茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1223回【力（power）ではなく、影響（influence）】連続ツイート

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第１２２３回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。今朝は、昨日から今日にかけて思ったこと。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ちえ（１）時折、Apple TVでBBCのradio 4を聴いている。昨日だったか、ある大国のＧＤＰが別の大国のＧＤＰを今年中にも抜くのではないか、というニュースを流していた。その、台頭著しい大国だが、最近も、少数民族が住む地域の鉄道の駅で、テロがあり、容疑者も亡くなった。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ちえ（２）その大国の国家指導者が、視察に訪れた直後にそのテロがあったことで、指導部は衝撃を受けている、というニュースがＮＨＫで流れていた。その大国の、ちょっと肉まんのような印象がある指導者が、かつての人民服を思い起こさせる奇妙な服を着て、視察している様子の動画があった。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ちえ（３）私は、その大国の指導者の様子を見て、人間として、そのような立場に置かれているのは、必ずしもうれしいことではないと感じた。鉄道駅でのテロを受けて、その大国の指導部は、ますます締め付け、弾圧を強めるという。そのような政策を決定、実施しなければならない立場は、苦しいと感じた。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ちえ（４）政治を志した人は、トップを目指す本能のようなものがあるらしい。議員は総理大臣を目指し、大統領を目指し、共産党員は国家主席を目指す。そこにおける「トップ」というのは、つまりは「力」（power）における最高の地位ということである。その大国の指導者のように。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ちえ（５）一方、人間には、影響（influence）というものがある。これは、力（power）を持っていない者でも持ちうるし、むしろ力を持っていない者の方が、影響を持ちうることが多い。そして、私は、人生において目指すべきものは、「力」ではなく「影響」であると決めてしまっている。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ちえ（６）これから、ますますテロを弾圧するというその大国の指導者は、確かに「力」（power）を持っているだろうが、果たして彼はどんな「影響」（influence）を持っているのだろうかと私は思った。政治とは何か、国家とは何かについて、彼はどんな新しいヴィジョンを示しているのか。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ちえ（７）「影響」がなく、「力」しか持たない政治家は、さびしいものである。私はそう考える。もちろん、理想的には、「影響」と「力」が一致する場合もあるだろう。そうではなくて、人々に感動を与えるヴィジョンや理想の「影響」なしにただ「力」だけを持つ政治家を私は気の毒に思う。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ちえ（８）さらに言えば、「影響」を与えるにしても、どのような人たちに「影響」を与えるのか、という問題がある。特定の人たちを差別したり、古い国家観にこだわる人たちに影響を与え、熱狂を起こし、支持される政治家も、また、本当は寂しい存在だと思う。彼の存在は悪しき循環に過ぎないからだ。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ちえ（９）「力」を持つことなど夢にも思わぬ私たち大多数は、自分の営為が、どのような人たちに「影響」を与えているのか、それはどのような小さなさざ波を世界の中に起こしつつあるのか、時折振り返ってみるのが良いと思う。「力」は時に憎しみによって支えられるが、「影響」を生むのは愛である。

茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第１２２３回「力（power）ではなく、影響（influence）」でした。