GB鎮守府の航海日誌 2014年06月

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kai jester @kai_jest

それにしても目が痒い。この時期飛んでる何らかの花粉にアレルギーがあるらしく、この間から騙し騙しやってきた目がとうとう限界を迎えた。 シートベルト着用のライトが消えたことを確認して辺りを見渡すと、少し離れたところにアカシが座っている。 #GB鎮守府

2014-06-27 18:47:17
kai jester @kai_jest

大声で呼ぶわけにもいかないので、席まで歩いて声をかける。 「アカシ、花粉症っぽいんだが目薬ねぇか?」 「ん?ちょっと待って」 読んでいた英字新聞を脇に置き、こちらに向き直るアカシ。 「僕は眼科医じゃないんだけど、目を見せて」 それを言ったら医者ですらないだろ。 #GB鎮守府

2014-06-27 18:56:01
kai jester @kai_jest

「てーとくさん、また目が悪いっぽい?」 隣にいたのは夕立か、目を診察されてるので良く見えん。 「そーだよ、元々目は悪いけどな」 「前にも言ったけど、交換したら良いっぽい!」 無茶言うな。俺は人間である。 #GB鎮守府

2014-06-27 19:00:44
kai jester @kai_jest

「前にも言ったが、俺はまだ人間なんだよ。お前らみたいにできねーの」 「ふーん、ふっべん~」 「しゃーねーだろ、そういうもんなんだから」 「そんなに違いがあるようにはみえないっぽい?」 わかってねぇのはそっからかよ……。 #GB鎮守府

2014-06-27 19:04:29
kai jester @kai_jest

「おいアカシ、見ながらで良いからこいつに『人間と艦娘の違い』ってやつを教えてくれ」 「ダメだね、僕は今診察中なんだよ?君が説明すればいいじゃないか」 診察されてるのは俺なんですが、それは……。 #GB鎮守府

2014-06-27 19:11:21
kai jester @kai_jest

しょうがねぇ、説明しないで延々同じ話をされても困る。あー……。 「まず、人間と艦娘の一番違うところはどこだ?」 「うーんと、力が強い!」 「おーそーだな、じゃあそれはなんでだ?」 考え込む夕立。頭を抱えたい俺。 #GB鎮守府

2014-06-27 19:18:38
kai jester @kai_jest

「艦娘は人工物ってことだ。人間に近く作られた工業品なんだよ」 話しながら、俺は着任前に受けた教育の一部を思い出していた。 #GB鎮守府

2014-06-27 19:26:06
kai jester @kai_jest

――1900年代の終わり、ある会社の作った玩具が日本中でブームになった。脳波で人形を操り、人形同士を戦わせる格闘ゲームだ。 大雑把に言えば、艦娘のハードウェアはこの人形を元にしている。 #GB鎮守府

2014-06-27 19:35:14
kai jester @kai_jest

この人形の製造メーカーがその技術を発展させ、人型コンピューターとして市場に出すべく試作品を完成させた時に横槍が入った。 帝国陸軍である。彼らは「消耗品として扱える兵士」を求めていた。 #GB鎮守府

2014-06-27 19:44:47
kai jester @kai_jest

技術を接収し、独自に兵器としての開発を進め、2000年初頭に完成した『自立型二足歩行特殊車両』は、当初画期的な兵器として期待されていた。 しかし使い捨てるには高過ぎる運用コストが問題となり、実際は少数の試験運用のみ行われたようだ。 #GB鎮守府

2014-06-27 19:58:13
kai jester @kai_jest

本来ならミリオタのズリネタで終わってしまうはずだったこの兵器に脚光をもたらしたのは、人間相手の戦争ではなかった。 深海棲艦の出現である。 #GB鎮守府

2014-06-27 20:05:51
kai jester @kai_jest

既存兵器での攻撃はことごとく失敗。 打てる対策が無くなっていた頃、帝国海軍が何とか敵を撃沈寸前まで追い込み回収、実態解明へと動き出した。 #GB鎮守府

2014-06-27 20:22:26
kai jester @kai_jest

「人工物ってことは、私たちただのお人形さんってこと?」 艦娘の歴史を思い出していた俺に夕立が尋ねる。 「まぁそういうこった。お人形って言っても人間に極めて近いけどな」 そうだ、こいつらは単なる人形ではない。文字通り『生きた』人形なのだ。 #GB鎮守府

