【小話まとめ】め屋

荻ノ目(@ogi_no_me)が気まぐれに続けているシリーズ、「私」と店主のいる風景、「め屋」の呟きをまとめました。
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おぎのめはいません。 @ogi_no_me

その店の戸へ暖簾がかかるのは、雨の日だけなのである。 通り雨、狐の嫁入り、そんな一瞬にも不思議と暖簾はかかっているので、きっと店主は人間ではないのだろう。 その店の中は薄暗く、湿っぽくて埃が舞っている。棚には何も並んでいないけれども、確かにそこは店なのだ。 #おぎのめも #め屋

2014-05-03 22:03:39
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

もし見かけたなら立ち寄ってみるといい。店に足を踏み入れて、空っぽの棚をぼうっと見上げていると、どこからともなく、こんな声が聞こえてくるだろう。 「いらっしゃいお客さん。何をお探しか?」 売るものが一見見当たらずとも、そこは確かに店なのだ。 #おぎのめも #め屋

2014-05-03 22:06:21
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

私もそうやってぼうっと高い棚を見上げていたら、声をかけられたのだ。 「傘、は置いてありませんか」 「ふうむ。傘か」 声の主はくるりと私へ背を向けた。くるりとふたたび私の方を向いたとき、その手には黄色い雨傘の持ち手がぎゅっと握られていた。 「これでいかがかな」 #おぎのめも #め屋

2014-05-03 22:37:17
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

結局、私はその傘を借りた。買ったのでなく、借りたのだ。 それが、私とその店の縁のきっかけ、である。 #おぎのめも #め屋

2014-05-03 22:50:40
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

#おぎのめも #め屋 昨晩の自分のついっと読み返してるけど果たしてどういう設定にするつもりだったのか全く思い出せない……私は誰で店主は一体どんな見目で縁てなんなんだ……おおう……

2014-05-04 12:52:30
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

#おぎのめも #め屋 と思いつつも、店の内観決まってるし、またぼそぼそつぶやいていく。雨の日にしか暖簾の出ない、「め屋」の話。

2014-05-04 12:53:58
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

今のは、手品ですか。 手品って、何がさ。 傘、色が変わりましたよね。 ううん、そうとも言うか。そうだね、うん。 私へ傘を差しだしながら、その人は首を傾げたり、うんうんと唸ったりしていました。 私はそれを眺めながら、差し出された傘の柄をぎゅっと握ります。 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 00:30:30
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

手品なら、種がないと。 私がしっかりその傘を握った途端、彼がそんなことを言います。だから私は、手元の傘をじっと見つめてみるのでした。どこにも変わったところのない、ただのビニール傘です。 調べて、次また、持ってきます。 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 00:32:47
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

私がそういうと、店主はにいっと笑いました。 がんばっておくれ。ああ、そういうことなら、その傘は貸しにしとこう。次来るときに返してくれればいい。 店主がそう言ったので、私ははい、と返事をして、その傘を借りていくことに決めました。 一番最初の、雨の日です。 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 00:35:31
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

今日は雨。め屋が開店中。この中にお客様はいらっしゃいますか? #おぎのめも #め屋

2014-05-05 17:35:17
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

今日のお客は、まだ小さい男の子だったらしい。 らしい、というのは、私が店に入る一瞬、すれ違うだけだったから。半ズボンと半袖のTシャツへ、キャップを被って店の外へ駆けていく姿は、まったく、可愛らしい男の子に見えたのだった。 「今日はなにを売ったんですか?」 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 22:25:46
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

「さあ。なんだと思う?」 「分かるわけないでしょう。もったいぶらないで、教えてくれたらいいのに」 「せっかちだなあ。あの子はね、最後の桜を買いにきたんだよ。この雨で散ってしまう前にね」 店主はそう言いながら、棚をみがいている。何も並んでいない、空っぽの棚を。 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 22:29:19
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

「また手品で出してあげたんですね」 「手品? うーん、まあそれでいいけど。手品ねえ……」 「何が、納得いかないの?」 「手品なんて言ったら、種があるみたいじゃあないの」 くるり。まわった手のひらへ、瞬く間に淡いピンク色の花弁が溢れる。 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 22:31:56
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

それはまったく、何の前触れになるような挙動もなしのことだった。もこもこと溢れた花弁は、床の上へはらはら積もる。はらはら、そこだけ桜が咲いてたように。 確かに、これを手品といったら、怒られるのかもしれない。でも私はどうしたって、これを手品と呼びたいのだった。 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 22:35:42
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

「……あの子には、なにを出してあげたんですか?」 「なあに。桜の枝を一つさね。濡れてないのを、抱えて、走ってったはずさ。すれ違ったろう?」 「はい。元気そうな男の子」 「いんや」 「え」 店主の否定に思わず変な声が出る。店主は花弁の手をぎゅっと握った。 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 22:38:52
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

「可愛い女の子だったさ」 「そう、ですか」 「ああ」 店主の手が再び開くと、その上には、花の飾りの髪留めがちょんと乗っていた。ほうら。店主はそう言って私の方へ手を差し伸べる。だから私はその髪留めを、手にするしかなくなってしまった。 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 22:41:12
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

小さくて可愛らしい花の飾りの髪留めは、きっと私には似合わない。 「そんなことないさ、つけて御覧」 そう思うのに店主が笑いながら言うものなので、言われるまま、髪留めで自分の前髪を斜めに留めた。 「似合います?」 「うん、とても」 店主が笑む。私も、笑う。 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 22:43:32
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

店に来たばかりなのになんだか泣きたくなってしまった。 外では雨がしとしと、降っている。 #おぎのめも #め屋

2014-05-05 22:46:41
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

#おぎのめも #め屋 雨の日にしかあかないめ屋と「私」のお話。

2014-05-05 22:48:55
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

#おぎのめも #め屋 「私」も雨の日にしか出かけられないのでは、という着想を得ました。肉付け肉付け。まとまりますように、動き出しますように。

2014-05-05 23:03:24
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

今日もどこかの街では雨が降っています。 どこかの街のどこかの角でめ屋が開店中です。 お客様はいらっしゃいますか? #おぎのめも #め屋

2014-05-10 23:26:36
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

忙しそうに店を出て行くサラリーマンとすれ違った。彼の走りが暖簾をふわりと揺らしていく。 それをくぐって店に入れば、店主が、何も並んでいない棚を熱心に見上げていた。 「……さっきのもお客さんですか」 私が聞くと、店主はこちらを振り向いて、うん、と頷いた。 #おぎのめも #め屋

2014-05-11 00:38:44
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

「何を売ったんですか」 「時間を、ちょいとね」 こちらを振り向いた手のひらに、懐中時計が乗っている。蓋があきっぱなしのその時計、に、針はない。 #おぎのめも #め屋

2014-05-11 07:00:34
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

「三日前の恋人の誕生日をもう一度、というもんだからね。お望み通りにしてあげたのさ」 店主はそう言って、手のひらを握り振ってみせる。再び開かれた手のひらの上には何もない。 代わり、かち、かちと頭上から音がする。見上げれば、鳩時計が壁へぶら下がっている。 #おぎのめも #め屋

2014-05-11 08:25:09
おぎのめはいません。 @ogi_no_me

さっきまではなかったのに。 店主を見ると、にいっと猫のように笑っている。 「……彼は三日前へ戻れたんですか」 「さあて」 どうだろうね。店主は肩をすくめ、カウンターの奥、丸椅子へ腰掛ける。 「彼にとっちゃ似たようなもんだろう。恋人の誕生日が今日になったんだ」 #おぎのめも #め屋

2014-05-11 08:28:39
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