【ブル鷹あおばを見ていられない青葉bot】

伊佐海老 @kinugasa_nakami

【ブル鷹あおばを見ていられない青葉bot】

伊佐海老 @kinugasa_nakami

……なんでしょう、青葉一体何を見てるんですかね。目をこすってみます。眼前の光景には何も変わりがありません。今度は自分でぴしゃりと頬を打ってみます。やっぱり変わりがありません。むしろ、『それ』はますます近づいてきています。そう、ブルドーザーに乗った、何だか線のシンプルな古鷹さんが。

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キュラキュラキュラ。 キャタピラ音を響かせながら、その古鷹さんは猛スピードで近づいてきます。 「あおばー」 どこか間延びした声で青葉を呼ぶ声が聞こえます。でも、なんでですか。なんで古鷹さんブルドーザーに乗ってるんですか？そしてなんで青葉に向かって突進してくるんですか！？

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眼前の光景は青葉の理解能力を完全にオーバーしていました。このままではいけない、轢かれてしまうと頭のどこかでは分かっていますが、身体がすくんで動きません。でも古鷹さんに轢かれて死ぬのなら悪くはないかな……などと他人事のように考えていると、青葉の目の前に小さな影が飛び出してきました。

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「ふ、古鷹さんッ！？」 青葉の前に立ちはだかったのは、古鷹さんでした。青葉がずっと抱えていた罪を許してくれた古鷹さん。青葉の大好きな古鷹さん。青葉と……その、お付き合いしてくれている古鷹さん。その古鷹さんが、艤装の砲口をブルドーザーに向けます。 「青葉はやらせないよッ！」

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砲口を向けられても、ブルドーザーの速度は一向に落ちません。意を決した古鷹さんがブルドーザーに向かって砲火を開きます！ ドウン！ 古鷹さんの主砲の砲弾は、過たずブルドーザーのバケットに命中、爆炎が上がります！ブルドーザーに乗った古鷹さんが！思わず青葉が身を乗り出すと。 「あおばー」

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キュラキュラキュラ。 なんと、ブルドーザーはまったくの無傷のまま、なおこちらに向けて突進してきます！乗っている古鷹さんにも変わりはありません。 ドウンドウンドウン！ 古鷹さんが主砲を連射しますが、何発砲弾を受けてもブルドーザーは止まりません。そして、バケットが古鷹さんに迫ります！

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もうだめだ、そう思って青葉が目をつむるといつの間にかキャタピラ音はやんでいました。恐る恐る目を開けると、両手を広げて青葉をかばう古鷹さんと直前でブルドーザーを止めた古鷹さんが見つめ合っていました。そして古鷹さんがぱっと笑って言い放ちます。 「そう、あなたブル鷹さんって言うのね！」

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青葉は思わず膝から崩れ落ちました。ブル鷹さん今一言もしゃべってませんでしたよね？なんで古鷹さんそのブル鷹さんと意思疎通できるんですか！？青葉が急に痛くなってきた頭を抱えていると、そんなことには構わず古鷹さんがブル鷹さんと会話を続けます。 「あなたは何しに来たの？」 「あおばー」

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「あおばを探してたの？」 「せいちー」 「あおばと一緒にいたいのに、見つける度にあおばはどこかに隠れちゃうの？それはひどいねえ」 古鷹さんが何事もなかったかのようにブル鷹さんと会話していますが、もう青葉には何が何だかわかりません。というかそのあおば隠れたんじゃなくて整地され……。

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「あおばー」 「うんうん、わかるわかる。青葉もね、前は私が声かけようとする度に逃げ回るから私もつらくて」 なんだか普通に愚痴トークが始まってるんですけど。青葉すごくいたたまれないんですけど！ 「でもこの青葉は私の青葉だから、間違えないでね」 青葉今すごく顔熱いんですけど！

伊佐海老 @kinugasa_nakami

「ところでどうしてあなたはブルドーザーに乗ってるの？」 そう、それ聞きたいです！しかも何で青葉が整地されそうになってたんですか！ 「あおばーせいちー」 「あおばと間違えちゃったの。それは仕方ないねえ。ふんふん、そうなんだ。それはすごいねえ」 古鷹さんお願いだから翻訳して下さいよ！

