誕生前夜

リカ=アナグラム @rika_anagram

こんばんわ。今宵の題材は楼座だったわね。また少し遅れてしまったけれどカケラを読みきってきたので語ってあげる。

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そうそうタイトルは一番最後に話すわ。

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「ったく、姉さん達に巻き込まれるのはもうこりごりだわ…」

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楼座は一人夜の事務所前でため息をつく。

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“たまには兄弟仲良く夕飯でも”という名目で前々から予定を抑えられていた為、どうしても逃げ切れなかった。しかもそんな時に限って仕事との折り合いが上手くつかないのだ。

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「姉さん達と一緒の食事は話題のせいもあって疲れるのよね…」

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最初は近況報告や子供達の話だったのだが、やはりそれぞれで困っていることは同じのようで、自然とお金の話になっていったのだった。

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「全く姉さん達にも困ったものよね。私にだったらそういうみっともない語り難い話をしても気にならないのかしら？」

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そうは言うものの、もちろん楼座の会社も経営状態は良くない。乗り気でなくとも少しでも可能性があるのならば話に乗らざるを得ないのだ。

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鞄から事務所の鍵を取り出し、ドアへと差し込み鍵を右に、手ごたえが違うので左に回す。

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扉に手をかけて空けようとした瞬間に楼座はハッと後ずさる。

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違和感に気が付き、そして扉から僅かに距離を置く。

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なんで私扉を開けようと鍵を右に回したハズのに、左に回し直したの！？

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本当ならそれで開く筈なのに手ごたえが無かった。それはつまりドアが開いてたってことじゃないの？

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実は数日前に戸締りがいい加減だと若い子を叱ったばかりだ。その時はついちょっとだけカッとなってみんなの前で怒ってしまった。

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・・・つまりアレを見て間もないのに、こんなことをする社員はいないはず。 なのに鍵が開いていたということは・・・

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まだ秋に入ったばかりなのに急に寒気を感じる。

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普段過ごしている事務所が、子供の頃に怖がった島奥の森の様に得体の知れない場所へと変わった様だった。

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「落ち着くのよ、落ち着くのよ右代宮楼座。ここは貴女の城、怖いものなんていたりするはずが無いじゃないの。」

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そういいつつも一度意識してしまったらもうどうしようもない。

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自分でも理解しつつ、少しでもどうにかしようと自らを説得に掛かる。

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「確かに何か普段と違うことがあるのかもしれない。けど、そんなことは言ってられないじゃない。明日の昼頃にはデザイン画を仕上げておかなきゃいけないのに、事務所に違和感があったので資料も持ち帰れず出来ませんでした？そんなこと言うわけにいかないじゃない。」