悪い男に騙されない榛名 外伝『霧が晴れたら』邂逅編

改二へのステップとして行われた術式、五十鈴はその最中で懐かしい人物との邂逅を果たす・・・ プロローグ:http://togetter.com/li/660114 前 演習編#2:http://togetter.com/li/662337 次 現在誠意製作中
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五十鈴改 @isuzu_kankore

「二段階目といっても手順は同じです。このヘッドギアを付けて座っていてください」 「分かった」 女性技術者からヘッドギアを受け取り、被る。使っている器材は全く同じのようだ。 椅子に深く座り、目を閉じる。 「始めます」 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:55:26
五十鈴改 @isuzu_kankore

――――――次の瞬間、五十鈴は艦橋にいた。 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:56:04
五十鈴改 @isuzu_kankore

窓からは海がよく見え、下の方には艤装も覗いている。 (…間違いない、”五十鈴”の艦橋だ) 五十鈴は何となく理解した。 ……そして、目の前に立つ男の事も。 #霧が晴れたら

2014-05-03 02:57:52
五十鈴改 @isuzu_kankore

「山本、提督……」 「軽巡五十鈴だな。お互い感じているとは思うが……変な感じだな」 実直そうな顔、真っ直ぐな瞳。その姿は恐らく、大和に乗艦していた時の姿だろう。私にはわかった。 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:10:01
五十鈴改 @isuzu_kankore

「さて…積もる話もある、と言いたいところだが、今ここにいられる時間はあまりにも少ない。必要なことだけ教えよう。まず俺がここにいるわけだけど…」 「私の記憶の中の提督。そうでしょう」 「正解。大和時代の姿になってるのは…君が大和と深く関わっているからかな」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:13:11
五十鈴改 @isuzu_kankore

お見通しというわけだ。ある意味で自分自身の一部のようなものだし当然か。 「もしかしたら山口や松永がここにいたかも知れないわけだが…ま、俺を選んでくれてありがとうと言っておこうか」 「その辺りはほら、やっぱり大和さんが」 隠す必要もない。苦笑しながら答える。 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:16:34
五十鈴改 @isuzu_kankore

「それもそうか。……じゃ、手短に行くか。まだ君が聞いていたのは”インストラクション・ワン”までだったな?」 「ええ。百発の砲弾がダメなら、一千発撃てと…」 「ああ、先の戦争から学んだことの一つだな。俺が今から教えるのは、その次のステップだ」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:18:44
五十鈴改 @isuzu_kankore

「次のステップ……」 「そう。インストラクション・ツー!『艦娘は水の上で水火風の精霊と常にコネクトし、操る存在だ。これをフーリンカザンと称す!』」 「フーリンカザン……」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:20:37
五十鈴改 @isuzu_kankore

「……まあ、分かりやすく言うと『自分に有利な状況を作って戦え』って事だ。例えばスコールに入って敵の目を眩ませたり、機雷源を仕掛けて誘い込んだり」 「成る程」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:22:57
五十鈴改 @isuzu_kankore

「今現在置かれた状況を的確に判断し、波や風、あるいは周りで炎上している敵艦や艤装。そういったものをうまく使って戦局を優位に進める。難しいことだが、理解できれば沈むことはほぼなくなる」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:25:25
五十鈴改 @isuzu_kankore

「……このインストラクションは、ミッドウェーの敗北によるところが大きい。当時既に我々の暗号は解読されていて、まんまと誘い込まれてしまった形になった。空母達の轟沈も、戦局を読み切れず後手後手に回り続けた部分が大きい」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:27:50
五十鈴改 @isuzu_kankore

「俺自身も、情報が筒抜けになっているのを知らないまま視察に向かい、そこで撃墜された」 山本提督はまるで他人事のように淡々と語る。しかし、その言葉に隠された悔しさ、哀しみはいかばかりか。この人も五十鈴の一部なのである。わからないはずはない。 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:31:02
五十鈴改 @isuzu_kankore

……いつしか、涙が出ていた。 それはとめどなく頬を伝い、艦橋の床を濡らした。 「泣くなよ。昔は昔、今は今だ。今お前がその教訓を受け継いでくれたらそれでいいんだ」 ぽんぽん、と肩を叩かれる。 「は、い……っ!」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:33:06
五十鈴改 @isuzu_kankore

「よし。……気を付け!!」 手を話し3歩分後ずさると、不動の姿勢で叫ぶ。私も思わず涙が止まり、不動の姿勢を取る。 「名残惜しいがそろそろ時間である。ここでの教え、ゆめゆめ忘れることのないように」 見ると、周りの景色が薄くなっていた。山本提督も。 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:35:17
五十鈴改 @isuzu_kankore

「はい……ッ!」 また溢れそうな涙をこらえ、応える。山本提督は満足そうにうなずくと、ふっと表情を和らげた。 「ああ、それと」 ……次の言葉が聞こえたのと、すべてが消えるのは同時だった。 「大和の事、よろしく頼む」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:36:46
五十鈴改 @isuzu_kankore

「終わりました」 女性技術者の声で現実に引き戻される。 次いで頭が軽くなった感覚がある。ヘッドギアが外されたのだ。 両頬には、涙が伝った後。まだ完全に乾き切っていない。 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:38:45
五十鈴改 @isuzu_kankore

技術者に礼を述べ廊下に出る。ドアの横で待っていた木曾が立ち上がった。 「おう、お疲れ。……なんだお前、泣いてたのか?」 「うるさい」 ぶっきらぼうに言葉を返す。今はただ、もう少しさっきの邂逅の余韻に浸っていたかった。 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:40:54
五十鈴改 @isuzu_kankore

「ほら、次よ。さっさと行ってきなさい」 「おう、戻るまでには顔洗っとけよ。終わったら作戦会議だ」 「はいはい」 木曾が部屋に入ると、静寂が訪れた。 私は言われた通り顔を洗う気にもならず、しばらく目を瞑っていた。 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:42:47
五十鈴改 @isuzu_kankore

……木曾が戻って来なければ、いつまでもそうしていただろう。 ドアの開閉音に目を向けると、ちょっと涙目の木曾と目が合った。 「お帰り。誰と会ってきた?」 「……大川内艦長」 「ふぅん」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:47:58
五十鈴改 @isuzu_kankore

「お前は?」 「山本提督。インストラクション・ツーを教えて貰った」 「ああ、俺も教えて貰ったな。フーリンカザンだっけ?」 「そうそう。私の場合本人の経験を織り交ぜて言われたから物凄く生々しかった」 「それは何というか……お疲れ」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:52:22
五十鈴改 @isuzu_kankore

そのまま、少し沈黙。 やがて、おもむろに立ち上がったのは私の方だった。 「……さて!ここでいつまでもこうしてても仕方ないでしょ。作戦会議と行きましょうか!さっき言われたことも考えながらね!」 「お……おう、そうだな!」 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:53:40
五十鈴改 @isuzu_kankore

木曾と並んで自分たちの部屋へ向かう。その足取りは心なしかさっきより軽く、しかし確かなものになっている気がした。 #霧が晴れたら

2014-05-03 03:54:36
五十鈴改 @isuzu_kankore

【霧が晴れたら】演習編 終わり。 U-2501編 へ続く #霧が晴れたら

2014-05-03 03:55:58