空想の街　雑貨屋のとある一日

黎沓 @Re_TnoiSa

海の香りで飴売りは思い出した。確か、氷涼祭の時のお客さんのお店は海沿いではなかっただろうか。何屋さんだったか思い出せない。せめて食べ物を扱っていたならたどり着けたのに。そう思いながら歩いていると一軒の可愛らしい店が見えた #空想の街 #雑貨屋 #飴売 @saiki_verse_s

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少し離れたところに見覚えのある屋台。「あれは……#飴売 さん？」氷涼祭の時にとても可愛らしい飴細工を作ってくれたことを思い出す。 @Re_TnoiSa #空想の街 #雑貨屋

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店の小さな窓からこちらを見ているような人影がある。もしかして……。屋台を引き店の前へ行くと店の人が外まで来て出迎えてくれた。やっぱりあの時のお客さんだ。確かに海風のあたる素敵なお店。 #空想の街 #雑貨屋 #飴売 @saiki_verse_s

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「ここまで屋台を引いて来られたのでは大変だったでしょう。暑いですから中へどうぞ」#飴売 さんを店の中へ入るよう促す。 @Re_TnoiSa #空想の街 #雑貨屋

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「あ、えぇ、ありがとうございます」たどたどしく答えると彼女に笑われてしまった。今日は自分がお客さんだ。飴が溶けてしまうといけないので、できるだけ屋台を店の影になる所に置いて店内へ足を運ぶ。「お邪魔します……」 #空想の街 #雑貨屋 #飴売 @saiki_verse_s

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「いらっしゃいませ。狭いですが」店内には自分が好きで集めた雑貨がずらり。「何かお探しですか？」店内を眺める #飴売 に尋ねた。 @Re_TnoiSa #空想の街 #雑貨屋

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「屋台が涼しくなるようなものありますか……？ 飴が溶けてしまうので。」外に置いた屋台のほうを見やる。「あと、風鈴があれば いただきたいのですが……」 #空想の街 #雑貨屋 #飴売 @saiki_verse_s

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「どちらもございますよ」早速朝に準備していたものの出番だ。地下水のすだれと風鈴を用意する。飴が融けないように、ということであれば屋台を覆う形状が良いだろう。鋏でざっくりとすだれを切りアーチ状に整える。 @Re_TnoiSa #空想の街 #雑貨屋 #飴売

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整えるために使った針金は氷の女王から譲り受けたもの。彼女の吐息を纏っているので熱に負けることもない。こうして作ったすだれの脇に風鈴を括り付けて、これで完成だ。「いかがでしょう？風鈴はお好きな位置に取り付けることもできますよ」 @Re_TnoiSa #空想の街 #雑貨屋 #飴売

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「ありがとうございます……！」注文してからの彼女の手際は見惚れるほどだった。商品をさっと取り出し屋台に合うようにと手まで加えてくれた。お代を払ってさっそく取り付けようと扉を開けて外に出る。 #空想の街 #雑貨屋 #飴売 @saiki_verse_s

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ソラクジラは何処かに行ったようで元通りの強い日差しが降り注いでいた。「まったく暑いですねぇ……でも簾と風鈴のおかげで涼しく商売ができそうです」笑って飴売りは開いたままの扉のほうへ向いた。 #空想の街 #雑貨屋 #飴売 @saiki_verse_s

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すだれと風鈴が #飴売 さんの助けになりますように。そうだ、忘れていた。初めてのお客様には必ず渡しているもの。慌てて店を出た飴売さんを追い掛ける。「よろしければ、またいらして下さいね」四つ葉のクローバーのしおりを手渡す。@Re_TnoiSa #空想の街 #雑貨屋

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#雑貨屋 さんが手に乗せてくれたのは四つ葉の栞だった。「ありがとうございます！また必ずお伺いします」社交辞令ではなく飴売りは心からまた訪れたいと思ったのだ。この海の見える素敵なお店に。ちりん。うん、暑さは随分軽減された。 #空想の街 #飴売 @saiki_verse_s

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屋台を引いて遠ざかる姿を見送る。やっぱりとても良い人だな。素敵な人だ。氷涼祭での出会いに、そしてこの店を訪れてくれたことにそっと感謝した。@Re_TnoiSa #空想の街 #雑貨屋 #飴売

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「あ、」「なに？」隣を歩く芽衣ちゃんが突然立ち止まった。見れば、掛けていた鞄のバックルが外れてしまっている。「あちゃー」「これはダメだな」「どうする？」「この近くに店でもあれば…」視界に入ったのは太陽の看板。 @saiki_verse_s #空想の街　#雑貨屋　#秒針はとまらない

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外から声が聞こえてきた。すだれから顔を覗かせれば可愛らしい二人組。ダメ、とかどうする、とかどうやら困っているようだった。可愛い女の子が困っているならば「どうかしましたか？」声を掛けずにはいられまい。@hrsrh_a #空想の街 #雑貨屋 #秒針はとまらない

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ふいに声をかけられて、そちらを向けば優しそうな店員さんがこちらを見ていた。「ここって何屋さんなんですか？」「雑貨屋だよ。リュカはちゃんと見てから発言した方がいい」「う、その、鞄の器具とかってありますか？」　@saiki_verse_s #空想の街　#雑貨屋　#秒針はとまらない

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「鞄の器具？」見るとバックルの外れた鞄を持っている。どうやらそれで困っていたらしい。「簡単な修理ならできますし、鞄も少しは取り扱ってますよ。まずは店内へどうぞ」こう暑くては、具合も悪くなってしまうというものだ。@hrsrh_a #空想の街 #雑貨屋 #秒針はとまらない

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「ありがとうございます！」親切な店員さんの言葉に促されて店内へと足を踏み入れる。「すごい…」中はたくさんの雑貨で溢れていて。ずらりと並ぶ綺麗なものや可愛いものに、芽衣ちゃんも小さく息を漏らした。　@saiki_verse_s #空想の街　#雑貨屋　#秒針はとまらない

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二人は店内をきょろきょろと見渡している。「ウチで扱っている鞄はここの一画に。修理するならバックルを取り替えることもできますよ。あ、これどうぞ」冷えた麦茶を差し出す。@hrsrh_a #空想の街 #雑貨屋 #秒針はとまらない

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「あ、ありがとうございます！」有難く冷えた麦茶を飲み干す。美味しい！芽衣ちゃんは店員さんに選んだバックルを渡している。置いてある品はどれもセンスがよくて、時計職人としての血が騒いだ。　@saiki_verse_s #空想の街　#雑貨屋　#秒針はとまらない

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手渡されたバックルはシンプルなものだった。元々あったバックルと取り替える。これで今まで通り使えるだろう。それだけでは少し寂しくて。蛇足かな、とは思ったけれど時計モチーフのボタンを縫い付けておいた。@hrsrh_a #空想の街 #雑貨屋 #秒針はとまらない

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時間を閉じ込めたボタン。先に進むことも戻ることも叶わない。だからこれを縫い付けると大体のものは丈夫になる。この鞄がまた壊れてしまうことがないように。@hrsrh_a #空想の街 #雑貨屋 #秒針はとまらない

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渡された鞄に芽衣ちゃんが目を丸くして、覗き込んだ私もわあ、と声を上げてしまった。時計モチーフのボタンがきらりと光る。思わず芽衣ちゃんの手を握った。「ありがとうございます…！」私たちにとって時計は特別だから。　@saiki_verse_s #空想の街　#雑貨屋　#秒針はとまらない