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その時青葉の背後から青葉によく似た声が聞こえました。 「ふ、ふるたかさん！？きょ、恐縮です！」 振り向くと、ブル鷹さんとよく似た青葉が立っていました。逃げ腰でいつでも逃げ出せる体勢をとっています。これがあおばでしょうか。 「あおばー！」 ブル鷹さんがどこか嬉しそうな声を上げます。

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ブルドーザーが轟音を上げてエンジンを始動します。あおばがひいっと悲鳴を上げ、駆けだそうとしたその時！ 「あおば！待って！ブル鷹さんが話があるの！」 古鷹さんの鋭い声に、あおばが立ち止まり、恐る恐るこちらを振り返ります。 「は、話ってなんです……？」 「あそこを見て」

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古鷹さんが指さしたブル鷹さんの背後。そこには足こぎのオモチャのブルドーザーに乗ったちいさなブル鷹さんがいました。あおばが素っ頓狂な声を出します。 「えっ……？ちびブル鷹さん……？」 「あおば、だめだよちゃんと責任は取らなきゃ」 「へ？」 「この子、あおばの子供なんでしょう？」

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あおばが顔の前で必死に手を振ります。 「ちちち違います！あおば、そんな覚えは！第一あおば、ふるたかさんとは手を握ったことも！」 「あおば、そういうの良くないよ。ブル鷹さん、あおばとの水族館デート本当に楽しかった、幸せだったって言ってたのに。あおば、ブル鷹さんの気持ちを裏切るの？」

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「あおばー！」 「あおびゃー！」 ブル鷹さんとちびブル鷹さんがあおばに向かって突進を再開します。古鷹さんと青葉はそれをどうにか避け、事態を見守ります。 「な、なんでこうなるんですかあああああ！」 あおばは全力で逃げ出そうとしました。けれど、100mも行かずにあえなく……。

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なお、あおばを見失ったブル鷹さんとちびブル鷹さんが去った後、巨大な重機に乗ったふるたかさんが現れ、あおばを掘り返していました。もはや脳が理解を拒否するような光景を青葉が死んだ目で呆然と眺めていると、横にいた古鷹さんが急に青葉の首に腕を回してきます。 「ふ、古鷹さん！？」

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腕をからめたまま、古鷹さんが青葉に熱っぽい視線を送ってきます。青葉の心臓が口から飛び出そうになります。 「ど、どうしたんですか！？」 「いいなあって思って……」 「な、何がです！？」 「私も、青葉の子供欲しい……だめ？」 「えっ……？」 古鷹さんの熱い吐息が、青葉を惑わします。

伊佐海老 @kinugasa_nakami

「ねえ、青葉……」 顔を赤らめた古鷹さんが徐々に顔を近づけてきます。目を閉じ、艶やかな唇をすぼめます。ああ、古鷹さん、古鷹さん……！いやだめですよ！よく考えたらここ外じゃないですか！誰かに見られたりしたら……！ああ、でも古鷹さんが！どうしよう！可愛いです！もう……！もう……！

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ぼすっ。 「……？」 青葉は、ベッドの中で枕と熱いベーゼを交わしている自分自身を見出しました。えっ……まさか、全部夢……？ 「おはよう、青葉。よく眠れた？もうすぐご飯だよ」 エプロンをつけてベッドのそばに立った古鷹さんが青葉に笑いかけてきます。 「古鷹さん、ブル鷹さんは……？」

伊佐海老 @kinugasa_nakami

「もう、何それ、まだ寝ぼけてるの？」 くすくすと古鷹さんが笑います。ああ、やっぱり夢……。青葉はベッドに突っ伏しました。なぜあんなハチャメチャな夢を……というかどうせ夢なら古鷹さんともっとこう、色々……！青葉が頭を抱えてうんうん唸っていると、古鷹さんが心配そうな声をかけてきます。

伊佐海老 @kinugasa_nakami

「青葉、大丈夫？」 やましさで古鷹さんの優しさが心が痛いです。青葉、欲求不満なんでしょうか……。その時、窓の外からかすかな振動が伝わってきました。 「あの音は……？」 「ああ、鎮守府の中庭を改装するんだって。朝からブルドーザーが来てて。私も後で乗せてもらいに」 「絶対やめてぇ！」

伊佐海老 @kinugasa_nakami

～完～