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今まで書いた140字小説のまとめ。 ※黒バスで腐向けです
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ゆら @kb_yura

<かぞえる/高+緑> 手元に来たボールを掴むのに1秒。数歩分後ろへ投げ渡すのに3秒。膝を沈め、腕を曲げる。寸分のぶれもないシュートモーションには3秒かかる。指先からボールが空高く跳ね上がり、頭上を飛び越した。1、2、3。リングに沈む。奇跡はいつも10秒で起こる。 #同題ss黒バス

2014-03-06 00:40:48
ゆら @kb_yura

〈ゆるす/高+緑〉 朝から高尾の機嫌が悪い。親と喧嘩をしたのだろうと気にせずいたが、昼になってもそのままだった。不機嫌な奴と食べる飯はまずい。いい加減機嫌を直せと言えば、高尾は少しの間を置いてから、笑った。「仕方ねぇから許してやるよ!」…俺が原因だったのか。 #同題ss黒バス

2014-03-08 11:05:39
ゆら @kb_yura

〈きずつく/高+緑〉 ガキの頃に10円玉を使って家の車に傷をつけたことがある。酷いことをしたもんだ、帰ったら謝ろう。決意をしながらリアカーにでかでかとされた落書きを眺めた。「どうするよ真ちゃん、そのまま乗っとく?」「誰が乗るか。消せ」…いやお前も手伝おうぜ! #同題ss黒バス

2014-03-09 09:51:32
ゆら @kb_yura

〈おちこむ/高+緑〉 何やったってうまくいかない日ってのはある。そういうもんだと割り切って、気にしないのが正解だと分かってるし、そうしてるつもりなんだけど。「…何で気付いちゃうかなあ」知らない内に机に置かれたお汁粉缶を見て、慰めんの下手だなあと苦笑を零した。 #同題ss黒バス

2014-03-12 12:55:16
ゆら @kb_yura

<こえる/高緑/腐> 山のように高かった壁は気付けば崩れ去り、今やただのラインとして、俺と真ちゃんの間に横たわっている。超えるのはすごく簡単だ。たった二文字声にするだけ。なあ。呼びかけて、躊躇する。簡単なはずなのに、何でだろうな。その二文字がやけに怖いよ。 #同題ss黒バス

2014-03-14 07:28:56
ゆら @kb_yura

〈高+緑〉視線がこちらへ向けられた、ような気がする。先程目にした位置、バッシュと床が擦れる音、背後にいる対戦相手の荒い息。頭の中で形を作り、ボールを弾いた。真後ろの息を飲む声で成功を悟る。高いループを描くボールを目にしないまま、振り向いて声を張り上げた。「真ちゃんナイッシュー!」

2014-03-18 21:45:33
ゆら @kb_yura

〈つくる/高+緑〉 「閃いた!」唐突に叫んだ高尾の声に、休憩中の部員の目が集中した。それを気にもかけずに俺を見上げ、座ってくんね、と深刻な顔をする。胡散臭く思いながらも従うと、俺の頭を両腕で固定して、背後に叫んだ。「一発ギャグ作りました。みかん!」よし殴る。 #同題ss黒バス

2014-03-20 19:40:31
ゆら @kb_yura

〈高+緑〉体育館の端っこ、ちんまりと膝を抱える真ちゃんは、だけどそもそもがでかいので全然ちんまり出来ていない。けどまあ落ち込んでいるのは確かだ。どったの。問いかければ、膝に視線を落としていた真ちゃんは俺に目を向け、いつもより一段と低い声でぼそりと言った。「紫原のお汁粉が飲みたい」

2014-03-20 22:45:07
ゆら @kb_yura

〈であう/青+黒〉 同じ学校、同じ学年。それだけできっかけはいくらでもある。例えば同じ委員会に入る。例えば食堂で隣に座る。購買でお金を貸すのでも、ぶちまけたプリントを拾うのだっていい。数多ある可能性の中、起こりえるのはただ一度だけ。僕らの場合は、君の悲鳴から。 #同題ss黒バス

2014-03-21 21:43:44
ゆら @kb_yura

〈ぬく/青+黄〉 一つ。必死こいて走っても、俺の足ではあの人の前を走ることは出来やしない。二つ。腕をしならせてボールを投げる。見た目だけは同じなのに、どういうわけかゴールリングで揺れる回数が二度多い。三つ、四つ。指折り数えて、口元を吊り上げた。でも、いつかは、 #同題ss黒バス

2014-03-23 14:37:06
ゆら @kb_yura

〈準備運動/秀徳〉 部活の始まりはいつもストレッチからだ。各々ペア組んで開始するように、とのコーチの言葉に、真ちゃんは大坪先輩の傍へ、宮地先輩が木村先輩の下へ行く。それをジト目で眺めつつ、背の近い先輩とペアを組んだ。……牛乳飲もう。毎日の決意を今日も固める。 #同題ss黒バス

2014-04-02 12:43:26
ゆら @kb_yura

拗ねた時。「真ちゃんにとっての俺って結局はゴミ袋入れる袋みたいはもんなんだろ!いらなくなったらポイすんだろ畜生!」「…は?」「否定しないとか…まさか既に捨てられる直前…!?」「…いや…お前が何を言っているのかさっぱり分からん」「何でなのだよ」「真似をするより順を追って説明しろ」

