#完全ノープラン艦これ与太話 【ブラッディ・シャダー・バッドランズ・マッドネス】 #1～#2

春魔解丼 @vespiking

「アッハハ。『何故』！面白い事を言いますな。流石海軍の方はジョークがお上手だ。陸軍は優秀だが、頭が固くていけない」青白い顔の女がサイバーマキモノを大きく広げ、ケタケタと笑いながら駆けてくる。「何よ！何なのよ！イヤーッ！」陸奥は拳に炎を纏い、青白い女へ放つ！ #KZNPLN

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「私は軍人じゃないわよ！民間人よ！アイドルよ！？」「フォハハハ！それもまた無意味な問答でありましょう！」青白い女の口と目から、モゾモゾと虹色の芋虫が這い出す。それは陸奥の視界に入ると同時、陸奥の目の下に貼り付いていた。「キャッ！？コワイ！」顔から発火し燃やす！ #KZNPLN

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「地位。所属。名誉。カネ。思想。主張。ここでは全てが無意味になる。ここにあるのは享楽のみ。今の私は帝国軍准将でもなければ、今の貴艦はアイドルや民間人ですらない。さあ、純粋になりましょう！フォハハハハ！」虹色の芋虫は5秒で羽化し、極彩色の蝶となり海を飛び交う！ #KZNPLN

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ここは殺戮遊技場、無間地獄スガモインフェルノ。ここでは全てが無意味になる。すべての故意が事故となる。ここにあるのは無限の闘争と、無限の快楽のみ。即ち、全てがカラテのみで決する。世界の真実は極めてシンプルなのだ。 #KZNPLN

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この殺戮と快楽の坩堝の底で、ただ1隻。永い髪を束ね、歳に似合わぬ影を顔に落とした、1隻の駆逐艦だけが、他とは全く異なる動機で、飽くなき闘争に身を投じていた。「……お師匠様。綾波は、今日も生きています」彼女は明日を生きる為、戦う。明日、明後日を生きる戦いをする為に。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ブラッディ・シャダー・バッドランズ・マッドネス】 #1終わり。 #2へ続く。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ブラッディ・シャダー・バッドランズ・マッドネス】 #2 #KZNPLN

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スガモ重犯罪刑務所地下区画。本来であれば存在しない筈のこのエリアは、大日本帝国が公的に秘匿する恐るべき異空間への入場ゲートが存在する。この場に入れるのは、ごく人握りの『真実を知る者』のみ。ここは誰であっても入場できる。その存在を知る事自体が難関なのだ。 #KZNPLN

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ここにあるのは核シェルターでもなければ、謎の海外小説翻訳チームのアジトでもない。政府高官もエルフの戦士もいない。ここにあるのは、殺戮のみだ。無尽蔵に湧く深海棲艦を、外部流出阻止の名の下にハンティングする暗黒殺戮遊戯場。それが無間地獄スガモインフェルノの正体なのだ。 #KZNPLN

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この異空間の由来は定かではない。多層構造めいて、暗夜や屋内といった様々な戦闘的シチュエーション空間が積み重なっている。便宜上、地下〇階と表現されるこのダンジョンフロアは、だが実際には下へ続いているかどうかすら、わからぬ。各フロアは次元ワープゲートで連結される。 #KZNPLN

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一説では、この異空間の果ては魔界へと繋がっており、大日本帝国はキルゾーン運営の体をとり殺戮享楽者にこれを探索させているのではないか、とも言われる。噂は真実を知る者にも伝搬する。真実は多層的だ。高ランク真実と低ランク真実の間を埋めるエーテルを、人は都市伝説と呼ぶ。 #KZNPLN

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｢ハァーッ！ハァーッ！｣荒い息で喉を焼きながら、1隻の駆逐艦が暗夜を駆ける。｢……よし｣駆逐艦は照明弾を射出した。追っ手にある程度の位置情報を与える為だ。この地獄において逃走とは、即ち誘い出しての各個撃破する事だ。彼女はそれを、長い逃走の日々から学んでいた。 #KZNPLN

