誕生前夜

リカ=アナグラム @rika_anagram

そう、この仕事はタイムリミットも近いのだ。しかもこの契約次第で今の状態からある程度持ち直せるとの見込みもあるため、決して逃せないのだった。

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「こうなったらどうにかしなきゃ。」

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そして周囲を見回す。

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なんでこんなところにあるのかしらね…

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「まぁいいわ。今はえり好みなんてしてられないもの。」

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言いつつ鉄パイプを片手に握る。

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獲物も持った、いざとなればこれで・・・と自分を励ましつつ、改めて鍵を開ける。

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そして扉の影に入り盾にしつつ、部屋の明かりを点ける。

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周囲を見渡すも特におかしな点も人も無かった。

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「ふぅ、やっぱり大したことなかったわね。早いところ必要な資料を持ち帰って案をまとめちゃわなきゃ」

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と張り詰めた意識を緩めて、安心して自分のデスクに向かう。

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すると何か小さな、とても小さな音が・・・

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が、その音は心当たりのある音だった。その音が聞こえることに驚きつつも椅子を回転させて犯人と対面する。

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「全く困ったものね。遅くなるから家で留守番してなさいって伝えたはずなのに。」

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そう、いたのは真里亞だった。中々帰ってこない母を向かえに来たのだろう。

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だが待ち疲れてしまったのか試作品のぬいぐるみとお絵かき帳を抱いたまま寝入ってしまったようだった。

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「仕方ないわね。ん？」

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と椅子を回してバランスが崩れたのかお絵かき帳が足元に落ち、開く。

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描かれていたのは手足の短く下手な、、、お世辞にもバランスの悪いライオンだった・・・

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「もしかして、、、これ使える？」

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とイラストと枕から連想したのかいつの間にか仕事人の顔になっていた楼座。

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「そうよね、下手にしっかりと動物を作り上げるより少し崩した方が子供受けはいいわよね。確かデルゼニーランドのあの子達もバランスは崩していたし。」