情熱大陸 ~カインツ・アーウィンケル~

今この時を生きる伝説の虹色名詠士。カインツ・アーウィンケルの秘められた素顔に迫る。
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超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

虹色名詠士の朝は早い。日が昇るよりも早く、彼はベッドより起き上がる。 ────どうしてそんなに朝が早いのですか? 『眠ってる間に、部屋に誰かが忍び込んでないかが不安で…』 寝起きの不機嫌そうな視線で、彼はそう答える。虹色名詠士の闇は深い。 我々は彼の一日を密着取材することにした。

2014-05-15 22:48:34
新しい原稿だよ、羊 @bucho5459

@Selah_Nesia 顔を洗うと彼は部屋の中だと言うのにコートを羽織った。 『友人に頂いたんですよ』 そうはにかむ彼は、少しだけ幼い表情を見せる。思わず深く尋ねることを忘れてしまった我々をおいて、彼はキッチンの方へと向かった。 今日の朝はトーストのようだ。 続き待ってます

2014-05-15 22:54:09
超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

日の光がようやく町を照らし始める時間に、彼は宿を出る。 ────本日はどちらへ? 『気の向くまま…と言いたいところなんですが、これから会合なんですよ』 虹色名詠士のもう一つの顔、イ短調。どうやら今日の我々は彼の素顔を2つ知ることができそうだ。

2014-05-15 23:08:49
超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

次の列車に乗れば集合の時間には間に合うのだというが、ここで思わぬアクシデント。 『……あっ』 列車の切符を買おうとして、財布を宿に忘れたことに気づいた生ける伝説。カメラに見せた照れ顔もまた、凛々しい彼が普段は見せない表情である。

2014-05-15 23:08:59
超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

あれ? 情熱大陸カインツまだ僕のターン?

2014-05-15 23:41:29
超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

『完全に遅刻ですね』 ベッドの下の隙間から財布を発見し、大急ぎで駅へと戻った我々は、無情にも汽笛を鳴らして駆けてゆく列車を見送った。 ────大丈夫なんですか? 『いつものことです、慣れっこですよ』 そう言ってにこやかに笑う彼。この余裕こそ、大物の風格と言うやつだろう。

2014-05-15 23:45:42
新しい原稿だよ、羊 @bucho5459

えっずっと枯れ草さんのターンでは

2014-05-15 23:42:49
新しい原稿だよ、羊 @bucho5459

次の電車まで、一時間。彼はふらりふらりと我々がいることすら忘れたように町をさまよう。 『あ』 ふと、彼は花屋の前で唐突に立ち止まった。どうやら小さなブーケを見ているらしい。 『これ下さい』 コインと引き換えに手に入れたブーケ。それを手に佇む様子は、なんとも絵になっていた。

2014-05-16 00:02:57
新しい原稿だよ、羊 @bucho5459

我々がブーケについて尋ねる前に、 『そろそろ駅に行きましょうか』 と彼が笑う。ふらりと歩き回っただけなのに、時間が夏の風のように軽やかな余韻を残し去って行く。これも、虹色名詠なのだろうか。 列車に乗ると、窓際の席に腰掛け、ブーケを手に持ったまま彼は走り出す景色を見つめていた。

2014-05-16 00:03:02
新しい原稿だよ、羊 @bucho5459

『窓、開けてもいいですか』 彼は常にとても丁寧だ。世界で唯一にもかかわらず、どこか存在が希薄に感じる。我々が頷いたのを見ると、彼は窓を全開にした。そしてブーケを包んでいた包装紙を全て剥がし、花だけにすると、その花を全て窓の外に放ってしまった。赤、青、白の花が風に乗り旅立って行く。

2014-05-16 00:03:06
超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

風に乗って、遙か後ろへと流れて消えた鮮やかな花束。 カメラに映す間もない一瞬の出来事だった。 ────今のブーケは? 『目印…いや。贈り物です』 何の臆面も迷いもない、真面目な瞳で、彼は我々の質問にそう答える。しかしその答えは、どうにも要領を得ないものだった。

2014-05-16 00:24:05
超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

今の行動と、"贈り物"と言う言葉。いったいどんな関係があるというのだろう。 ────贈り物……。それは…ファンサービスということですか? 『そんな言い方をすると怒られちゃいそうですけれど…似たようなものですね』 そう曖昧に微笑む虹色名詠士。

2014-05-16 00:24:11
超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

彼が窓を閉める瞬間。 "ボクはここにいるからね"。 吹き込む風に髪をなびかせながら、消え入りそうな声でそう呟いたように聞こえたのは、我々の気のせいだったのだろうか。 列車の旅は、まだ終わらない。

2014-05-16 00:25:51
ウオオオオ @Karuhary

枯れ草さんリクエストの「うたたねネイト」ですー。5分以上かかってしまった... http://t.co/kdRqUVdmT5

2014-05-16 00:20:39
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超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

CMのネイト君アイキャッチ。糞君は死ぬ。

2014-05-16 00:29:13
新しい原稿だよ、羊 @bucho5459

かたりかたりと列車はゆるやかにスピードを落とし、静かな町に入っていく。他の誰も降りず、乗る人もほんの少し。そんな駅に我々は降り立った。 『実は方向音痴なんですよね』 どこだっけ、と小さく呟くと彼はひょろりと歩き出す。大丈夫ですかと問えば、たぶん、と曖昧な返答。どうなることやら。

2014-05-16 23:24:10
新しい原稿だよ、羊 @bucho5459

『あら、カインツ。珍しいですね、どうしましたか』 十五分ほど彷徨っていると、前方から白銀色の髪をした美しい女性が声をかけてきた。 『ティンカさん!あれ、会合あるんですよね』 イ短調5番に名を連ねるティンカ・イレイソン。彼は嬉しそうにティンカ女史の方へ近付く。

2014-05-16 23:24:23
新しい原稿だよ、羊 @bucho5459

『まあ…あの、いつも遅刻ですのでてっきり今回も来ないのかと思って…先ほど重要な話し合いは終わってしまいました』 がくり、と彼の肩が大きく下がる。 『あー、とりあえず先輩のところに行きますか……はあー』 生きる伝説は方向音痴。ますます彼は親しみやすくなっていく。

2014-05-16 23:24:31
新しい原稿だよ、羊 @bucho5459

これ以上迷子になってはいけませんからね、と微笑むティンカ女史に連れられた彼を見送り、我々は少々の休息を得た。 彼の側で共に過ごすと、たくさんの発見がある。しかしそれが彼を近くさせるのが遠くさせるのか、まだ我々にはわからない。 この取材を通して彼の印象はどうなるのか。楽しみである。

2014-05-16 23:24:34
新しい原稿だよ、羊 @bucho5459

はい、枯れ草さんバイト頑張ってくださいね。パス!!

2014-05-16 23:24:52
超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

午後二時半。ようやく話し合いを終えた彼と合流する。その顔には苦笑いが浮かんでいた。 ────ずいぶんと時間がかかりましたね? 『ええまあ…半分以上遅刻へのお小言でしたけど』 遅刻することは日常茶飯事でも、怒られることは怒られるらしい。イ短調も、人の寄り合いであることに違いはない。

2014-05-18 00:53:46
超カイイブクレクレマンⅡ世 @selah_nesia

────もうお昼はとられたんですか? 『ずっと話詰めだったもので。もし皆さんもまだでしたら、ご一緒しませんか?』 ありがたい申し出だ。人々からの羨望を欲しいがままにする彼の、日ごろの食生活とはどんなものなのだろう。我々は彼のいきつけという料理店へと向かった。

2014-05-18 00:54:30