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『ウルイィアアァーッ！』照明弾におびき寄せられ、軽空母ヌ級が岩陰から飛び出した！この軽空母に、夜間で艦載機を飛ばす能力はない。だが腕力だけなら、並の駆逐艦を上回る。喰い殺そうというのだ！｢イヤーッ！｣駆逐艦は冷静に迎撃砲を放ち、左舷へ回避！ #KZNPLN

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長く纏めた髪が夜風に揺れる。明けることない夜空の下、駆逐艦は冷酷無比な射撃で軽空母の弱点、頭部の目玉ライトめいた箇所を撃ち抜く。『アバッ、アバッ、アバーッ！』駆逐艦接近！装甲の薄い船体下部を蹴り上げる！｢イヤーッ！｣『バババーッ！』軽空母は内臓を潰され死亡！ #KZNPLN

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駆逐艦は素早くサバイバル駆逐艦ナイフを取り出し、臓器を引き摺り出す。猟奇殺人か？このキルゾーンでは、猟奇殺人趣味や屍姦趣味は珍しくはない。だが、彼女の理由は少し違っていた。｢……ハァッ、ハァッ｣駆逐艦は内臓を裂き、中から漏れ出す廃油を口へ運んだ。 #KZNPLN

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｢ゲッ、ウゲッ、ゲエッ！｣激しい嘔吐感を堪え、何とか喉を通す。燃料は補給した。艦娘は食事の代替として給油によるエネルギー回復が可能だ。不純で劣悪な廃油だが、量は充分だ。これで今日は、少なくとも飢えて死ぬ事はないだろう。駆逐艦は全身を血で濡らし、その場を立ち去った。 #KZNPLN

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駆逐艦は安全な離島区画まで退避し、返り血に染まった着衣と身体を湖で清める。｢……ハァッ、ハァッ｣黒ずんだ肌は以前よりもストレートで、全身から丸みが消えている。腹は出ておらず、まだ栄養失調には至っていない事を確認する。艦娘は頑強だ。駆逐艦は自嘲気味に安堵した。 #KZNPLN

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テンプルで粗食の修行していた頃よりも、今の自分はヘルシーだ。余計な肉が落ち、かわりに殺す為の筋力が日に日についていく。逃走とは、闘争だ。彼女は在りし日のテンプルの景色を思い出した。本殿に立つ力強いブッダデーモン像。今の自分はあれだ。ブッダよ、どうか御容赦下さい。 #KZNPLN

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彼女の名は綾波。キョートの小さなテンプルで、たった1隻の修行ボンズとして慎ましやかに暮らしてきた。彼女の人生を変えたのは、テンプルのもう1隻の住人……ジュウショクであった艦娘の、突然の失踪であった。綾波はテンプルに1隻、残された。謎めいた書き置きと共に。 #KZNPLN

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書き置きの中で要旨を伝える文面は、ただの一言。『自分を探さないで欲しい』との旨が書かれ、それ以外は自分やテンプル、ブッダへの謝罪だけだった。綾波は悩み、数日をテンプルで過ごした。そして立ち上がった。｢……お師匠様。一体、どこにおられるのですか｣ #KZNPLN

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テンプルを後にした綾波は各地を遍歴し、師の足跡を辿った。長い道のりであった。彼女はついに、スガモの真実へと辿り着いた。無間地獄スガモインフェルノ。この冒涜的キルゾーンに、師匠はいる。あれから、もう半年が経つ。 #KZNPLN

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綾波はこの半年間、生きる為にだけ戦ってきた。今自分が地下何階にいるのかも、今日が何日なのかもわからぬ。ただ、師匠にもう一度会いたい。その一心のみで、綾波は明日を生きる為今日戦う。彼女にはそれが限界だった。 #KZNPLN

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疲弊し黒ずんだ素肌を夜空に晒しながら、綾波は違和感を覚えていた。今宵――と言っても、今が昼か夜かもわからぬが――の地獄は、何かが違う。空気が騒いでいる。綾波は手早く身を清め、予備の着衣に着替え、砲を持った。 #KZNPLN

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