ストレイトロード:ルート140(6周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。1日1話ペースで継続中。 今回は251~300。それ以前のは作者おすすめ欄か下記URLからどうぞ。 元の短編の掲載場所: http://www.gekkado.jp/
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、262。証明。 直接手出しをしていなければ問題なし、とは言え。

2014-06-09 19:58:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「多少楽になりましたよ」「嘘。絶対悪化してる」私が寝込むと移動手段がなくなる。もう一晩この宿で過ごす点では合意に至ったが、病状の判断は割れた。衰弱した昨夜の自分を体が覚えている限り、私は回復したと言い切れるが、主観は藍に伝わらない。ドアを盾にするように隠れ、どこかに電話をかけた。

2014-06-10 20:09:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、263。衰弱。 酷使したら消耗する。そして弱る。彼女は誰を呼びつける?

2014-06-10 20:10:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

前の車のタイヤ痕はクリーチャーを引きずった跡らしい。道路は油を撒いたような状態だった。遠くで咆哮が聞こえる。「あなたは進むことだけ考えて」運転に専念するには少々厳しい状況だが、藍は口答えを許さない。結局私は車を前へ進めながら、魔女の千里眼に頼らず悪路から脱出する方法を考え続けた。

2014-06-11 19:36:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、264。専念。

2014-06-11 19:36:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍は今夜もなかなか寝ようとしない。助手席に座り、携帯端末を通して遠くの誰かと会話中だ。時差でもあるなら仕方ないが、成長期の体には早い就寝が必要なはずなのにと余計なことを考え、しかし私は黙っている。何が何の成長を阻害するか、下手なことを言えば年頃の少女は間違いなく気分を害するのだ。

2014-06-12 19:13:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、265。阻害。 親でも何でもない男、しかも仕えている身で言えることなんて。

2014-06-12 19:14:53
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

雇われて数日。藍が誰かと対立しているらしいことは言動だけで何となく察した。そよ風一つで国さえ敵に回しかねない少女が何に対して苛ついているのか、直接聞いても返ってくるのはいつも一言。「わたしが欲しいものをあっちが独り占めしてる、それだけ」重大な秘密にも子供の争いにも見えるから困る。

2014-06-13 19:44:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、266。対立。 そのうち分かる、とさえ言われることなく時が過ぎて。

2014-06-13 19:45:49
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

何かが爆発する音に驚いて飛び起きた。だが見回しても車内は何の異変もなく、遅れて起き上がった藍が端末を眺めているだけだった。「今の音は…」「メールが来たの」嫌な知らせが着信した時のために設定した音だという。「なかなかリアルでしょ?」「紛らわしいからやめてください」「じゃあやめない」

2014-06-14 23:13:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、267。着信。

2014-06-14 23:14:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

この星は広い。一人が知る世界の大きさには限界がある。説教される藍を見てそんなことを考えたのは、怒らせた相手の言語を彼女が明らかに知らないからだ。頭を下げて黙る彼女の代わりに私が謝り、納得した相手を送り出してから、藍が口を開いた。「で、何て言ってたの?」逐一通訳すべきだったようだ。

2014-06-15 21:41:29
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、268。通訳。

2014-06-15 21:41:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「家は?どこに住んでるの?」私を雇う際に藍が聞いた質問の一つだ。もう何年も定住していないと仲介者から聞かされた彼女は眉をつり上げた。「何それ」その反応が軽蔑ではなく質問の意図と違う話を理解できなかっただけだと知ったのは、旅に連れ出された後。帰る家をなくした子供に出会った時だった。

2014-06-16 19:58:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、269。定住。 一つのところにとどまるほど、見える世界は狭くなる。しかし同じ場所で時間をかけるだけ、深くなる。

2014-06-16 20:00:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍は人だかりの中心へ、私の手を引いたまま突撃した。「ずっと探してた人がここを通るの」待ち望んだチャンスが到来した。手を強く握る気持ちは分かる。対面の瞬間を待っていたら、群衆が騒ぎ出した。「あの人…じゃない!いた、あっちに逃げてるし!」著名人の登場に狂乱する人々が途端に壁と化した。

2014-06-17 20:18:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、270。到来。 望まれない通行止め。

2014-06-17 20:18:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

祭りを彩る飾りが次々に組み立てられる。紙を畳んで花を咲かせる、完成品だけでなく工程も見事なものだ。私が村の女性たちに手伝いを申し出たら、誰より藍が驚いた。「やるの!?」「はい。あなたも一緒に」箱入り娘は内職するのも初めてだろう。教わりながら話も弾む。時には打算のない会話も必要だ。

2014-06-18 19:27:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、271。内職。 時には、準備する時間が一番楽しい、なんてこともある。

2014-06-18 19:29:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「今日、豪華客船が来るの」藍はまだ暗い時間に、船が入港する桟橋から離れた岸壁の上へ私を連れて行った。何故そこなのか。疑問を抱いたまま見つめる海に朝日が昇る。中心に小さな黒点。それが船の形だと気づいた直後、袖を引かれた。「どう?」藍が私を見上げる。その右目が海と同じ色に輝いていた。

2014-06-19 19:57:49
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、272。入港。 言葉を決めてから場面を考える。主軸にできるとは限らない。発想を広げる練習。

2014-06-19 19:57:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「下がって」外に出る直前になって藍が言った。「いいって言うまで、わたしの三歩後ろを黙って歩くのよ」突然何事かと思いつつも了承すると、藍は外開きの扉を両手で突き飛ばした。私の視界から全てが消えた。白い光を塗られた網膜をかばって目を閉じると、シャッター音の雨だけはなんとか認識できた。

2014-06-20 20:17:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、273。塗る。 その光は全て彼女のためにあるのだろう。

2014-06-20 20:17:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私が給油を終えて運転席に戻った時、藍はラジオで何かの試合の中継を聴いていた。誰かへ声援を送った直後にCMが始まり、一息ついたところで私に気づいて急に真顔になった。「いつからいたの」「今ですが」「そう」車が走り出してから中継は再開したが、熱中していたはずの藍は何故か黙ってしまった。

2014-06-21 23:22:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、274。熱中。

2014-06-21 23:22:24
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