鳥さんの獅子虎まとめです!

昨日深夜にあげられていたとりやろうさんの作品です。リアルタイムで書き続けていかれる才能ほんとにすごい!そしてせつない… ご本人がPC故障中のため、代わりにまとめさせていただきました!
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鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「よう。早かったな」「虎徹さんをかえせ」「ジュニア君のもんじゃねぇだろ」「あなたのものでもない」「そりゃそうだ」二人の声は妙にはっきり聞こえた。「どこに行くつもりだったんだ」「さてな。俺もわかんねぇ。だってさすらいの重力王子だしぃ?」「ふざけるな!」

2014-05-24 02:00:54
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「お前は虎徹さんの尊厳を踏みにじっている」「自覚はあるぜ?」「だったら今すぐ彼の能力を解け!」なに? ライアンに能力がとけるのか?「へぇ、あいつから聞いたんだ。解除の条件。ジュニア君許せんの?」「…それとこれとは別問題だ」

2014-05-24 02:06:11
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 俺はどうにかこうにか腕を上げてドアを開けた。足を降ろす力はもうなかったが、落ちるくらいは出来そうだ。「同じ言葉、同じだけ気持ちを込めて五回口に出す。それが解除の条件だ」ライアンは俺にも聞こえるように言う。

2014-05-24 02:13:15
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「今すぐ言え。今すぐ虎徹さんを元に戻せ!」「そう熱くなんなよ。もう四回は言ってっからさぁ」四回言ってる? 一体どんな言葉なのか、四回言われているのに全然思い出せない。でも頼む、ライアン。「い、うな…」俺は言いながら、車の外に落ちた。

2014-05-24 02:19:09
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「!」「虎徹さん!」二人が駆け寄る気配がする。早くライアンに言わねぇと。早く早く早く。「まだ動けたのか」「お前何をした!」「だーから熱くなんなっての! ただの弛緩剤」どうしてそんなもの。いやそれより早く――『言い納めだと思ったからな』――伝えないと。

2014-05-24 02:24:07
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「ラ、イ…」ライアンが俺を抱き起こそうとして、バニーに阻止されている。やめろよ、この気持ちは嘘じゃない。俺だって、お前が。「顔は見ないぜ」そんな声と一緒に目元を手の平で隠された。いやだ。ライアン、ライアン!

2014-05-24 02:27:30
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「虎徹」いやだ。お前とずっと一緒にいたい。好きなんだ。好きなんだよライアン。「俺はあんたを」やめてくれ。いやだ!「愛してる」――ビクッと、体が跳ねた。「泣くなよ、おっさん」その声は、震えていた。

2014-05-24 02:31:01
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 いつの間にか眠っていたらしい。目を開けると黄ばんだ天井が見えた。なんか見たことあんなと思いつつ体を起こそうとすると、全く力が入らない。「?」驚いて視線をさ迷わせると、薄いカーテンの隙間から陽の光が見える。

2014-05-24 02:37:26
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 何とか頭を動かすと、手の辺りに冷たくて固いものがあたる。微かにさわると、それはすぐに動いて下に転がった。音の具合から、それが受話器だと数秒後に気付く。(俺…なんでこんなとこに…)全くの謎過ぎて不安になってきたが、すぐに足音が聞こえてきた。

2014-05-24 02:42:44
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「虎徹!」勢いよく開いたドアから聞こえたのは、慣れ親しんだもの。「よかった、目ぇ覚めたか」「…さん」「いいいい、喋るな。水飲むか?」俺は何度か小さく顎を引いた。近寄ってきたのは間違いなくベンさんだ。

2014-05-24 02:47:19
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「あいつらもそろそろ終わった頃合いかもな。電話でもしてみるか」ベンさんは冷蔵庫から多分飲み物を取り出して俺のそばに寄りながら言う。あいつら? 終わった頃合い? 一体なんのことだってんだ。

