ふるい軽巡洋艦天龍【汽車のえほんっぽい艦これ】

きかんしゃトーマスの原作の絵本、「汽車のえほん」っぽい艦これ二次創作です
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きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「ねえ、天龍ちゃん、早く直しましょう」龍田が穏やかに話しかけます。「嫌だ。俺は死ぬまで戦うんだ」天龍は強く答えを返しました。「役立たずになったら俺達みたいな旧式艦はどうなると思う。俺は鉄くずになるのはごめんだ」

2014-05-26 18:20:51
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「だから、俺達は強くなくちゃいけない。強ければ、鉄くずにされることもないだろうが」「……怖いのね」「ああ、そうだ。結局、怖いか?といろんな奴に問いかけてみても、本当にびびってるのは俺なんだよ。それなら、戦いで沈みたい」

2014-05-26 18:22:56
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「私も怖いよ」龍田が応えます。「でもね、天龍ちゃんが先に沈むのはもう絶対に嫌」「……おう」「それに、私達は直してまた明日、出撃できるわ。必要とされている限り。それが、本当なんじゃないかな……」これを聞いて、少し天龍は黙ってしまいました。天龍はたしかに龍田より先に沈んでいます

2014-05-26 18:25:51
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

”あの戦争”では天龍と龍田はコンビを組んでいました。多くの時間を共に戦いました。あの戦争の前だってそうです。でも、天龍が沈んだことによって龍田は一人ぽっちになってしまいました。もちろん他の仲間の船もいます。でも、龍田にとって天龍はかけがえのない存在でした。

2014-05-26 18:28:34
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

天龍だって龍田のことは大事に思っています。なのに、どうして龍田のことをよく想ってやらなかったのか、天龍は恥ずかしくなってきました。いえ、天龍は本当は自分の本当の心を知りながら隠しているのです。「……じゃあ、一緒に沈むか」

2014-05-26 18:30:19
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

その言葉に龍田は息を呑みました。 「……修理して、な」 でも、その言葉を聞いた時、龍田はホッとしました。

2014-05-26 18:31:07
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「ぜぇ~ったい、先に沈んじゃ嫌よ?」念を押す用に龍田は言います。「大丈夫だ。俺が一番強いんだからな」ボロボロの体で天龍は強がります。

2014-05-26 18:31:59
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

でも、天龍はもう大丈夫でしょう。何が一番大事か、ちゃんともうわかったようです。修理して、明日も出撃しなければなりません。船渠からは綺麗な良い月が見えていました。

2014-05-26 18:33:08

きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

【汽車のえほんっぽい艦これ:ふるい軽巡洋艦天龍】第3話 龍田と大井

2014-05-27 01:23:20
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

あの船渠の出来事からしばらく時間が経った頃のお話です。龍田は退屈でした。天龍が夕張と睦月型の駆逐艦たちと鎮守府近海の哨戒任務に出撃しているからです。天龍は面倒見が良く、駆逐艦に人気があり引っ張りだこでした。

2014-05-27 01:23:38
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

もっとも、駆逐艦を指揮する軽巡洋艦はみんな面倒見がいいものなので、龍田だって天龍の人気に負けないのですが。

2014-05-27 01:23:44
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

そういえばあの第一次ソロモン海戦の時だって天龍は夕張と重巡たちと一緒に出撃していました。なんだか自分だけ仲間はずれにされたようで龍田は面白くありません。

2014-05-27 01:24:13
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「あ~あ。なんか退屈~……」 龍田は鎮守府の港を歩き回っていました。すると、いつも演習をしに出稿する桟橋沿いで声が聞こえました。 「あ~あ。北上さんがいなくて退屈だわ……」 重雷装巡洋艦の大井です。いつも同型艦の北上と一緒なのですが、北上は出撃しているようです。

2014-05-27 01:25:49
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「大井ちゃんこんにちは~」 龍田はニコニコして大井に話しかけました。 「あら、龍田さんじゃない。こんなところで何をしているの?」 「天龍ちゃんがいないから、退屈でお散歩~」 「へえ、私も北上さんがいなくて退屈でお散歩しているのよ」

2014-05-27 01:27:11
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「いつも一緒にいるから、いないとなんだか舵がなくなったみたいな気がするのよね」 大井は言いました。 「わかるわ~。……天龍ちゃんは先に沈んじゃったから、よく」龍田はそれでもニコニコしていました。彼女の癖のようなものです。

2014-05-27 01:28:29
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「……私は北上さんより先に沈んじゃったから……。北上さん、私の事心配してくれたかな」

2014-05-27 01:29:49
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「今、一緒に入れるから心配することはないのだけれど、深海棲艦と戦ってる身だから、いつまた沈むかわからないものね」 「ええ。そうなのよ」 「北上ちゃんは最後まで生き残ったから大丈夫だよ~」 「……そうに決まってるわ。絶対」

2014-05-27 01:30:15
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

大井たち球磨型軽巡洋艦も"あの戦争"では古い船でした。それでも一生懸命に働きました。作られた本来の目的とは違う任務ばかりでしたが、全力を尽くして頑張りました。それはどの船だって同じです。

2014-05-27 01:31:33
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

少し暗くなった雰囲気の中で、龍田はクスクス笑い始めました。 「私達、自分の心配なんかしないで他の船の心配をしているね~」 「全くおかしい話よね。自分のほうが最初に沈まないようにしなきゃいけないのに」 大井も笑いました。

2014-05-27 01:33:55
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「こういうしめっぽい時には魚雷よ魚雷!! 片舷二十門一斉射!!」 大井は立ち上がると、標的に向けて魚雷を発射し始めました。 「あらあら~。無駄に魚雷を発射するなんて提督に怒られますよ~」と言いつつ、龍田も標的に向けて魚雷を発射しているのですが。

2014-05-27 01:34:56
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

天龍は砲撃と機銃掃射が好きですが、龍田は魚雷を放つのが好きです。龍田だって天龍と同じくらい戦うのが好きです。できることならできるだけ永く天龍と一緒に戦いたいのです。きっと大井だって北上と永く一緒に戦いたいに違いありません。

2014-05-27 01:35:39
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「ふーすっきりした」 大井は魚雷を発射し終えると満足そうでした。 「……戦わなくちゃね」 大井はそうつぶやくと、「じゃあ、そろそろ北上さんが帰る頃だからいくわ。龍田さん、ありがとう」 その場を後にしました。

2014-05-27 01:36:23
きょくにゃん🐟苗字系Vtuberのパイオニア @ky2g

「私も天龍ちゃんを迎えに行かなきゃ~」 そういうと、龍田も歩き出しました。いつの間にか、もうすぐ天龍が帰ってくる時間でした。

2014-05-27 01:36:47