空想の街・氷涼祭'140704~06 #赤風車

#空想の街 (http://www4.atwiki.jp/fancytwon/)さんの「氷涼祭」企画(14/7/4~6)。公式様参加者様、お疲れ様でした。 #赤風車 とタグが決まるのが遅く、更にプロットを立てず飛び入り参加したために最初と最後で表現に差が出てしまっています。読みづらいものですみません。 時系列順に並んでおります。絡んでくださった方のツイートも入っております。何か問題点ございましたらご指摘願います。お手数をおかけ致します。 他本編や番外などはこちら→http://nowhere7.sakura.ne.jp 続きを読む
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不可村 @nowhere_7

かざぐるま。風車風車風車かざぐるま!――何の話かと問われても困る。見てもらえれば分かるだろう、己の釣り針には風車しかかからないのだ。色は赤以外にも青、黒、黄、緑、紫、白と多様に出てきたが、殆どが大きさも材質も自分の持っていたものに瓜二つだった。なんだか忌々しい。 #空想の街

2014-07-05 12:43:18
不可村 @nowhere_7

釣竿と共に持ってきたバケツから溢れ返るほどに、己の周りに風車が散乱していく。最早忌々しいどころの騒ぎではない。諦めの境地に達しつつ、一度だけ住処に戻って戦利品を置いてくることにした。 #空想の街

2014-07-05 12:45:10
不可村 @nowhere_7

がらん。 身動きするたびに、強い風もないのに腰に挿した風車が鳴る。無音で回ればいいものを、己の持っている風車はどうにも口喧しいようだった。 それにしても人通りも妙な気がする。何か形容しがたいものと何度もすれ違っているような、ずっと見られているような。 #空想の街

2014-07-05 12:47:03
不可村 @nowhere_7

おんぼろの住処で一息ついた。狭い部屋に散らばる、色とりどりの風車を見渡し思案する。これを売って生計でも立てようか、との思いも過ぎったが、なんだか愛おしくも感じられてきた。手放すのはまだよそう、畳に突き刺して飾っておこう。独り暮らしの慰めにはなる。 #空想の街

2014-07-05 13:08:45

弁慶

不可村 @nowhere_7

釣り道具の他に何かないかと小さな廃屋を改めて探検することにした。部屋の中には、今己が突き刺して並べたとりどりの風車しかない。家の周りに何か、と影にまわってみれば、箒が逆さになったようなものが立てかけてあるのを見つけた。 #空想の街

2014-07-05 13:11:01
不可村 @nowhere_7

これはなんといったか。べんけい。そうだ、弁慶、だ。弁慶は祭りの際に風車売りが風車を突き刺して街を練り歩くための棒である。身の丈ほどある竹に藁がついていて、そこに風車を挿すのだ。 #空想の街

2014-07-05 13:12:34
不可村 @nowhere_7

お誂え向き、と言うべきか、然し何かに操られているようでぞっとしない。気が進まないにも程があったので弁慶は無視することにした。売るつもりはないのだ、売るつもりは。 釣り道具を持ち直し、袴とシャツの襟と腰の赤い風車を正し、廃屋を出た。……沢山の目に見送られている気がした。 #空想の街

2014-07-05 13:16:42

街に銀氷

不可村 @nowhere_7

あれから一時間。数分おきに釣り糸は反応し、そのたび獲物は逃さなかった。得たものはまたもバケツには収まりきらず、累々と身の回りに転がっている。黒い袷の前で、黒い袴に挿している風車が何かを告げるようにまたも回った。海と糸を見つめてそれを流す。 #空想の街

2014-07-05 15:10:50
不可村 @nowhere_7

釣れるものは相も変わらず風車だ。溜息すら出なくなり、併し捨てるわけにもいかず、一度竿を上げて吊り上げたものたちをとっくり見る。己が目覚めたときも海の近くで赤い風車を持っていたのだ、これも何かの思し召しとやらだろう。バケツに括りつけていた透明な風船がふわふわ揺れている。 #空想の街

