ひこ・田中さんによる映画『マレフィセント』評。「女を貶めている」

作家で児童文学評論家のひこ・田中さんによる映画「マレフィセント」評。物語構造は『アナと雪の女王』と同じとの考察。
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ひこ・田中@『あした、弁当を作る。』(講談社) @hicotanaka

1)『マレフィセント』観る。男を欲深い存在かサポーターとして描き、女二人を、細かな心の動きや、何かの克服を描かなくても、とにかくつなげれば、観客はそれをシスターフッドと思うだろうと考えているらしき物語構造は『アナと雪の女王』と同じ。

2014-07-30 10:45:55
ひこ・田中@『あした、弁当を作る。』(講談社) @hicotanaka

2)アニメ『眠れる森の美女』での三人の妖精はドジではあっても子どもを慈しむ心は強く、オーロラも彼女たちを愛していましたが、『マレフィセント』では家事育児に無能だから価値のない存在とされます。そしてオーロラは、それでも十六年育ててくれたには違いない彼女たちを一顧だにしません。

2014-07-30 10:46:08
ひこ・田中@『あした、弁当を作る。』(講談社) @hicotanaka

3)マレフィセントは男の裏切りによって生じた憎しみと向かい合い、次第に克服していくわけではなく、赤ん坊(オーロラ)を見たとたん、心は溶ける。「母性」が彼女を善に変える(この設定を創るために、三人の妖精は無能として貶められている)。そうして呪いを解くのは性愛ではなく母性となります。

2014-07-30 10:46:23
ひこ・田中@『あした、弁当を作る。』(講談社) @hicotanaka

4)強いマレフィセントを「母」と定めたオーロラは、もはや学習する必要もなく、アニメでは持っていた恋愛ゲームの機知すら失い、ただの「カワイイ」娘として描かれます(父や亡くなった母への感情すらなく)。彼女たちの共依存に於いて、男は余計な存在ですから父王は殺され、王子は後景に退きます。

2014-07-30 10:46:35
ひこ・田中@『あした、弁当を作る。』(講談社) @hicotanaka

5)『マレフィセント』は『眠れる森の美女』をマレフィセントの側から描いたのではなく、マレフィセントを強い「母性」として迎え入れた作品。彼女が入ってきたために不都合になった王や王子を外しただけ。これはシスターフッドではなく、女と男とのつながりを阻害し、女を貶めていると思います。

2014-07-30 10:46:47