Blades-H"2日目A

Blades-H"の二日目途中まで。
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Blades-H @Blades_H_

転校二日目。昨日はいきなり保健室直行という醜態を晒してしまった。だから今日こそは色々と挽回するために、きちんと過ごさなくては。なにせ最初が肝心だ。……そう気負ったら、家を早く出すぎた。具体的に言うと、午前七時に学校に着くぐらい。気分は爽快。昨日保健室で寝ていた所為かもしれない。

2014-03-28 12:03:00
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朝練の生徒は既に出た後らしく、教室には俺以外には誰も……いや、居た。一人だけ。 俺の隣の席。昨日色々とあった女生徒、沮桐純が既に座っていた。

2014-03-28 12:08:00
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「おはよう」「ああ、おはよう」挨拶を交わす。沮桐は昨日と特に変わった様子はない。何故こんな早い時間に居るのかと聞くと、「なんとなく目が覚めて、こんな早い時間に起きてしまった」そう言って彼女は嬉しそうに笑った。

2014-03-28 12:13:47
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そう言って彼女は嬉しそうに笑った。「昨日の怪我は大丈夫か?」瘤は出たままだが、特に問題は無い。数日放っておけば治るだろう、と伝えた。「そうか。それは何よりだ」彼女は少し安心した様子だった。俺も少しほっとする。その後、俺達はとりとめのない話を暫くして、授業を待った。

2014-03-28 12:18:00
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……今日は、不思議と話の種は尽きなかった。お互い口数少なく、授業のこと、保健室の先生のこと、昨日のことや今日の予定のことを話す。大抵は数語言葉を交わすだけで次の話題に移ってしまうのだが、それでも居心地は良かった。

2014-03-28 12:27:20
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だが居心地のいい空間はいつまでもは続かず、そのうち、他の生徒たちがぽつぽつと登校してくる。部活の練習に出ていた生徒も慌しく教室へ駆け込み、何人かの生徒が始業ぎりぎりに滑り込んでくる。そうして最後に先生が教壇へ上り、いつも通りと呼ぶにはまだ早く、しかし退屈であろう日常が幕開けた。

2014-03-28 12:34:30
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昼休み。「こんにちは」そう言って、誰かが俺に声をかけてきた。確か彼女は、昨日会った巫女さんこと、三好さんだ。「こんにちは、三好さん」「昨日はお世話になりました」「こちらこそ」昨日の神社と比べても少し他人行儀になってしまうのは、ここが学校だからだろうか。

2014-03-28 12:48:35
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会話が途切れそうになったので、話題を探す。「三好さんは、お昼はどうするんです?」「お弁当があるので、適当なところで食べようかと」しまった。この話題は、これ以上広がらない。だが、このまま沈黙が続くのも気まずい。……かくなる上は。

2014-03-28 12:58:51
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「……なら、一緒にどこかで食べませんか?」俺が言うと、彼女は少しびっくりした様子だったが、「はい、喜んで!」すぐにそう答えてくれた。とはいえ、少し不躾だっただろうか? そんな俺の悩みを他所に、彼女は「いい場所がありますから」と、俺を校舎の外へと連れ出した。

2014-03-28 13:08:03
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教室から歩いて5分弱。辿り着いたのは、庭……とまではいえないが、それなりに緑生い茂る校庭の隅のベンチだった。休み時間だが、近くに人気は無い。三好さん曰く、意外と穴場らしい。

2014-03-28 13:18:56
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俺と彼女は、ベンチの埃を払って腰掛け、弁当の包を広げ始める。とは言っても、俺の方は朝急いで包んだおにぎりだ。普段ならとてもこんなことは出来ないのだが、偶の早起きの賜物だった。一方、彼女が取り出したのは立派なお弁当……というよりは、もはや重箱であった。

