2作品への崇拝ともいえる愛はきっと死ぬまで私は忘れないでしょう。多分惚けても。 業の深さと根の深さを決定づけた作品ですが、同時に私の人生を明るく照らしてくれました。わりとなんでも萌えれる、その基礎だったと思います。

かかし @kakasi32

本棚に増えた漫画とBLの山を眺めていると、どうしてもこんなことを考えるのでした。まっとうな性癖ではないけれど、まあ性癖なんてそんなものだし、こんな風にわりと愉しく生きれたのも、BLの衝撃が大きかったのだと思って居る。人生は楽しい。それが夢中になれたならなおさら。