2014-06-27 20:25:31
kai jester @kai_jest

回収した敵を使った研究は、初めの頃こそ上手く進んでいたものの、その動作原理の解明にはなかなか至らなかった。既存の科学ではどうやっても説明できないのである。 #GB鎮守府

2014-06-27 20:36:21
kai jester @kai_jest

なりふり構っていられなくなった軍は、広く一般から意見を募る事で事態に対処しようとした。 そこで手を上げたのは小汚い爺さんだった。当然軍部は門前払いしようとしたが、隣に立っていたある人物を見て考えを改めることになる。 #GB鎮守府

2014-06-27 20:50:49
kai jester @kai_jest

その人物、いや『物体』は人間そっくりに動き、その拳は岩をも砕き、その胸は豊満であった。そして100%人工物でもあった。 老人が言うには、深海棲艦を動作させているのは魂、それも悪霊の類だという。 これには騒然となった。いきなりのオカルト、信じろと言う方が無理な話だ。 #GB鎮守府

2014-06-27 21:14:26
kai jester @kai_jest

しかし、目の前に実例を持ち出されている以上、受け入れるしかないこともまた事実である。 既に陸軍で運用実績のあった『自立型二足歩行特殊車両』をベースに深海棲艦研究で得た技術から『艤装』を作り、人工的な魂を載せて今の『艦娘』が誕生した。 #GB鎮守府

2014-06-27 22:03:59
kai jester @kai_jest

「お前らの後ろ、首の辺りに細長いスロットがあるだろ?髪の生え際ぐらいに」 そういうと夕立は自分の首筋に手を当てて確認する。 「あったっぽい!これ何なに~?」 「そこにお前らのコアユニットが収まってんだよ、艦魂とかの」 #GB鎮守府

2014-06-27 22:19:48
kai jester @kai_jest

「ふ~ん。でも私たち、お肌スベスベだよ?物っぽくないっぽい?」 「そりゃな、最近の義体はバイオやらナノテクなんかの最近技術で作ってるから、ほとんど生体部品なんだと」 「だから僕が医者の真似事もできるってわけだね」 両目を見終わったアカシが会話に加わってくる。 #GB鎮守府

2014-06-27 22:22:51
kai jester @kai_jest

「提督の目は、いつも通りのアレルギーだね。いつもの目薬を出すよ?」 「おー、助かる」 「その前に、今度ちゃんと人間の医者に診てもらう事。僕は医者じゃないからね」 どうせ出す薬はほとんど変わんねーだろ。 #GB鎮守府

2014-06-27 22:29:49
kai jester @kai_jest

「へいへい、その内ちゃんと行けば良いんだろ行けば」 「まったく、どうなっても僕は知らないよ」 いつもの説教だ、こうなったらうるせぇんだコイツ。 「ねぇねぇてーとく!さっきの話もっと知りたい!」 はぁ?さっきの話? #GB鎮守府

2014-06-27 22:33:54
kai jester @kai_jest

「さっきの話ってあれか、艦娘に使われてるバイオとかナノテクって話」 「そうそれ!夕立、そういうの好きっぽい!」 目をキラキラさせながら、身を乗り出して言ってくる。そういや夕立は救急医療部にいることが多かったな。 #GB鎮守府

2014-06-27 22:38:11
kai jester @kai_jest

「俺もそこまで詳しくねぇよ、それこそアカシに聞きゃあいいじゃねぇか」 「そっか!アカシせんせ、教えて!」 「あー……よし、じゃあ着くまでそこで教えてあげるよ」 目に見えて喜ぶ夕立、ほっといたらぴょんぴょん跳ねそうだ。 #GB鎮守府

2014-06-27 22:43:22
kai jester @kai_jest

そういやさっき、面倒なことを言ってくれやがったのがいたな。ちっと悪戯してやるか。 「おい、夕立は今日から救急医療部の配属な。アカシの下で看護師の真似事でもさせてやれ」 「ちょっと提督!どういうことだい?彼女は素人……」 「人が足んねーって言ってたな、補充だ」 #GB鎮守府

2014-06-27 22:47:42
kai jester @kai_jest

「いきなり無理だよ!ここはティーチングホスピタルじゃないだろう?」 「マーク、どーせしばらく大した急患はねぇだろ。ゆっくり教えてやれよ」 実際その通りだ、訓練漬けの毎日だからな。ざまーみろ。 #GB鎮守府

2014-06-27 22:51:50