Blades-H"いちにちめ

現在開発中のノベルゲームBlades-H"のTwitterシナリオ連載の一日目です。 製品版ではプロローグ付加などの改善がされる場合があります。 http://twilog.org/blades_h_
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Blades-H @Blades_H_

ゲーム『Blades-H"』より

2014-03-26 21:52:59
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俺は教壇の前でお辞儀をして、黒板に文字を書く。『都久志 渓(つくし けい)』「はじめまして。これから皆さんと一緒に勉強させて頂きます。都久志です」そう言ってペコリと頭を下げた。転校の挨拶は過不足無く。目立ち過ぎても無味乾燥でもいけない。

2014-03-26 21:54:29
Blades-H @Blades_H_

「そういう訳なので、皆仲良くしてやってくれ。席は……とりあえず一番後ろでいいか?席替えまで我慢してくれー」担任の先生がやる気なさげにそう補足する。「そうだな……何か質問がある奴は居るか?」恒例行事と言ってもいい、質問タイム。そう言われた途端にぱらぱらと手が挙がる。

2014-03-26 21:55:27
Blades-H @Blades_H_

「適当に指名して、答えてやってくれ」先生がそう言って、俺に丸投げする。結構適当な性格のようだ。こういう時は、比較的目立つ人を……そう思いながら教室を見回した矢先、一人の生徒のところで俺の視線は止まった。

2014-03-26 21:57:22
Blades-H @Blades_H_

長い黒髪。整った顔立。多分、区分するなら美少女というカテゴリーに収まるであろう彼女。だが、それが理由では無い。なんというか……『違った』のだ。まるで、工事現場にある立入禁止の標識の様に。俺が彼女を指した時、教室が少しざわついた気がした。

2014-03-26 22:04:20
Blades-H @Blades_H_

「都久志……さん」「はい」「沮桐です。質問は……そうだな、好きな食べ物は?」沮桐と名乗ったその女生徒は、俺に指されて渋々といった調子で質問を口にする。「和食全般です。特に、美味しいお味噌汁が好物です」俺はそれに答える。何か不味かったのだろうか。

2014-03-26 22:05:56
Blades-H @Blades_H_

俺が答え終わると、幅桐は席に座った。「あー、他には?無いか?」 先生が呼びかけるが、今度は誰も手を挙げない。不思議に思っていると、一人が手を挙げた。「はい」「どうぞ」今度は、少し地味な三つ編みの、いかにも真面目そうな女生徒だった。

2014-03-26 22:07:26
Blades-H @Blades_H_

「三好です。手を挙げて質問すればいいんですよね?」その瞬間、俺はさっき教室がざわついた理由が判った。彼女……沮桐は、手を挙げていなかったのだ。

2014-03-26 22:10:51
Blades-H @Blades_H_

しくじった、最初から。その後も当たり障りの無い質問が幾つか出て、HRの時間が押したため質問コーナーは打ち切りとなった。唯一の問題は、彼女。フルネームは沮桐純と言うらしい。彼女とは初対面だった筈だ。なのに、目を奪われた。……これは、一目惚れだろうか?

2014-03-27 12:37:34
Blades-H @Blades_H_

まさか。有り得ない。それにあれは、多分もっと危険な感覚だ。色々考えても埒が開かないので、一旦、彼女のことは忘れよう。忘れるべきだ。それよりも、大事なのは自分のクラスでの立ち位置だ。

2014-03-27 12:39:47
Blades-H @Blades_H_

この時期、クラス内の人間関係は(ありがちな喧嘩や惚れた腫れたを別にすれば)ほぼ固まりきっている。そこに転校生という異物が放り込まれても……座して居れば、待っているのは孤立だ。まずは、誰かに声をかけてみるべきだろう。……彼女、沮桐以外で。

