概念探偵A 第一夜【○○は無慈悲な夜の女王 其の一】
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彼女たちは人類のそれと異なる技術体系、人々がかつて見切りをつけた旧い科学を独自に発展させた文化と、 ある警告をもたらすためにやってきた。 「敵」の存在を知らせに来たのだ。 しかし当初、彼女たちの言に耳を傾けるものは誰もいなかった。 2
2014-07-18 01:06:49やがて、海の底から「敵」が来た。 「妖精」たちが報せたように、それは海を荒らし 船舶を襲い 陸に揚がり 地球の総てに牙を剥いた。 4
2014-07-18 01:08:15ここに来て自らの過ちを悟った人類は、教えを齎した妖精と手を組み、抗うための戦いを始めた。 護るための戦い。選ばれたのは、数多くの少女たちと、僅かばかりの男たちだった。 5
2014-07-18 01:10:04その笑顔を見ただけで、胸の奥を締め付けるような、羞恥の念を伴った、照れ臭い思いが溢れ出して思わず顔を背けてしまう。 15
2014-07-18 01:17:13こみ上げる恥ずかしさと照れ臭さを押し隠し、なんとか少女の方に向き直ってみせる。 彼女は微笑みを浮かべじっとぼくを待っていてくれた。 その事実に尚のこと高揚し、多幸感を覚える。 17
2014-07-18 01:19:17駆け出した彼女は高台の欄干まで一息に乗り越えると、切り立った崖を背にぼくの方へとふわり、と舞うように振り返ってみせ、あの微笑みでぼくを見た。 闇夜を照らす、蛍の光のような儚げで、美しい微笑みだ。 20
2014-07-18 01:42:17いけない。彼女が行ってしまう。どこか遠くへ。引きとめなくちゃ。行かなくちゃ。彼女の招く方へ。 そんな考えが、ぼくの思考を悉く染め尽くした。 崖の先は海であることや、こんな夜更けに少女とふたり、ひと一人いない空間を訪ねていることに少しの違和感も生じなければ、疑念もなかった。 21
2014-07-18 01:53:03ゆっくり、しかし確実に。 夢遊病者のようなおぼつかない足取りで、だが明確な意思を伴って彼女の方へ歩を進めていく。 あと10歩……あと9歩……急がなきゃ。彼女のもとへ。6……もう少し……4……2…… ふたりの距離が、ゼロになる。 22
2014-07-18 01:55:02息を切らすぼくの頬を、彼女の白く、しなやかな手が優しく撫であげた。 恍惚感と多幸感がぼくを満たす。 彼女がぼくの目を上目遣いに見つめる。 ぼくも彼女の目を見つめる。 彼女が微笑む。なんてしあわせなんだろう。 23
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