ツイノベ

ツイノベ
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なのか @_t__y__r_

その声で、同じ名前の子を呼ばないで。私で無いと知っているのに、理解しているのに、反射的に0.1%の奇跡を思い描いて心が跳ね上がるから。君の声は、どんな雑踏や喧騒の中でも私の鼓膜を震わせるほどよく通るから。だから、その声で、同じ名前の子を呼ばないで。#書き出し #twinovel

2014-04-20 21:52:12
なのか @_t__y__r_

彼女の素直さは、あくまで人工的なものである。計算尽くされた美貌と声、言葉遣い、仕草。今目の前でジョッキを飲み干している彼女とあの高嶺の花が同一人物だとは、誰も思わないだろう。でも、たまに「あんたの前なら存分に酔えるわ」投下される本音の反応には困る。#書き出し #twinovel

2014-04-13 01:45:20
なのか @_t__y__r_

寝る時と起きた時に、ひとりじゃないって思えるのってすごく幸せじゃない?そう言って笑ったきみと別れて2週間。寝相の悪い誰かさんのせいで、狭く感じたセミダブルの布団をちょうどよく感じ始めた頃、ふと、思い出した。……未練、じゃなくて。ただ少し、寂しかった。#書き出し #twinovel

2014-04-12 00:00:47
なのか @_t__y__r_

この恋が禁断と知っていれば、手を出さなかっただろうか。--否。それでも私は何度だって罪を犯すだろう。あの人の顔を思い浮かべて鏡をなぞる。この胸のときめきは、熱さは、出会ったあの日から止められないのだから。猛毒を一気に飲み干した。今から私は、悪女になる。#一文 #twinovel

2014-04-11 11:53:35
なのか @_t__y__r_

空をまたげる、銀の靴がほしい。きらりと光っては勢いよく流れ行くあの星みたいな、そんな靴が。それさえあれば、幾千の憂う夜にさよならを言えるだろうに。今日もコイツは沈黙したままだ。明日になれば、朝が来れば、連絡がきていることを祈って眠りにつく午前2時。#書き出し #twinovel

2014-04-11 00:13:28
なのか @_t__y__r_

控えめなノックに、私はパソコンに打ち込んでいた物語を一時中断した。促すと、妻がやけに楽しげな表情で入ってくる。「あなた、あの子が」そう見せられたのはくしゃくしゃになった原稿用紙。拙い文字で綴られたそれは、ゴミとして捨てるにはもったいのない紙屑だった。 #締め #twinovel

2014-04-03 21:51:38
なのか @_t__y__r_

あいたいのは、いつだって、私だけだ。連絡するのも、キスをするのも、全部ぜんぶ私から。相変わらず一緒に寝てくれないあなたの背中に零しそうになった本音と涙を飲み込む。「私のこと、ホントに好き?」聞いてしまったら、最後、2人を繋ぐ何かが壊れる気がした。#書き出し #twinovel

2014-04-03 21:32:51
なのか @_t__y__r_

君にあげられるものを指折り数える。この間見ていた4℃のネックレス。得意料理のパスタ。あと書斎にある洋書。それから、……うん。君が欲しいならお気に入りのソファーも付けよう。ポケットに入れたベルベットの感触を確かめて、-ーさて。彼女は何と言うだろうか。#書き出し #twinovel

2014-04-08 00:08:08
なのか @_t__y__r_

月が満ちる夜の海に出かけてはいけないよ。祖母が昔、夜更かしする私に幾度も言ったそれが不意に頭をよぎった。夜空には、満月。少し開けた窓から入ってくる風がとても気持ちよくて、清々しい。ようやく鬱々した毎日から抜け出せる、そう思いながら私は車を走らせる。#書き出し #twinovel

2014-04-03 21:11:05
なのか @_t__y__r_

代わりなんて、いくらでもいるんでしょう? 小さく笑った君にかける言葉が見つからなかった。--否、頭に浮かんではいた。ただ、あまりにも月並み過ぎるそれはなんの慰めにもならないだろうと思い、言えなかったのだ。君が部屋を出て行くまで、俺は、ただ立っていた。#書き出し #twinovel

2014-04-02 23:45:32
なのか @_t__y__r_

今だけ、泣かない勇気をください。にっこり笑って「さよなら」を言わせてください。私が泣いてしまったら、きっと、優しいあの人は自分を偽ってでも私を慰めに来るわ。鏡に向かって、何度目かの別れの練習。--滲んでぼやけた鏡の中、私と彼が幸せそうに笑っていた。#書き出し #twinovel

2014-04-10 00:05:40