周回遅れの集団的自衛権
- ShinShinohara
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集団的自衛権の問題は、昔なら一定の妥当性があったかもしれない。シーレーン(石油輸入海路)の防衛ができないと石油が手に入らないからだ。しかし今は周回遅れの策に思える。世界情勢が根本的に変わったからだ。それは、シェール革命がもたらした地殻変動だ。
2014-07-02 21:43:00シェール革命はアメリカの行動に大きな変化をもたらす。中東の石油に依存する必要がなくなり、アメリカ兵の命をかけてまでこの地域を守る動機が失われる。しばらくはこれまでのお付き合いで守るフリはするが、できるだけ早くこの地域から手を引きたいと考えるだろう。
2014-07-02 21:49:26日本政府は石油を輸入するシーレーン(海路)をアメリカの力を借りて守ろうと考えているようだが、シェール革命で急速に中東への関心を失っているアメリカが、シーレーン防衛に真剣に取り組んでくれるとは期待できない。アテが外れる格好だ。
2014-07-02 21:52:19アメリカの「東アジア重視」政策もアテにならない。中東から手を引くという消極的姿勢を隠すため、一見威勢の良い言葉でごまかそうとしていると考えた方がよい。本音は中国とも仲良くしたいから、中国と事を構えようとする日本の動きは苛立つ。事実、そのメッセージを伝えている。
2014-07-02 21:56:03結局日本が集団的自衛権でアテにしている石油輸入のためのシーレーン防衛も、中国との戦争も、アメリカは考えていない。石油もガスも国内で採れるシェール革命のおかげでアメリカはもう海外の問題に無理にお付き合いする義理がない。集団的自衛権は日本の片思いに終わるだろう。
2014-07-02 21:58:35シーレーンを守りたいなら、現状からすればずいぶん皮肉なことだが、中国と結んだ方が有効かもしれない。中東の石油がなくてもよいアメリカはシーレーンに関心が薄くなる恐れがあるが、中国は石油が致命的に不足するから、シーレーン防衛は命綱。利害が一致する者同士の方が同盟は有効になる。
2014-07-02 22:05:42いずれにしろ、現状では日本が集団的自衛権を行使し、アメリカに恩を売ろうとしても、アメリカからすれば冬にスイカ、夏に鍋。「ありがたくもねえ、恩着せがましいんだよ」と疎まれるおそれがある。片思いを裏切られたとき、日本はどうするのだろう、どうなってしまうのだろう。
2014-07-02 22:08:39集団的自衛権が可能になればアメリカも恩に着て、シェールガスやシェールオイルを譲ってくれるのではないか、と期待する向きもあるようだが、果たしてうまくいくだろうか。アメリカは昔のモンロー主義に戻る可能性がある。自国だけでエネルギーを賄えるから海外に関心を持つ必要がないのだ。
2014-07-02 22:12:26むしろ集団的自衛権は石油輸入を困難にする恐れも。アメリカが中東への関心を失い、中東のパワーバランスが崩れ始めている。アメリカ嫌いの勢力が中東に台頭し、アメリカの軍事力に依存してきた政権は「裏切られた」と恨む。「アメリカの犬」日本は中東諸国に憎まれ、無視されるかもしれない。
2014-07-02 22:30:06今回の集団的自衛権の問題は世界情勢の変化を踏まえてのものではなく、湾岸戦争の時に味わった悔しさを今返上しよう、という過去の願望から来ているように思える。「周回遅れの集団的自衛権」と呼ぶのはそのため。時宜を逸した策は、むしろ中東での日本の信頼を失墜させ、失うものが多いかもしれない。
2014-07-02 22:41:11