オークションの記録と後日談(5月14日)
- Maksim_xxxxx
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オークション開幕
5月14日 午後8時11分55秒にてオークション開始。
「あ、カメラ……ない」 (男の突き刺すような目線を浴びて女は肺を掴まれたような気分になった。咄嗟に己の行動を振り返る。確か、裏路地を覗いて……あ、あの露店の隅にカメラを置いたのだ。女は取ってきます!と角の新聞屋を飛び出した。あれ以上あの目線を浴びていたら殺されてしまう。)
2014-05-14 20:16:56おれの部屋の窓から奴隷屋が少しだけ見える。最近気づいた。今日は店にどんどん高そうな服を着た人が入っていく。……どうか、どうかあの店の子たちが死んだりしませんように。お願い、神様…。
2014-05-14 21:51:58@a_slave_trader 「あ!……看板のない店、高貴なお客……間違いありませんね」 (果たして女はカメラを見つけただけでは引き返せなかった。その有り余る好奇心が先走り、子供のように目を輝かせると昼間からこっそりと見ていた店の扉をゆっくりと開けた)
2014-05-14 21:07:33「さて、奴隷売りのお方の生業はどうなのか。“質”はどうなのか楽しみだな」奴隷売りのオークションが開かれると旧友に聞き、ちょうど“食材”も切れていた為に絶好の機会だと思えば足を運んであり。青に金色の模様が描かれた仮面をつけながら店主は席でくつろぐ。
2014-05-14 20:13:14幕が引いていき、ステージの中央へ巨大な鉄の檻が表れた。檻の中では班目模様の肉食獣が涎を垂らし唸り声を上げている。 観客が息を飲む中、オークショニアの男に伴われ幼い兄弟が鎖に引かれて登場した。
2014-05-14 20:41:37. @a_slave_trader 第一研究所主任補佐「…あの、教授。良いんですか?研究所抜け出して、こんなところに…」 主任「君の社会勉強だ。目立たぬよう静かに観ていろ」 (ざわつくオークション会場で、装いを場に合わせた二人が柱の傍らに佇んでいる)
2014-05-14 20:48:45身丈の何倍もある獣の姿と、自分達を見つめる好奇の目線に怯え、視線を泳がせる弟。それとは裏腹に、兄の方は落ち着き払った様子で静かに客席を見つめる。 オークショニアの男が軽い挨拶をすると、弟に大ぶりのナイフを手渡した。宝石が埋め込まれた美しい装飾の柄を震える手が握る…
2014-05-14 20:59:04檻が開かれ、小柄な体躯が中へと突き飛ばされた。少年が構えるナイフの切っ先は震えている。口元に泡を浮かばせた獣は狂気の宿った瞳に餌の姿を写した。爪が床を削る音、身体をしならせ容赦無く柔らかい肉に飛びかかる。 …がくりと膝を突き、檻の外にいた兄が痛みに顔を歪ませて倒れ込んだ。
2014-05-14 21:21:56「あぁ、かわいそうに」檻の中に突き飛ばされた少年。膝をつく兄。それを眺める顔は愉悦に笑みを浮かべそんな顔で吐く言葉ではない。 哀れみの言葉を微塵も哀れまない顔で、馬鹿にするように店主は繰り返す。「全く以て、かわいそうだなぁ」
2014-05-14 21:21:59平気だ。大丈夫。ゆっくりやるんだ、お前には出来るから。だから振り向くんじゃない、前を見て。…痛くないよ、さあ落ち着いて。 少年のナイフが獣の瞳を深く貫いた。
2014-05-14 21:28:40少年のナイフが獣の目を捉えた。それをみると店主の仮面越しの目が細められ愛しさのようなものを含む。「兄弟愛か。うん。いいね。実にいい」
2014-05-14 21:32:25「ああ…………先輩、ようやく、本当にわかりました」 (ずっと長い間、男からひた隠しにされてきた理由を目の当たりにした女は凍り付いた表情で溜息を吐いた。叶うなら今すぐ胃の中のものを吐き出してしまいたい。)
2014-05-14 21:33:46. @a_slave_trader 主任補佐「…あの、教授…」 主任「口を閉じろ、良いから黙って最後まで見ていろ」 (何が起こるのか皆目検討もつかない様子で、補佐の少女は唇を噛み込む) (ステージでは少年が獣にナイフを突き刺していた)
2014-05-14 21:40:32「今、皆様の目の前で起きていることは全て嘘の無い光景です。この兄弟が抱える難病の名前は省きましょう。とにかくも、このような不思議な現象をご覧になったことがある方はいらっしゃいますでしょうか? 弟が受けた如何なる傷も、兄の身体へと移ってしまうのです。痛みも、快楽も、全て」
2014-05-14 21:41:21「・・・・ほう、番で飼えば、面白そうだ」その時舞台から聞こえた声に店主は振り向く。痛みを共有する病とは、面白い。思わず呟けば口元の弧はより深いものとなり
2014-05-14 21:43:41びくびくと身体を痙攣させ、絶命した獣が床へと身を崩れさせた。へなへなと腰を抜かしたように座り込む弟の身体には傷一つ見当たらない…が、獣臭さの混じった血の匂いが客席の方まで届いてきた。 倒れた兄を男たちが抱きかかえる。血溜まりからだらりと持ち上げられた腕が、皮一つで繋がっていた。
2014-05-14 21:47:46【 @a_slave_trader オークション会場にて 】 補佐「…教授。これ、何かの実験場ですか?」 主任「まさか。君はこんな空間が我々と"同じ"だと言うのか?」 補佐「いえ…だとしたら、あれは?」 主任「余所見をするなら、最後まで見ていろ」 補佐「…はい」
2014-05-14 21:47:59「あーもう、私ってば場違いです!ドレス作って貰わなきゃ!経費で落ちるかなあ」 (漂ってくる血の臭いに涙を浮かべながら沈んでゆく気持ちを奮わせるため小声で己を励まし)
2014-05-14 21:56:18「おやおや、彼は少しばかり失敗を致しました。獲物に食いついたままの獣を無闇に傷つけると、その獣は痛みのあまり万力のような力で顎を噛み締めるのです。ですがどうか、お優しい観客の皆様。彼の勇姿に僅かばかりの賞賛を……有難うございます」 (客席から拍手が湧き上がる)
2014-05-14 21:58:18