ＡＰＨ百物語まとめ

マーニャ @sputnik1230

いつか国境がなくなる夢を見た｡そう云って紫の瞳の青年は白金の髪を靡かせた｡限りなく美しく赤々と輝く理想そのものだった｡｢前進せよ｣……その言葉の通りに前を見る青年が､時折咳き込むのを何度も見た｡時に殴られ､時に殴り返し――でも､それは確かに僕らの｢家｣だったんだ｡ #APH百物語

マーニャ @sputnik1230

川辺の洗濯女の慟哭の声が聞こえる｡あれは誰を悼んでいるのだろう｡見ては不可ない｡見ては不可ない｡紅茶を一口啜る度にじわじわと眠気が押し寄せてくる｡今､目を落としたら､二度と目が醒めないような気がするんだ｡沈み行く意識の底で､生意気で愛しい弟の顔がぐらりと歪んだ｡ #APH百物語

yen（留守） @golden_wheat

冬の夜、ジャムを舐めながらペチカの炎へ胡桃を投げ入れる。ぱち、ぱち、ぱち。弾ける火花が、誰かの横顔を描き出す。ぱち、ぱち。幾つも投げる。何でも投げる。やがて残った灰の中にはいつの間にか落としていたらしい僕の心臓だけが、すずの色に煤けて残っている。 ＃ＡＰＨ百物語

芙蓉 @_fuyou

洪水が始まった。地を這うものは飲み込まれ、国民は我先にと宇宙へ飛び立った。俺は大きな潜水艇を作り、仲間を入れて海に沈んだ。皆眠っている。「兄ちゃん」返事は無かった。俺も眠ろう。眠ればあの子に会えるかな？おやすみなさい、また会う日まで。海底にオリーブは届かない。　#APH百物語

∠浅葱 @heatshapedgear

トーニョはよく若い女を夕飯に招く。女はトーニョに見惚れながら、瑞々しく赤い唇で食卓のトマトを褒める。食後、トーニョは女と自室に消える。何してるのか俺は知らない。翌朝、朝一でトーニョは畑に行く。女はいつの間にかいなくなってる。トーニョのトマトは、今日も瑞々しく赤い。 #APH百物語

∠浅葱 @heatshapedgear

菊サンから風鈴貰ったヨ～！なんでも、身分違いの恋人が逢瀬の合図に使ってた風鈴らしいヨ。結局認めてもらえないまま入水しちゃったらしいケド…悲恋ネ。でも、風のない時でも時折鳴って涼しさを思い出させてくれるし、２匹の真っ赤な金魚は仲良く泳いでるみたいだし、お気に入りヨ。 #APH百物語

∠浅葱 @heatshapedgear

はぁ…旅行したいが時間も予算も無いと？何方から聞いたのです、仕方ないですねぇ…飽く迄幻視ですよ、いいんですね？では目を閉じて、この玉を口に含んで…決して噛まず飲み込まず。英でも伊でも行きたい国を思い浮かべて…見えました？満足したら返してくださいね、私の眼球なので。 #APH百物語

∠浅葱 @heatshapedgear

ストーカー被害？あー、ぽいことならあるで。１人で夜道歩いとったらな、足音が追いかけてきよるんよ。ウチが止まると音も止まるし…怖かったけど腹決めて振り返ったんや。そしたら、革靴履いた足首でな。めっちゃ気ぃ抜けたわー。だって足首だけなんやから、何もされる心配ないやろ？ #APH百物語