2014-05-24 02:50:40
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「お、れ…なん、で」ベンさんが水を飲ませてくれたおかぐか、声が出せるまで回復してきた。「なんだ、覚えてねえのか」「……」なんとなく、これは嘘じゃないって強く思ってた記憶はある。でも――(思い出せない)

2014-05-24 02:54:40
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「ちょっと待ってろよ。バーナビーとライアンに電話してやる」そう言って携帯電話を取り出したベンさんに俺はすがり付いた。「あいつら、なにかあった、んです、か」「何かあったというか、まあ、簡単に言えば決闘してる」決闘!? 俺は目を剥いた。

2014-05-24 02:58:26
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 なんであいつらが決闘なんかしてんだ!? ていうかいつの時代だよ! 全てにおいて意味が分からず目を見開いていた、その時だった。モーテルの外から男二人が言い争っている声が響いてくる。まさかと思いつつ、回復してきた腕でなんとか体を起こす。

2014-05-24 03:01:51
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「あんたの足がちんこに掠めそうになったから引いたんだっつの! ルール違反だろうが!」「僕は別に股間を狙ったわけでもありませんし、金的がルール違反なんて聞いたことありません」「男の世界には色々あんの! あんたが知らないだけ!」

2014-05-24 03:06:47
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「聞き捨てならないな。それは僕が男の世界を知らないと言いたそうですね」「言いたいんじゃなくてそう言ってんだよ。ったくこれだからジュニア君は」「何ですか」「その年で童貞なんだよ」「……」「あっ、怒った! コワーイ!」

2014-05-24 03:11:04
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 ドタドタしながら階段を上る音に、ベンさんは携帯電話をしまいながら額を押さえている。これバニーとライアンだよな? いつの間にあいつらあんなかんじになったんだ。数秒後、ドアの前がシンとなった。

2014-05-24 03:14:57
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「もう起きてるぞ」ベンさんが声を出すと、瞬間ドアが開いた。陽光は眩しく目を細めた俺だが、バニーとライアンの様子がおかしいことには気付いた。「!?」見事に二人ともボロボロの傷だらけだった。

2014-05-24 03:20:04
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「虎徹さん好きです!」「おっさん愛してる!」「……」「ジュニア君やっぱり言ったじゃねぇか!」「お前だってあれだけ抜け駆けはしないと!」なんだこの俺世代の喧嘩漫画に出てきそうな空気は。「とにかく入れ。こいつもまだ回復しきってない」

2014-05-24 03:24:09
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「おっさん、記憶、あるか?」ライアンが壁に寄りかかりながら言った言葉に、俺は首を振った。何故かそのとき切なさが胸を覆ったが、理由は分からない。「ふうん」少し寂しそうな顔をしたライアンは、血の出ている口元を拳でぬぐう。

2014-05-24 03:28:53
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 いやそれより大変な事実に触れていない。好きですとか愛してるとか聞こえなかったな? 俺の聞き間違いか?「記憶がないのは何よりです」バニーは理性的な声質のまま言って、安堵したようにため息をついている。「それで?」ベンさんが仕方なくといった風に二人に聞いた。

2014-05-24 03:34:34
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 「決着はついたのか」「……」「黙ってちゃ分からんだろ。こいつも混乱してる」よくいってくれたベンさん。「決着は着きませんでした。土地の管理者から威嚇射撃されて」なにやってんだこいつら。「まあでも逃げられたから結果オーライ?」全然オーライじゃない。

2014-05-24 03:39:25
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 はあ、とベンさんはため息をついた。まだ話が見えてこない俺は、ギッと音を立ててなんとかベッドに座った。「おまえ、ら」俺が二人を見ながら思う。未だぼんやり頭を覆う『嘘じゃない』という感覚は、この二人のどちらかに関係がある。

2014-05-24 03:45:23
鳥野郎 @toriyarou23

@toriyarou23 でも、どうしても思い出せない。大事な感情だったはずなのに、それが歯痒くて苛立つ。「無理に思い出そうとしなくていい」「!」言葉を発したのはライアンだった。「俺は決めたのさ。一度はキューピッドになったが、二度目はないってな」

2014-05-24 03:48:50