『テスタメントシュピーゲル 2巻』ツイッター先行掲載分

冲方サミット @ubukata_summit

【TS25】 「あたくしは最初から嫌だと言ってます」鳳＝全力で皇の手から脱出――髪を撫でつける／ウェーブがかった地毛／毎日丁寧にブラッシング――螢みたいなストレートな髪になりたくて。 「ところで、答えはちゃんと三つのうちのどれかなんだろうな？」皇――きなくさそうに。

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【TS26】 螢の悪癖――人の意表を突くためにルールの適用をぎりぎりまで広げる／答えが一つとは限らない／ときにはクイズの中に四つ目の回答まで隠し込む。 「もちろんさ」螢――にっこり／そのくせ顔を左右に振る／ギリシャ人の謎めいた仕草。 彼女の故郷の習慣＝かぶりを振るのは〝イエス〟／

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【TS27】 逆にうなずくのは〝ノー〟――ただし螢は急にその仕草を逆にする／根っからの惑乱者。 初めてその仕草を見たとき鳳は恐怖を覚えた――全く同じ仕草を強要されていたから／神の国に至る集団生活／狂った大人たちの世界。螢はその恐怖を理解してくれた／

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【TS28】 恐怖から逃げ出す方法を教えてくれた――もう忘れてしまった方法。 「やれやれ、うちの小隊長ときたらこの世で一番信用ならないぜ」皇――ポシェットからケースを取り出す／香りつきの絆創膏＋星座の印。

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【TS29】 「二人とも、おまじないをしてやるよ。死んだ婆さん仕込みだ。良く効くおまじないだぜ」 螢＝乙女座／リンゴの香り――皇＝天秤座／オレンジの香り――鳳＝獅子座／ブドウの香り――首筋にぺたり。 儀式――絆創膏／クイズ――他愛ない遊び＝無事にみんなで帰るという願いを込めて。

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【TS30】 「さあ、行こう。これがＭＳＳ要撃小隊〈焱の妖精(フォイエル・スプライト)〉の初陣だ」螢が立つ――高さ百三七メートルのシュテファン寺院南塔――宙に手を差し伸べる。「転送を開封」

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【TS31】 螢＝小隊長たる迎撃手(セプター)――銀灰色の特甲／ホタル(ファイアフライ)の羽／両腕に連結式爆雷(チェーン・マイン)／電子戦では灰色の皮膜が溶け最高の絶縁物質に＝見るも艶やかな黄金の特甲――〝黄金の火(ゴルト)〟の飛翔。

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【TS32】 後を追う皇＝命知らずの伏撃手(アンブツシユ)――翡翠色の特甲／イナゴ(グラスホツパー)の羽／灼刃機能付きの腕／透過防壁の発生装置である羽が機能を発揮＝みるみる色彩を失う／姿がぼやける／目に見えない切り裂き魔へ変貌――〝水晶の火(クリスタル)〟の飛翔。

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【TS33】 そして少女が飛ぶ――背後で消える塔／広がる闇――広がり続けるノイズのイバラ。 二人はもういない――灰になった黄金／砕け散った水晶。 暗闇のまっただ中――慌てて二人を探す／金切り声。「二人とも、どこにいますの！？」

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【TS34】 少女の使命＝要撃手(サプライザー)――しんがり／敵の追い込み地点に回り込む／とどめを刺す――守る。 自分こそ女神の盾(イージス)だ――女神が誕生させた妖精(スプライト)――最強の軍勢(イージス)。 その思いを心の中で握りしめる少女――森を足早に進む。

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【TS35】 暗く深い森にバラの香り――いや、これもまた胡蝶の夢(バタフライドリーム)の一つだ。（答えはどーれかな？） 虚構の自分――機械仕掛けの人格／生きるために造られた／造ってもらった心。 聖地の暗闇――振り返った／振り返るしかなかった／振り返ることで出口を失った。

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【TS36】 答えの代償――ようやくこのときがきた／さまよい続けた――やっと辿り着いた。 報復のとき――炎の記憶――今がそうだと告げている。 （そうだ、皇、お嬢様(フロイライン)。事故死じゃない。カラス博士もブラウン博士もポラック博士も、誰かに殺されたんだ）

