『ガンスミス』その恐るべき小説の中身とは

朝椎九楽 @9raku

さて、幻冬舎文庫の「ガンスミス」（荒川匠）を読了。感想をば。……今日は荒れるぞ。

朝椎九楽 @9raku

作者は、どうやら東北芸術工科大学の学生らしい＞ガンスミス　twitter.com/tuad_bungei/st…　書籍には「圧倒的リアリズムで描かれた本作でデビュー」、と。成程成程。

朝椎九楽 @9raku

初っ端、ガンスミスに依頼主が銃を持ち込んで依頼するシーンがある。アサルトライフルを渡し、「トリガーをもっと軽くしたいのだが」と、まぁ、これは良い。そのあとに「あと洗浄も頼みたい」と続かなければ＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

読み進めていくとわかるのだが、どうやら、この作品内の銃を使う連中は、ガンスミスに銃の洗浄を依頼するのが普通と考えているきらいがあるようだ。少なくとも、自身の銃の洗浄すら行わずに銃を扱う連中が複数人出てきた＞ガンスミス　ゲリラの少年兵以下の銃の扱いに、心が折れそうだ＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

そして読み進める。17ページで「電磁投射砲（ルビ：レールガン）を知っているかね。」と書かれていた時点で、小生は立ち読みを中止して本棚に戻せばよかったのだ＞ガンスミス　だが、至極残念なことに、小生は13ページまでしか立ち読みをしなかった。悲劇の始まりだ。

朝椎九楽 @9raku

どうやら、作品内の設定において、電磁投射砲の類は開発に成功しているが、威力が高すぎるという事で、軍事条約で開発も製造も禁止されているのだそうだ＞ガンスミス　ちなみに、銃器描写で「ガバメント」が出てきているので、まこと残念ながら現実世界の延長線上にある設定らしい。

朝椎九楽 @9raku

この作品が舞台となっている国では、民兵が武装蜂起し、軍と正面衝突している＞ガンスミス　そこに、とある男が歩兵に携行可能なレールガンを開発した。そして、そのレールガンを何にに使うかと言えば、粗末な銃器で武装した民兵をアウトレンジして一方的に攻撃すること、らしい。

朝椎九楽 @9raku

どうやら、この国にはアサルトライフルは存在するが、スナイパーライフルは存在しないらしい＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

また、近代の国家としてはまことに可哀想なことに「全ての兵器を武器商人の横流しに頼っていた」（本文ママ）という＞ガンスミス　基礎工学力とかそこら辺の問題を取り上げるのは、作者の「圧倒的リアリズム」にはそぐわなかったようだ。

朝椎九楽 @9raku

話が飛び飛びになるが、まずは最初から最後まで読んだ感想について述べる＞ガンスミス　個人的な印象としては、幻冬舎が若者向けのラインナップを狙って出版することを計画し、それに沿って書かれた物であり、窮極的には「本を出すために、本を書いた」という哲学的な仕上がりとなっている。

朝椎九楽 @9raku

作品からは「何故、ガンスミスを題材としたのか」「何故、銃をモチーフとしたのか」「何故、この作品を書こうと思ったのか」といった作者の「匂い」や「想い」が伝わってこない＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

また、銃器を扱った作品として割と致命的なのが、「真似したくなるような描写」「憧れるような描写」が皆無であることであり、銃撃戦は遠い海の向こう側の出来事のようで、作品内の大部分を占めるのはチャット染みた掛け合いだ＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

一応とはいえ題名に「ガンスミス」を戴いているだけに、銃を改造する描写もあった。端的に言えば、こうである。「グロック26をグロック26アドバンス（東京マルイの架空銃）に改造する」＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

本文中の依頼の描写を追う＞　ガンスミス　「父の形見の銃を修理してくれ」成程。「小さくて握りにくいから、グリップを大きくしてくれ」ふむふむ。「トリガーセイフティも取っ払ってくれ」！？

朝椎九楽 @9raku

まぁ、結局トリガーセイフティは排除されずに済んだが、その依頼を受けてガンスミスが施した改造が、独創的過ぎてPL法に触れそうな出来だった＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

スライドに銃撃を受けていたので、内部の破損部品を交換する。これは良い。「形と大きさが似ている物を見つけるとヤスリで整形して嵌め込」んでいなければ。ダッラの密造銃職人か＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

続いて銃身を交換する。銃のモデルやパーツ番号を確認せず「パーツの山から合いそうな物を選んで確かめながら差し込んでいく」、工業規格とか互換性とかを埋葬したかのような手順だ＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

さて、銃身を交換した後には「突き出した銃口の余分な部分を切除し、コンペンセイターで覆ってみると、銃身はより実践的なフォルムとなった」とあり、もはや護身用拳銃だった過去を脱ぎ捨てて戦闘向きに羽化したかのようだ。羽化したのはカゲロウで、短命な感じだが＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

幸いなことに、ガンスミスは安全性を考慮して、トリガーセイフティの排除は行わなかった。この作品を通じて、唯一良かったところだ＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

そして、予備弾倉から、銃把の小ささを補うためのフィンガーチャンネルを外し、二種混合型のパテで銃把に接着する。ポリマーフレームの柔軟性とかへの配慮はM78星雲まですっ飛んでいるので、そのまま移植。もはやブラックジャックの手術を見るかのようだ＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

ガンスミスが改造したﾀｸﾃｨｺｳな拳銃を握って、依頼人の少年は民兵団に入隊する為にガンスミスの前から去る。流石民兵団。銃は自弁だ＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

……グロック26サイズの銃に関して、銃把を大型化するのは、まぁ、アリだろう。だが、フルサイズの銃身を装着してぶった切った挙句、コンペンセイター装着するとは思わなんだ。悲劇的過ぎるビフォー＆アフターだわね。なんということをしでかしてくれたんでしょう……！＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

あとはまぁ、過去の名作のオマージュらしき描写もチラホラ＞ガンスミス　以下、本文ママで引用する。

朝椎九楽 @9raku

「グリップが歪んでるじゃないか。何か固い物を叩いただろ」 「この前の戦闘の時にちょっとな。室内戦で懐に入られてよぉ。（略）直せないか」 「（略）グリップは頭をカチ割る為のものじゃない」 　会話の流れが、ブラックラグーンのレヴィとプライヤチャットそのままだわねコレ＞ガンスミス

朝椎九楽 @9raku

名作へのオマージュは、読者をクスリとさせるわね。他の部分からあからさまに浮いていなければ＞ガンスミス