空想の街・氷涼祭'140704~06 #赤風車

#空想の街 (http://www4.atwiki.jp/fancytwon/)さんの「氷涼祭」企画(14/7/4~6)。公式様参加者様、お疲れ様でした。 #赤風車 とタグが決まるのが遅く、更にプロットを立てず飛び入り参加したために最初と最後で表現に差が出てしまっています。読みづらいものですみません。 時系列順に並んでおります。絡んでくださった方のツイートも入っております。何か問題点ございましたらご指摘願います。お手数をおかけ致します。 他本編や番外などはこちら→http://nowhere7.sakura.ne.jp 続きを読む
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三日目

ずっと待っていたもの

不可村 @nowhere_7

水面に浮上するように目が覚めた。どのくらい眠っていただろう、とりあえず身を起こして胡坐をかく。夢も見ずに眠っていた。昨日の釣りが意外と堪えたのだろうか。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 11:16:31
不可村 @nowhere_7

今日は、そうか、もう祭りは終わったのだ。昨日の晩で祭りは終い。確か拾ったタウン誌には、今日の夕方に風船を皆で空へ離すとか。白鴉が飛んでいってしまうのと合わせるという。時計塔の近くには行けそうにないが、自分もそれに倣おうとは思う。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 11:58:39
不可村 @nowhere_7

天井の綻びから空を見て、もう夕刻に近いじゃないかと自分に呆れ――はたと思いつく。己は、白鴉が飛んできた瞬間を見ていない。その後に、海の近くで気がついたからだ。何か奇妙な感覚がする。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 15:06:03
不可村 @nowhere_7

……透明な風船。 目の前にあるのは透明な風船だ。役所で、何でもいいからと急いで貰ってきたもの。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:21:01
不可村 @nowhere_7

風船といえば、死者が帰る場所を間違えないようにする目印だ。――終ぞ求める相手には出会えなかった、誰かしら死者が記憶を教えてくれると期待していたのに。しん、と静まり返った廃屋で、独りで風船を弄び、手前勝手なことを考えながら風船を見つめていた。びくと体が動く。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:21:28
不可村 @nowhere_7

風船に誰かが映った気がしたのだ。いつものように部屋にある風車を映しているだけだろうと思った。何度か瞬きをする。気のせいではない。誰だ? なんだ? これはなんだ。――ざっ、と、それまで静かだった風車が一斉に回りだした。かららららころろろろ。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:22:47

さざめき

不可村 @nowhere_7

総毛立った。動悸がひどい。浅い呼吸を繰り返し乍無意識に体を折っていた。…風船に自分が映っている。海に映った自分と同じだからこれは己の顔だ、白い立て襟シャツに黒の袷と袴、不揃いに短い黒髪。こっちをじっと見ている。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:23:09
不可村 @nowhere_7

そしてあれは、回る風車と弁慶を担ぐひょろ長い誰か――椛のような三つ編み。桧皮色の着流し。骨ばった踝、薄い氷のような眼鏡の、あれは―― #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:24:30
不可村 @nowhere_7

かららころろろ、鈴や流木や骨が転がるような音が廃屋を包んでいる。銀氷が降ってきたときのように思わず天を仰ぎ、鷹揚に瞬きをすると、沢山の風船が白鴉と共に空を渡るのが睫の先に見え隠れした。小さいもの、模様のあるもの、動物の形のもの… #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:25:21
不可村 @nowhere_7

白い鴉は素知らぬ風に飛んでいく。風船は吸い込まれるように青い空へ落ちていく、遠い気持ちでそれを見送った。急に熱がせりあがる。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:26:58

己が呼んだものと、己を呼んだもの

不可村 @nowhere_7

そうか。嗚呼そうか。膝が崩れて視界がぼやけた。赤い風車がぼたりと落ちる。がららら、挿しておいた風車は一斉に歌っている。己の身を掻き抱くようにして背を丸めた。――そうかそうだったのか。釣り道具が、弁慶があった理由。風車しか釣れない己。空腹も覚えなかった理由。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:27:21
不可村 @nowhere_7

音を立てているのは風車だけではない、己の中のすべてが心地よく容赦なく崩壊していく。うっとりと絶望に微笑んだ。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:28:11
不可村 @nowhere_7

ここは仮住まいなどではない。終の棲家だ。 嗚呼。あの少年に会えてよかった。でも名前を聞かなくて本当によかった。ずっと釣りだけしていて本当によかった。無闇に売ったりしなくて、よかった。これでよかった。これでよかったのだ。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:29:14
不可村 @nowhere_7

すっと手を離した。透明な風船が幾つもの風車を、己を、そして彼奴を映して回りながら天へ還っていく。他の風船に混ざる。空の青に溶けていく。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 17:30:18
不可村 @nowhere_7

すっかり風船が空に昇りきる頃、廃屋には音を立てる何十本もの風車が遺されていた。寂れた釣り道具。部屋の真ん中には、赤い風車がぽつり、無残に落ちている。たったひとつの小さな濃い赤の風車を取り囲むように、大小様々色とりどりの風車が啼いている。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 18:06:06

さんざめくいのち、涙雨

不可村 @nowhere_7

街に、雨が降る。 弁慶が雨に濡れている。 かららららころろろろろろ、海に近い廃屋から響く不思議な音は、誰の耳にも届かないまま永遠に続いていた。 #空想の街 #赤風車

2014-07-06 18:08:46

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