2014-04-02 22:18:07
ゆら @kb_yura

「だからさ。ゴミ袋あるじゃん」「その前提が既に分からん」「いや分かったことにしとこう。ここにゴミ袋があります」「……で?」「ゴミ袋って一枚一枚売ってるわけじゃないだろ?」「買ったことがないから知らん。そうなのか?」「そうだよ!なんなの真ちゃんボンボンか!ボンボンだな知ってる!」

2014-04-02 22:18:15
ゆら @kb_yura

「いいから話を進めろ。ゴミ袋はばら売りじゃない、までは分かったのだよ」「うん。ばら売りじゃなくて、一個の袋の中に折りたたんで入ってるわけ。分かる?ゴミ袋を入れるための袋な」「…ああ、なるほど。分かった。それで?」「だから俺ってその袋みたいなもんなんだろって」「待てもう分からん」

2014-04-02 22:18:22
ゆら @kb_yura

「途中過程を飛ばすな。ゴミ袋を入れる袋がある。それでそれがどうしたと?」「いやだから、ゴミ袋を取り出すじゃん。ゴミ袋が入ってる袋から」「ああ」「ゴミ箱にセットするじゃん、ゴミ袋を」「それで?」「ゴミ溜まったら捨てて、新しいゴミ袋をセットするだろ」「まあそうなるだろうな。で?」

2014-04-02 22:18:28
ゆら @kb_yura

「どんどん使ってくと、ゴミ袋入ってる袋の中からゴミ袋がなくなるよな」「そうだな」「最後の一枚のゴミ袋をゴミ袋入ってる袋から取り出すとする」「ふむ」「ゴミ袋入ってた袋はその瞬間ゴミ袋入れる袋という機能を失ってゴミに成り下がり、ゴミ袋の中に捨てられるわけ」「ああ、…なるほど」

2014-04-02 22:18:34
ゆら @kb_yura

「俺もそれと一緒で、役に立たなくなったら捨てられるんだろ?と言いたかった」「…なるほど。馬鹿かお前は」「うん説明してるうちに俺何言ってんだろって思った。勝手に拗ねてごめんな」「そこじゃない」「え?」「そもそもお前をいつかゴミになる物と同一視することがおかしい」「…真ちゃん…!」

2014-04-02 22:18:40
ゆら @kb_yura

あっオチ忘れてた。「自転車を漕ぐのに使い切るとかないだろうが」「そこか!そっかー使い捨てのゴミじゃなくて一生使える下僕扱いかー!…はっ一生とか…えっ今のプロポーズ?」「急に前向きになったな。そんなわけないのだよ」「ですよね」

2014-04-02 22:25:38
ゆら @kb_yura

〈前屈を押して/青+桜〉 柔らかな筋肉が指を押し返す感触に、少なからず感動を覚えた。一流のアスリートの筋肉は柔らかいという、聞きかじりの知識は本当だったらしい。一緒に練習することが増えて、知らないことが減っていく。 背中を押して、また一つ。身体も柔らかい。 #同題ss黒バス

2014-04-08 20:37:22
ゆら @kb_yura

居残り練習の後になるともうすっかり辺りは夜の様相だった。学校からの帰り道、通り抜ける住宅街は街灯も少なく暗闇が深い。昼間は雲一つない晴天だったこともあってか、今日はいつもより鮮やかに星が瞬いているように見えた。

2014-05-08 21:45:22
ゆら @kb_yura

「今日は夏の大三角形が、すごくキレイに見えますね」 歩道橋を昇り切り、地上よりわずかに高い位置から空を見上げる。それで何が変わるわけでもないけれど、立ち止まって呟いた僕の言葉をうけて、彼も遅れて立ち止まった。空を見上げて、あれか、と指を三角に動かす。

2014-05-08 21:50:34
ゆら @kb_yura

指を刺されたところでどの星を指し示しているのかは今一つ分からなかったけれど、大きく瞬く三角を間違えるとも思えないので、そうです、と僕は頷いた。 「織姫星と彦星と、白鳥座の星ですね」 「ふうん。テツくわしーのな。星座好きなのか」 「好き、というか」

2014-05-08 21:53:45
ゆら @kb_yura

「銀河鉄道の夜、って知ってますか? 僕あの話がすごく好きで、その時に少しだけ星座の本を読んだんです。だから有名なのしか知らないですよ」 「ふーん。俺全然分かんねえや。それより銀河鉄道って名前かっけえな、どんなん?」

2014-05-08 21:57:17
ゆら @kb_yura

「主人公と親友が、空を飛ぶ鉄道に乗って銀河の旅をする話です。初めて読んだ時は、僕もいつか空を飛ぶ鉄道に乗りたいなあって、ワクワクしながら読んでました」 中学生の今になって小さなころの夢を離すのは少しばかり気恥ずかしい。更に言うなら、からかわれるんじゃないかと不安でもある。

2014-05-08 22:11:03
ゆら @kb_yura

恐々と空から青峰くんへと視線を移せば、彼もまた空から視線を僕へと戻すところだった。ぱちりと視線が重なって、唇がゆるく弧を描く。 「いいな、そういうの」

2014-05-08 22:13:48