2014年7月7日

吹雪と少年

艦娘とかのアレ
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Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

高校に入って初めての夏休み、商店街までちょっと出かけたときに母校の中学の女子中学生を見かけた――彼女たちは制服だった――懐かしさがこみあげてくる。同級生にはアイドル叢雲がいて、先輩には誰とでも仲良くなれる北上先輩がいた。少年にとっては憧れの存在だったし、男子が皆そうだった……

2014-07-07 21:10:12
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

……そういえば同じクラスに――地味な子がいたと思い出す。名前は確か……吹雪だったか、クラスの女子と仲良く話していた記憶がある。同年代の女子と同じ程度には話したことがあったような……無かったような。彼女は別の高校に行ってしまったが、元気だろうか。ふと気になった。

2014-07-07 21:12:11
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

吹雪はそこまで記憶に強く残る女子ではなく、ただのクラスメイトの一員だった。同年代のひとり――知人みたいなものだ。少年は家に帰って、懐かしのアルバムを引っ張り出した。こんなやついたなあ、懐かしい……ふと気が付くと、吹雪が写っている写真を探していた。……。

2014-07-07 21:14:36
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

真っ黒な髪、すっとぼけたような笑顔、小麦色の肌――ただの女子中学生としか意識していなかった彼女が、少年の心の瀬に漂っていた。有り体に表現すれば――吹雪はかわいいんじゃないだろうか、それ以外の語彙を少年は持っていなかった。どこまでも地味で、目立つことのなかった少女が……

2014-07-07 21:16:46
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

その時はそれだけで終わった。……三週間目に登校日があった。同中学の親友とまた馬鹿な話をして……彼女ができた奴を茶化している時に、何気なく口から出た。親友は以前の自分と同じ感想――地味で、目立たない――を持っていた。親友がちらっとこう言った。「吹雪かあ、祭で男とあるいてたなあ」

2014-07-07 21:23:04
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

少年は全身が占めるのを感じた……そんなことがあるのか、親友たちは笑った。少年も笑ってごまかした。帰途は親友とまた馬鹿な話をしながら――しかし、少年の受け答えは上滑りしていた。久しぶりの登校の疲れだろう……そう思った。夜、母から買い物に行くように頼まれた。まあコンビニまでなら……

2014-07-07 21:25:39
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

夜風は湿っていた。肌が嫌になるほどべたつく……失敗したなあ、少年は独りごちた。時刻は21時を回っていた。田舎では夜の買い物といえばコンビニしかない。夏休みであったし、一種の淡い期待が少年の心にはあった。……弟とか、従姉妹だろう。コンビニには車が2台と、自転車が数台止まっていた……

2014-07-07 21:29:43
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

自動ドアが開き、中から少女が出てきた。……黒髪で、地味で、目立たない……白いワンピースを着ていた。何度もアルバムで見た……間違いなく吹雪だった。少年は大きくつばを飲み込んだ。まさかこんなところで……少年には自分の動悸が聴こえた。鼓動で体が跳ねていた……声をかけるチャンスは今だ。

2014-07-07 21:33:57
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

喉から空気が漏れた瞬間、――入口からもうひとり出てきた。男だった。身長はそこそこある……やや痩せ型の。少年の希望とは裏腹に、男は吹雪の――腰に。とっさにコンビニの陰に身を隠した。隠して――しまった。男は手に袋を持っていた。ビニールの中にはスナック菓子とペットボトルと――

2014-07-07 21:36:47
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

小さな紙袋が……入っていた。少年は知識として――それが、紙袋に入れられるものだと知っていた。たしか親友が――中学の卒業前に――当時の彼女と――

2014-07-07 21:38:15
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

駆け出していた。気づけば家に戻っていた。母に怒鳴られながら部屋に戻った。布団に潜った。枕に顔を強く押し付けた。耳鳴りだけが聞こえた。少年は自分を否定し続けた。地味な、先月まで記憶すらあいまいだったじゃないか、だのになぜ今、どういうことだ、渦中に少年は飲まれていた。

2014-07-07 21:41:41
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

……気が付くと部屋は真っ暗だった。少年は枕から顔を上げた。喉が痛い。耳も頭も痛かった。それでも少しは冷静であった。時刻を確認しようと携帯端末を見ると、数件の通知があった。話を覗くと、夏休みはあとどう過ごすのだの、他愛のないやりとり――ここが自分の居所だった。

2014-07-07 21:45:22
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

遡ると、男子高校生らしい、性に関する話題でもだいぶ盛り上がっていたらしい。――あとは、誰が付き合ってるだの、そういう女々しい会話。その中で、吹雪が高校の先輩と付き合っているという情報が……たった一言だけ書かれていた。不思議と、何の感情もわかなかった。まあ、恋人どうしであればな…

2014-07-07 21:47:29
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

…ひとつため息をつくと、端末を切った。落ち着いたことだし、もうこのまま寝よう……その瞬間、少年の頭にひとつの妄想が飛来した。――吹雪は今頃。あの痩せ型の男と……高校の先輩で……それはとどまるところを知らず、無意識に妄想が進んでいった。気づけば吹雪はあの男と――男とつながっていた。

2014-07-07 21:50:35
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

不思議と、怒りも嫉妬もわかなかった。映像、写真で見るそれだった。だから――少年の象徴は反応していた。気が付けば手にそれを握り――いつものように……

2014-07-07 21:52:10
Aikawa Hasma @arg_Aikawa_

罪悪感はなかった。インターネットに落ちているそれを利用するのと同じであった。少年の中の吹雪はそういう存在となった。毎晩のように、毎晩のようにそうであった。やがて少年は……吹雪を、そういう目で見ることしかできなくなった。

2014-07-07 21:54:18

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