第1話:古い軽巡洋艦天龍
天龍は軽巡洋艦です。天龍と龍田の天龍型軽巡洋艦はこの国で始めての近代的な軽巡洋艦でした。天龍はそのことを誇りにしていました。当時世界水準を超えていた能力は天龍の自慢でした。
2014-05-25 23:29:06でも、天龍より大きな軽巡洋艦が作られると、天龍は一気に古い型になってしまいました。さらに時が経つにつれて、天龍はどんどんと旧式化していきました。大きい軽巡洋艦は改造して新しい装備に変えるのも簡単です。でも天龍の体は小さかったのです。
2014-05-25 23:31:38”あの戦争”が始まった時には天龍はすでに時代遅れの船でした。もしかしたら、戦争が起きたから寿命が伸びたのかもしれません。それでも天龍に任せられた任務は余りぱっとしないものばかりでした
2014-05-25 23:33:39天龍の妹の龍田(本当は龍田の方が先に出来上がったのですが)は自分が時代遅れだとわかっていました。でも、天龍はそれを認めたくありませんでした
2014-05-25 23:34:57整備を受けても、天龍の体はどんどんとガタが来ていました。あちこちぎしぎし言っているような気がしたし、砲の反動も日に日に強く感じるようになっていました。龍田も同じでした
2014-05-25 23:37:13第一次ソロモン海戦という戦いに天龍は無理やり参加しました。でも、旧式だからと後ろに配置されてしまいました。そしてその年のうちに、天龍は潜水艦の魚雷を受けて沈んでしまいました
2014-05-25 23:40:57あるとき、天龍は”艦娘”という存在になりました。人間の姿を持った船です。天龍はまた戦えると喜びました。龍田ともまた会えました。龍田は天龍とあえて大喜びです
2014-05-25 23:42:15でも、”艦娘”になっても天龍が旧式なのはかわりませんでした。それどころか”あの戦争”の時と同じように体がギシギシするのです。まるで”あの戦争”の時そのままに艦娘になったようです。
2014-05-25 23:43:42天龍は昔良かったときを思い出そうと戦闘を望みました。古い自分は大嫌いなのです。天龍にとっては古いということは弱いということなのです。駆逐艦や龍田に弱いところは見せたくありません
2014-05-25 23:46:14この”鎮守府”にはまだ龍田と天龍くらいしか軽巡洋艦がいませんでした。ですから、提督は鎮守府の周りの海の製油所地帯の船団護衛を2隻に命じました
2014-05-25 23:47:43駆逐艦4隻と天龍と龍田は鎮守府近海を進んでいきます。最初は船団護衛に不平を言っていた天龍も敵駆逐艦が現れると「よっしゃ!!」と砲撃をはじめました。天龍の嬉しそうな顔!
2014-05-25 23:49:35旧式の天龍でも駆逐艦相手なら中々負けません。 「見たか! 俺の強さを!」 「天龍さん凄いのです!」 駆逐艦の電が言いました。 「さすが私達の旗艦ですね!」 五月雨も言いました。 天龍は鼻高々です。
2014-05-25 23:51:37でも、龍田は突出している天龍が心配です。 「天龍ちゃん、油断しちゃダメよ~」 「ふん、大丈夫だ。俺が一番強いんだからな!」 「そうね~。この中では天龍さんが一番強いわ~」 駆逐艦の荒潮が頷きました
2014-05-25 23:53:46ところが、その会敵は唐突でした。恐ろしい戦艦ル級を旗艦とした敵艦隊が現れたのです! 軽巡も雷巡もいます! 「はわわわこわいのです!」 電がおののいています。 でも、天龍は勇敢でした。 「電、びびってんじゃねえ! 一番強い俺がやっつけてやる!!」 天龍は敵戦艦に近づき、砲撃します
2014-05-25 23:56:45戦艦ル級は16inch三連装砲、12.5inch連装副砲を装備する恐ろしい相手です。練度が高ければそう怖くもありません。でも、この天龍旗艦の艦隊には恐ろしい相手です。天龍は敵戦艦と撃ち合うことに興奮してそれを忘れていました。いつもならそんなことはないのです。でも、少しの油断でした
2014-05-25 23:59:09戦艦ル級の砲撃の豪音があたりをつんざきます! 次の瞬間、天龍は大破していました。機関部はやられていませんでしたが、大きな痛みを感じています。 「……くうっ!!!」 天龍の威勢は一気に削がれてしまいました
2014-05-26 00:02:26天龍の直撃後、龍田たちが放った魚雷が命中。敵艦隊は全ての艦が撃沈、大破し離脱していきました。 でも、天龍はひどくきまりが悪そうでした。駆逐艦たちは天龍を心配しています。でも、天龍は情けなくて仕方ありませんでした。いっそ沈んでしまいたいくらいでした
2014-05-26 00:04:43天龍は少しばかりの速力しか出せなくなり、電と雷に曳航されていきました。龍田は、天龍を見つめていました。その目はなにか悲しそうでした
2014-05-26 00:07:06と言ったけど、もちっとだけつづくんじゃ
天龍たちがやっとの思いで母港に帰投すると、提督は天龍に入渠修理をするように言いました。明日も天龍には任務が待っているのです。でも、天龍は「絶対に嫌だ」と入渠を嫌がりました。それどころか「早く次の出撃をさせろ」と言い出したのです
2014-05-26 18:13:36このままでは埒が明かないと提督が困り果てた時、そばにいた龍田が口を挟みました。「提督~、天龍ちゃんとふたりきりでお話させてくれません~?」提督は龍田の言うとおり、部屋から出て行きました。
2014-05-26 18:16:36