2014-03-27 12:41:25
Blades-H @Blades_H_

そこまで考えて、俺はある一人の顔を思い浮かべる。つい先程の指名事件の後、危うい空気を打ち破ってくれた人物。確か、三好さん。思考がそこまで達したところで、俺の意識は刈り取られた。

2014-03-27 12:43:56
Blades-H @Blades_H_

「ここは……どこだ?」目が覚めた時、俺はベッドの上だった。周りはカーテンで囲まれている。ここは……保健室、か?後頭部が痛い。記憶を手繰る。俺は体育の時間に考え事をしていた筈。

2014-03-27 12:54:30
Blades-H @Blades_H_

……把握した。考え事に夢中で注意が散漫になったところで、後頭部にボールが直撃したのだろう。最後に覚えている場面では、確かバスケットボールでパスの練習をしていた筈だ。

2014-03-27 12:57:26
Blades-H @Blades_H_

意識は戻ったものの、頭はガンガン痛い。「おー、意識が戻ったか。大丈夫か?」暫くベッドの上で暇を持て余していると、養護教諭らしき女性が声を掛けてきた。 軽くウェーブがかかった髪。眼鏡。年は「おっとそこまでだ」「何ですか?いきなり」考え事に割り込まないで欲しい。

2014-03-27 13:00:29
Blades-H @Blades_H_

「ちょと頭を見せてみろ。……よし、腫れてるな。まだ痛いか?」そう言って、後頭部にできていた瘤の部分を軽く触った。「……少し痛いですね」「うん、とりあえず大丈夫みたいだな。意識もはっきりしてる」そう言って、彼女は氷嚢を冷蔵庫から取り出し、瘤にあてた。

2014-03-27 13:05:49
Blades-H @Blades_H_

「……何時間くらい経ちました?」「君がここに運ばれてからか?今は昼休みだから……2時間くらいか」思ったより時間が経っていたようだ。俺がベッドを慌てて出ようとすると、「まぁ落ち着け。教室で倒れるのもつまらないだろう?放課後まで寝ていくといい。……私の責任問題になる」

2014-03-27 13:10:00
Blades-H @Blades_H_

そういうことなら、無理をする必要も無いだろう。正直、まだ少しふらふらする。しかし、担任といい、この学校は適当な教師が多いのか?「そういえば自己紹介がまだだったな。私はこの学校の養護教諭、上村佐智子という」……何だろう。俺はその自己紹介に妙な違和感を覚えた。

2014-03-27 13:12:56
Blades-H @Blades_H_

「……都久志です。今日転校して来ました」一応、名乗り返す。「知っている。既に君の事は、初日に保健室に担ぎ込まれた転校生として職員室で話題騒然だ」嫌な噂のされ方もあったものである。「ところで、私はこれから席を外すが……くれぐれも不埒な行為は慎むように」「不埒な行為?」

2014-03-27 13:14:50
Blades-H @Blades_H_

「主に思春期の学生が溢れるリビドーを解放するような行為のことだ」「しませんよ!」「はっはっは。ではちょっと行ってくる。早くしないと、蕎麦が伸びるからな」……もしかして、俺の意識が戻るまで昼飯を待ってくれたのだろうか?言動とは裏腹に、きちんとした先生なのかもしれない。言動はアレだが

2014-03-27 13:19:44
Blades-H @Blades_H_

ガララッ 多分、先生が出かけてから数分くらいして。保健室の引き扉が開く音がした。 ……ん?もう戻ってきたのだろうか?「失礼する」そう言う声が聞こえたので、それが先生でないことが判った。声には聞き覚えがある。この声は……彼女。沮桐純だ。

2014-03-27 13:31:56
Blades-H @Blades_H_

「傷の具合はどうだ?」部屋へ入り、俺のベッドの隣に来るなり、彼女はそう聞いてくる。「大したことないさ」「本当にすまない。私の不注意が原因だ」どうやら、おれにボールをぶつけた犯人は彼女らしい。「いや、お互い様だよ」考え事をしていた俺も俺だ。

2014-03-27 13:41:51