空想の街・氷涼祭'140704~06 #赤風車

#空想の街 (http://www4.atwiki.jp/fancytwon/)さんの「氷涼祭」企画(14/7/4~6)。公式様参加者様、お疲れ様でした。 #赤風車 とタグが決まるのが遅く、更にプロットを立てず飛び入り参加したために最初と最後で表現に差が出てしまっています。読みづらいものですみません。 時系列順に並んでおります。絡んでくださった方のツイートも入っております。何か問題点ございましたらご指摘願います。お手数をおかけ致します。 他本編や番外などはこちら→http://nowhere7.sakura.ne.jp 続きを読む
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一日目

覚醒

不可村 @nowhere_7

何故自分がここに立っているのか分からないけれど、周囲から浮いていることだけは分かる。行きかう人はみな風船を持って帰るようだけど、僕の手には風車しか、ない。なんだか服装も違う気がする。海が見えるな、方位磁石からすると海のほうが東か。ここは東のほう、と。 #空想の街

2014-07-04 17:24:42
不可村 @nowhere_7

何も思い出せないのはまあいいとして、風船をどこかに貰いにいくべきだとは判断がついた。無料配布、という報せの紙が目についた。今でも配っているだろうか。とりあえず、ダッシュでそこまで行こう。なくした記憶より、これから起こる何かのほうが大事だ。 #空想の街

2014-07-04 17:28:41
不可村 @nowhere_7

無事に風船はもらえたが、そういえば自分には帰る場所がないんだとはたと気付いた。とりあえず、海の見える方向へ進む。道すがらいいことを聞けた。白鴉、氷涼祭…今日は早く帰ること。いくつかの決まりごとだ。忘れないように唱えて、海を見てただつったっている。 #空想の街

2014-07-04 17:34:14
不可村 @nowhere_7

しかし立派な時計塔だったな――そういえば役所の人は亡者がくるとか言っていたけど、記憶のない自分に縁のある誰かなんて来てくれるのだろうか? 死んだ人は彼岸の人なんだから引き止めちゃいけないんだろう、でも不謹慎にもわくわくする。自分を知っているのが死者かもしれないなんて! #空想の街

2014-07-04 17:37:22
不可村 @nowhere_7

この風車どうしよう? 欲しい人がいたら、あげるんだけど、僕が僕であるためのアイデンティティであるような気もした。決めた、うまく風で回らないだろうけど、袴の腰部分に刺しておこう。名前を聞かれたら、「風車」とでも名乗ろう。 #空想の街

2014-07-04 17:45:15
不可村 @nowhere_7

ここでぼうっとしていよう。みな綺麗な風船を体にくっつけて、走ったり何か食べたりしている。露店もあるようだ。空想の街、東区、か。そういえば自分の風船はどんなのだっけ。とりあえずなんでもいいと思って焦ってもらったんだった、と上を見ると、風船は海の色を映していた。透明だ。 #空想の街

2014-07-04 17:49:27
不可村 @nowhere_7

自分の体を改めて見分する。袴に、でも上はハイカラーなシャツ、そして着物。こういうのは書生風とかいうのだっけ、短期記憶をなくした脳も、長期記憶からそういう結論をひっぱりだしてきた。髪を触ると短い。引っこ抜くと、黒かった。ふうむ。格好つけたけど痛い。 #空想の街

2014-07-04 17:53:43
不可村 @nowhere_7

街を楽しげに歩く人々(どうもヒトではない生き物もいたようだが)の足が疎らになってきた。そういえば夜間は外にいないほうがいい、というようなことを聞いたような。宿代を払えるものがないので、仕方なしに家屋の隙間で夜を過ごすことにした。この辺りに出たのだから、ここが家でいい。 #空想の街

2014-07-04 19:02:55
不可村 @nowhere_7

家々の隙間といえど、流石に夜を明かすのは無理そうだと見切りをつけ道を行く。ひとのいないボロ家を見つけ、そこで夜を明かそうかと悩んでいる所、走り抜ける通行人の声が聞こえた。「孔雀荘でタウン誌の券を…」宿泊処だろうか?しかし金も券もない自分が受け入れられるだろうか。ふむ。 #空想の街