2014-07-05 15:39:08
不可村 @nowhere_7

がら、と赤い風車が妙な具合に回った。上を向く。反射的な行動だった。空気の匂いが違う、海が違う。透明な風船もひっこんだようにしんとしている。 #空想の街 #赤風車

2014-07-05 15:43:43
不可村 @nowhere_7

声を失った。それが当然であるかのように己は棒立ちになって空を見上げていた。 #空想の街 #赤風車

2014-07-05 15:48:25
不可村 @nowhere_7

手を伸ばしても、何も触れない。己の頭上でほろほろとそれは消えていく。とけていく。 #空想の街 #赤風車

2014-07-05 15:49:02
不可村 @nowhere_7

なぜだろう――矢張り何処かしら懐かしい、 ――どのくらいこうして空を見上げているだろう。これが銀氷か。 殊あるごとに回っては騒がしかった赤い風車も、今ばかりはずっと静かだった。透明な風船が銀氷を反射して踊る。散らばった風車の色も、それに混ざり回っていた。 #空想の街 #赤風車

2014-07-05 16:03:12
不可村 @nowhere_7

銀氷が見えなくなってもまだ陶然と空を仰いでいた。ふっと我に返り、どこか身の置き所の無いような気分に陥る。気恥ずかしさを誤魔化すように風車を搔き集めバケツに詰め込み、廃屋へと歩を進めた。 そしてまた道中でぽかんと口が開いた。 #空想の街 #赤風車

2014-07-05 16:10:54

緑色の約束

不可村 @nowhere_7

海辺に銀の植物があった。 はてさっきまではなかったような、と首をかしげてそれを見やる。菱形で銀に輝く、ささやかな花だった。手折るのもよくない気がして、つったって瞳に焼き付けることにする。 #空想の街 #赤風車

2014-07-05 16:18:33
十浦 圭 @ueto_rika

いいタイミングでアナウンスが流れ、悟はマルケー経由で海岸へと向かった。お目当ては孔雀荘を飾るための氷花。「いいのあるといいなあ」呟いて、海岸に一人釣り人がいるのに気づく。足元にあるのは氷花だ。やった!「こんにちは!」 @nowhere_7 #空想の街 #孔雀荘へようこそ #赤風車

2014-07-05 16:22:11
不可村 @nowhere_7

@ueto_rika 突然澄んだ声をかけられ、軽く体が跳ねた。花から視線を離し背後を見、声を出そうとして気付く。ここで気がついてから、一度も誰とも話していないのだ。一回だけ咽て、「こ、こんにちは」とだけやっと返す。 #空想の街 #赤風車 #孔雀荘へようこそ

2014-07-05 16:27:27
十浦 圭 @ueto_rika

驚かせてしまったらしい。悟はへら、と笑って彼の足元の氷花を指差した。「この氷花、貰ってもいいですか?」袋を掲げてばさばさ、と揺らす。「お使いに出されちゃって」 #空想の街 #赤風車 #孔雀荘へようこそ @nowhere_7

2014-07-05 16:30:56
不可村 @nowhere_7

「お使いか、それはお疲れ様」仕事をしている子なのだろうか。自分より若いように見えるので勝手に少年だと判断してしまう。そして海岸の花を己も見た。「貰っていいと思うよ。なんせ僕のものじゃない。きっと誰のものでもないんだ」 #空想の街 #赤風車 #孔雀荘へようこそ @ueto_rika

2014-07-05 16:34:33
十浦 圭 @ueto_rika

「お兄さんが取るのかなって思って。この時期の飾りにすごく人気なんだよ」説明しながら氷花を摘んで、袋へと入れる。「氷花を知らないってことは、お兄さん旅の人?」少し迷って、ええい!と尋ねる。「宿はどうしてるんですか?」 #空想の街 #孔雀荘へようこそ #赤風車 @nowhere_7

2014-07-05 16:38:47
不可村 @nowhere_7

「旅の人と言うか、僕には記憶が無いのだよ。昨日の夕頃気付いたらここに居てね。その辺に廃屋を見つけたからそこで寝起きしている」そして赤い風車を少年に見せる。「持っていたのがこれ。名乗る名前も無い、好きに呼んでいいよ」 #空想の街 #赤風車 #孔雀荘へようこそ @ueto_rika

2014-07-05 16:42:22