ル級eliteの手元が狂います。天龍の砲撃が戦艦の艦橋を貫きます。そしてそのまま天龍はル級eliteにむかって体当たりをしたのです。
2014-05-28 02:06:02この程度ではル級eliteが沈むほどではありませんしかし、天龍は持っていた刀を振りかざします。 「怨みはねえぜ。お互い様だからな」 天龍は言います。 「怨みはねえから沈んでもらう!!」 天龍の自慢の砲、それが具現化した刀です。思いっきりル級に向けて振り下ろしました!!
2014-05-28 02:07:14戦いは天龍の辛勝でした。ル級eliteは沈んでいきます。いえ、でも、勝ちと言っていいものでしょうか。艦首はぐしゃぐしゃになってあちこちに穴が開いています。浸水し、風前の灯でした。天龍は頑張って前に進もうとします。でも、水が体にどんどん入ってきます。
2014-05-28 02:08:12「……とうとう俺も沈むのか」 天龍はつぶやきます。そう考えると、なんだか穏やかな気持になってきたような気がしました。戦いで華々しく沈むことは天龍の本望だからです。
2014-05-28 02:08:29でも、ふと、仲間たちの姿を思い浮かべると穏やかな気持は一変しました。天龍の体の中では艦娘を動かす妖精さんたちがまだ頑張っています。水を天龍から出そうと必死です。
2014-05-28 02:09:02「……生きてやる」 またつぶやきます。 「生き延びて死ぬまで戦ってやる!!!」 そう、叫ぶと天龍はもがき始めました。でも、そううまく動けるはずがありません。
2014-05-28 02:09:29天龍は必死でした。ル級eliteと戦っていた時と同じように必死でした。ボイラーもタービンもかろうじて動きます。建造以来不調が続いたタービンですが今はしっかり動いてくれよと願ってやみません。
2014-05-28 02:09:49でもやっぱりダメです。天龍がとうとう諦めようとしていた時、 「天龍ちゃん、迎えに来たよ~」 聞き慣れた声が聞こえました。 「……なんだお前か」 「なんだは無いでしょ~」 龍田と駆逐艦たちです。戦艦の比叡もいます。
2014-05-28 02:11:01「天龍。あれほど無理をするなって金剛おねえさまからも言われていたじゃないですか!」 比叡が言います。天龍は答えようとしました。でも、もう無理でした。ほっとすると、そのまま眠ってしまいました。
2014-05-28 02:11:29天龍が起きると母港の船渠にいました。 「おはよ~。天龍ちゃん」 天龍は、しばらく黙っていましたが 「……夢じゃなかったんだな」 「どういうこと?」 「てっきりお前たちが見えた時、幻覚か夢でも見ているのかと思った。都合が良すぎるだろうが」
2014-05-28 02:12:41「島風ちゃんたちが、どうしても天龍ちゃんを助けてって言うから」 「あいつが……」 「島風ちゃん、泣き喚いてすごかったのよ」 島風たちが命からがら母港に戻ると、天龍の救出を具申しました。特に島風は自分が天龍をひどい目にあわせたと泣きわめいていたのです。
2014-05-28 02:13:35「……沈みたかった?」 龍田が天龍に聞きます。 「そうだな。でも、死ぬまで戦わなきゃならんからな」 いつもの強がりです。でも、龍田はそんな天龍のつよがりを聞くのが本当に好きでした。
2014-05-28 02:14:17天龍は大修理を受けた後、また艦隊の主力軽巡洋艦として活躍しています。そのそばには、いつも龍田がいました。
2014-05-28 02:14:48島風は、今でも、天龍のことを「のろまなじだいおくれ」だと言ってからかいます。でも、けっして役立たずと言ったりして馬鹿にはしなくなりました。どんな船にも役割があり、役に立つことができると気づいたからです。
2014-05-28 02:15:07今日も、この鎮守府の艦娘たちは頑張って戦っています。それはどの鎮守府でも同じです。あなたたちも、どうか、この頑張り屋の艦娘たちを大事にしてあげてくださいね。
2014-05-28 02:15:38以下蛇足
天龍が敵戦艦に突っ込んでいくところは伊吹秀明の「氷山空母を撃沈せよ!」の第一次ソロモン海戦後、氷山空母の襲撃を喰らった三川艦隊の中で他の船を逃がそうと単艦突っ込んでいって玉砕した軽巡天龍のイメージ
2014-05-28 02:27:59あと「のろまなじだいおくれ」っていうタイトルは汽車のえほんの「どろくさいじだいおくれ」っていう話のタイトルのオマージュ
2014-05-28 02:55:05