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【TS37】 炎、炎、炎――（神の申し子、ここは神の家）――（天地創造の主にして全能の父）（終わりのない世界が）（終末の果てにあることを）（信じます）――何もかも燃えて塵になる。 森にこだまする過去――あの爆心地(グラウンド・ゼロ)――信者たちの自爆／消えた弟と妹／狂った大人たち

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【TS38】 ／みな灰に――いや、そうではない。（螢！　螢！　螢！） 消えたことにされたのだ――（……博士）（おいおい、なんでここに？） 少女の悲鳴――博士の頭――無毛／額の後ろ・耳の後ろ・後頭部・大脳が消失。 脳を失った博士の微笑み――声。

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【TS39】 （おやすみ、子供たち。揺りかごの中で眠りなさい） 特甲開発のあらゆる成果――全てをまとめたプラン構築者。（皇、お嬢様、彼を捕まえろ！） （彼が）黒い特甲児童を探せ――彼女の中に存在する鍵を――手に入れろ。（裏切り者だ） だが／広がり続けるノイズのイバラ――

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【TS40】 何もかもおかしくなる。（お二人とも返事をして下さい！　お願い！　どこにいるの――！）（来るな、お嬢様！） あのとき飛び出してきた少女――真っ黒い弾丸のように――彼女だけが立っていた。（撃てーっ！　陽炎！　撃てっ！　あたしを撃てっ！）

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【TS41】 炎、炎、炎――そればかり繰り返されるならいっそ炎と一つになってしまえばいい――炎をもたらす者みな焼き尽くすために。 「二人は、どこですか？」少女が尋ねる／相手は答えない――ぎいぎい軋んでいる／吊されている／奇妙な果実／血みどろの教祖の死体――こだまする声。

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【TS42】 《九人目が判明！》《鳳さんを止めて！　お願いだから止めてよ！　誰か止めてよ！》 「あたくしの弟と妹はどこですか？」自分が銃を握っていることに気づく／９ミリ拳銃／皇の遺品――ポシェットとともに／初出撃の現場にゆいいつ遺された仲間の品。 代わりに失った青い馬のバッジ――

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【TS43】 死を振りまくことを神から許された黙示録の馬の紋章。 心に迫る――（見よ青白い馬が現れる）――（またがる者の名は「死」）（これに黄泉が従う）――さあ――（人を滅ぼす権威が与えられた）――今が報復のときだ。 《鳳さん！　鳳さん！　鳳さん！》少年の叫び――

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【TS44】 ノイズがかき消す／遠ざける。 「ありがとう、お嬢さん」ささやき――緑の目／顔に火傷跡――男の笑み。「これで〈九姉妹〉が完成する。〈外典〉の新たな編纂のときだ」 ノイズが広がる――心に別の男の姿――ブラウン博士／メンデル博士＝鏡合わせの博士。

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【TS45】 「黄泉の国にようこそエウリディケ(エウリディーチェ)。今、君の心がいる場所には、決して誰も入れない。冥府の三頭犬が経路を塞いでいるのだから。三人の特甲猟兵たちの脳内チップが」 風景が変わる――頭からずぶ濡れ／降り注ぐ血／素手でえぐり出された教祖の脳。

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【TS46】 （外的解離性ビジョン）使命――要撃手として――報いられざること一つとしてなからん。（決して従ってはならない。だが無視してもいけない。対決する以外に解決の道はない） やっと血のぬめりが消えた――体を洗った／教団の施設／浄めの風呂／死の準備のための。

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【TS47】 機械時計の音楽が聞こえる――ボーン、ボーン、ボーン――人形たちが踊り出す／一つずつ歌う／焼けただれる／倒れる――最初にＭＰＢの接続官が倒れた／レベル４の闇に落ちた／この自分が焼いた／いや／違う――そうではない。 （どこにいるの……？）最初に倒れたのは自分だ――

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【TS48】 とっくの昔に／初出撃のときに。 そう――炎とともに消えた心――また風景が変わる／どこかのレールの上を漂っている。 線路――炎の羽をひるがえして飛翔／自分の手はどこへいったのか／足がどこにあるかわからない――代わりに炎の羽が拡がる／立ち塞がる軍用機体――

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【TS49】 またたく間に塵に還した。 《鳳さん！》突然の声――炎を貫き構築される経路／ありえない呼び声――複数。 《鳳！》一人／《鳳ぁ！》また一人／《小隊長！》さらに一人／《小隊長さん》さらに一人／《お嬢様》さらに一人／《泣き虫お嬢様》さらに一人――