2014-07-04 22:05:10
不可村 @nowhere_7

仕方がない、考えた末廃屋で夜を越すことにしてごろりと横になった。西洋風とも東洋風ともつかぬボロ家は、記憶がない金がないタウン誌もないで無い無い尽くしの己にぴったりな気がする。あるのは透明な風船と赤い風車。 #空想の街

2014-07-04 23:52:47
不可村 @nowhere_7

目を閉じ音を拾う耳に、未だ人々の足音が響いた。夜が更けようというのに、意外と皆どこかに出かけているのか、そんなことをうつらうつら考えていたが、不意にふと違和感を覚える。なんだ、今のあれは。足音、足音か?違う。気のせいか。 ――なんだろう。何かが騒ぐ。 #空想の街

2014-07-04 23:56:49
不可村 @nowhere_7

風も無いのに腰に挿した風車ががらんと回って鳴った。奇妙だ。この街は記憶のない自分にも温かく懐かしいが、ひんやりとしたものも感じる。海が近いからだろうか。――祭りの名はなんと言ったか、何かがひっかかる。綻びた天井に留まる透明な風船をじっくりと見つめていた。思考が凝る。 #空想の街

2014-07-05 00:00:40
不可村 @nowhere_7

違和感について考えているうちに本当に眠くなってきた。案外何とかなるものだ。そういえば廃屋の隅に釣り道具があったな。明日の昼間はそれをもって海にでも行こうか。 #空想の街

2014-07-05 00:20:00
不可村 @nowhere_7

……持っていない記憶よりも、先ほどの違和感のほうが脳みそを占めている。それがなぜなのか考える余裕も無く、睡魔にひきずられていく。 #空想の街

2014-07-05 00:21:34

二日目

己の糸にかかるもの

不可村 @nowhere_7

よく寝た。だがどことなく緊張感の漂う夢だったようにも思う。動悸がまだ、ひどいような気もする。 ここでぐだついていても仕方がない。顔をこすって廃屋の隅に行き、釣り道具が十分に使えるか調べた。根本的なことは忘れても、こういった雑学のようなものは覚えているから不思議だ。 #空想の街

2014-07-05 10:38:16
不可村 @nowhere_7

東の海岸でのんびり釣りでもしよう。道具は使えるようだ。赤い風車と透明な風船を持ち、ひとまずの住居を後にした。 #空想の街

2014-07-05 10:39:31
不可村 @nowhere_7

海へ向かう道中、タウン誌を見つけた。どうやらフリーペーパーらしかった。昨日はあれでも色々動揺していしていたわけで、動き回ることもできなかった。海を背に座り込んで暫し読み込む。 あおいとり書林、というのが近くにあるらしい。本屋か?少し血が騒ぐ。 #空想の街

2014-07-05 11:11:58
不可村 @nowhere_7

今この海岸付近には人がいるのだろうか?店には誰かいるのだろうか。考え込みながら釣り糸を海へ垂らした。なんとも形容しがたい色の海だが、美しいことは分かる。何が釣れるだろうか、と他人事のようにぼうっとしていれば、すぐにがくんと体が動いた。慌てて竿を動かし糸を繰る。 #空想の街

2014-07-05 11:15:36
不可村 @nowhere_7

果たして吊り上げたのは、風車だった。しげしげとねめつけるようにして観察してやるが、己が腰に挿している赤い風車とそっくりそのまま同じものに見える。触った感じ。材質。色、回り方、回ったときの音。慰めるように(嘲笑うように)鳴る風車。 ――首を振ってもう一度糸を垂らした。 #空想の街

2014-07-05 11:20:42
不可村 @nowhere_7

なんだかざわざわする。穏やかじゃないのに心臓のどこかがひんやりと落ち着いている。記憶が無いのに、この街をそこまで不思議に思わない、己を奇妙に感じるが、疑いだしたらきりがないとため息をついた。 糸が揺れる。 #空想の街

2014-07-05 11:22:31
不可村 @nowhere_7

氷涼祭。昨日も聞いたが、タウン誌にも載っていた。死者が帰ってくる、この祭りは誰のためなのだろう。死者を悼むためか、生者が慰められるためのものか。或いは両方かも知れぬ。 ――記憶がない自分は、慰められるのだろうか。知らない記憶を死者にでも教えらえるのだろうか。 #空想の街

2014-07-05 11:29:32
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