2014-03-28 13:24:32
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「よかったらどうぞ」「……いいのか?」確かに、彼女の重箱は一人分には明らかに多いのだが。「昨日は失礼なことを言ってしまいましたから」ああ、破廉恥がどうこうとかいう。 俺自身は特に気にしては居なかったが、お詫びを無碍にするのも野暮というものだ。

2014-03-28 21:17:34
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……そのために態々余分に作ってきたのか?だから俺に声をかけて?いや、ここは敢えて考えまい。どちらにしろ、俺がすることは同じだ。「いただきます」そう言って重箱の蓋を開け、彼女が渡してくれた割り箸で、まずひじきを口に運ぶ。美味しい。

2014-03-28 21:27:46
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「どうですか?」神妙な面持ちで聞いてくる彼女。「……凄い」率直な感想を口にした。美味いのは勿論だが、それ以前に凄い。重箱に入っているのはひじきの煮物だけではない。何種類ものおかずを、これだけの丁寧さで作るのにどれ程の時間がかかるのか。

2014-03-28 21:35:22
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基本、朝の遅い自分には逆立ちしても真似のできない芸当である。尊敬に値する。「ありがとうございます」素直にお礼を口にする彼女は、きっと、真っ直ぐな人間なのだろう。……と、そこで俺は異変に気付いた。耳障りな虫の羽音。見回すと、蜂だ。この季節に居るのは珍しい。

2014-03-28 21:45:31
Blades-H @Blades_H_

「どうかされましたか?」「いや、蜂」「え、嘘?きゃあっ!!」慌てて立ち上がろうとして、俺と彼女の身体が縺れる。弁当が地面へと散らばり、彼女へ覆い被さるように俺は倒れこんだ。「てて……大丈夫か?」状況を確認する。目の前には、彼女の顔。右手は……

2014-03-28 21:58:04
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「その……すみません、退いて頂けると」彼女の胸の上。昨日とは逆の構図だった。これがあれなのか。ラッキースケベというものか。そんなどうでもいいことを考えた。それより、地面に食わせたお弁当が勿体ない。あんなに美味しい物をむざむざ捨てさせるとは、蜂め。許すまじ。食べ物の恨みは怖いのだ。

2014-03-28 22:03:12
Blades-H @Blades_H_

「せいっ!」ベンチにとまった蜂を、脱いだ靴で叩き潰す。一撃必殺。反撃の隙は与えない。「もう大丈夫だ」「あ……ありがとうございます」結局、彼女の重箱は台無しになってしまったので、俺の持ってきたおむすびを二人で分けて食べることになった。

2014-03-28 22:09:58
Blades-H @Blades_H_

「……すみません、お弁当を台無しにしてしまった上に、お昼まで分けていただいて」「本当にこれは事故なんだから、気にしないでいい。また俺の分まで作ろうなんて、思わなくていいから」「……!どうしてそれを?」バレないとでも思っていたのだろうか?

2014-03-28 22:17:51
Blades-H @Blades_H_

「女子高生があんな巨大なお弁当箱を持ってくる訳無いだろう」運動部辺りならまだしも。彼女は多分文化系……だと思う。朝練の時も居なかったし。「本当に、ありがとうございます」「気にしないでくれ、本当に」彼女は些か責任感が強すぎる所がある気がする。

2014-03-28 22:23:31
Blades-H @Blades_H_

俺と彼女は教室まで戻り、別れてそれぞれ自分の席に座る。自分の席に着いた後。なんとなく、手を握って開く動作を繰り返す。彼女の胸の感触を反芻するように。「…………柔らかかったな」違うだろう。変態か自分は。

2014-03-28 22:30:42
Blades-H @Blades_H_

放課後。授業が終わり、ノートと筆箱を鞄に放り込んで席を立とうとしたその時。「君は、自転車は持っていないのか?」「持ってない」かなり唐突に、沮桐が声を掛けてきた。半ば反射的に答えを返す。

2014-03-29 12:39:06
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