坂本龍一『戦メリ』を分析する(その4)

ナンバーが「4」なのはてきとーです。
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It happens sometimes @ElementaryGard

youtu.be/Exhj0Z0hpiQ 「戦メリ」の間奏部分です。Cメジャー調にしました。そのほうが譜面が見やすいから。

2014-08-15 14:25:11
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和声進行をよくごらんください。「レ・ファ・ラ」→「ラ・ド・ミ」つまりⅡm→Ⅵmの進行です。原曲はもっと凝った音の積み重ねをしていますがここでは単純化してあります。

2014-08-15 14:27:20
It happens sometimes @ElementaryGard

原曲を聞いていただきましょう。 youtu.be/RmsvwDmgR94#t=… 例のあの旋律の後、途中から違う旋律になりますね。このとき転調しています。四度上の調への転調。原曲ではG♭ですが、私のシーケンサーではCにしてあります。

2014-08-15 14:30:57
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youtu.be/Exhj0Z0hpiQ 単純化した楽譜。Ⅱⅿ→Ⅵⅿと先ほど解説しましたが、これ、解釈を変えると「CメジャーのⅡⅿ」→「GメジャーのⅡⅿ」の進行と読むこともできます。わかるかなー同じ機能(ここではⅡⅿ)の和音が違う調で順に鳴る、という解釈です。

2014-08-15 14:40:06
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Cメジャーの四度下にあるのがGメジャー調。またⅡⅿ→Ⅵⅿも四度下への進行。ともに四度下降の骨格です。それで「Ⅱⅿ→Ⅵⅿ」解釈と「CメジャーのⅡⅿ → GメジャーのⅡⅿ」解釈の両方がありうるわけです。前者が四度下進行で後者が四度下転調。ともに四度下。しつこく念を押しておきます。

2014-08-15 14:43:24
It happens sometimes @ElementaryGard

ここで「Gメジャー調」としましたが、原曲ではD♭メジャー調です。ということは…そうなんです主旋律部分の調です。つまり四度「上」に転調して間奏旋律♪ミレミレが鳴りだす「前」の調。聴く者にすれば「あれ?四度上に転調したんだと思ったら三小節目で元の調に戻っちゃうの?」と一瞬思う。

2014-08-15 14:48:18
It happens sometimes @ElementaryGard

なにいってんのかわかんねーというかたは改めてシーケンサー演奏をご覧ください。youtu.be/Exhj0Z0hpiQ 1~2小節目はCメジャー調で、3~4小節目がGメジャー調(つまり主旋律パートの調。転調する「前」の調です。原曲はD♭ですが)。

2014-08-15 14:50:42
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あくまでそういう解釈もできる、ということです。ふつうはⅡⅿ→Ⅵⅿ解釈で納得します。聴きようによってはⅡm→Ⅱⅿとも聴けるということです。

2014-08-15 14:51:58
It happens sometimes @ElementaryGard

その後こう演奏は続く。 youtu.be/Vtrros935OQ 3小節目でいきなり♯記号が出てきます。4小節目でもです。なぜにこうなってしまうのでしょう。

2014-08-15 19:44:04
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It happens sometimes @ElementaryGard

3小節目を静止画像でみてみましょう。ここ、実は転調しているの。Eメジャー調にです。Eメジャー調の、Ⅱⅿ。ここで皆さんには「えーっ!」と驚いてほしいです。驚かない?驚いてよ。 pic.twitter.com/R6w1JLYQWP

2014-08-15 19:47:24
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四度上や下への転調ならザラです。定石です。ところがこの転調はCメジャーからEメジャーへの転調、つまり長三度「上」への転調。短三度の上や下への転調もありふれた技なんですが、長三度の転調!ね、驚いてくださいな。

2014-08-15 15:12:54
It happens sometimes @ElementaryGard

縁の薄そうな調にいきなり跳んでしまうのに、違和感なく聞こえてしまう。なぜか?それはこの和音がⅡⅿの機能だから。これのひとつ前の和音もⅡⅿです、むろん違う調におけるⅡmではありますが。

2014-08-15 15:14:45
It happens sometimes @ElementaryGard

ここで音楽理論の心得のある方ならこんなツッコミをしたくなるでしょう。「同じ機能の和声だからってやたら転調していいわけがない。それってシンセキーボードで何か和声をひとつ、例えばC調のDmをでたらめに転調(トランスポーズ)して奏でるのと同じじゃないか。曲にならないよそんなの」と。

2014-08-15 15:17:20
It happens sometimes @ElementaryGard

ところがこの曲のこの間奏部分では成り立つのです。間奏部の前半を改めて聞いて(見て)いただきましょう。youtu.be/Exhj0Z0hpiQ Ⅱⅿ→Ⅵⅿと解釈するのが基本ですが、ひねればⅡⅿ(C長調)→Ⅱⅿ(G長調)解釈も可能。これは先に話したとおりです。

2014-08-15 15:19:33
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It happens sometimes @ElementaryGard

で、後半。 youtu.be/Vtrros935OQ 1~2小節 Ⅱⅿ(C長調) 3小節   Ⅱm(E長調) 4小節   V(同上)

2014-08-15 19:48:43
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It happens sometimes @ElementaryGard

おわかりいただけるでしょうか。「戦メリ」の間奏部分はⅡⅿの和音が転調を繰り返している(という解釈が可能な)のです。

2014-08-15 15:26:15
It happens sometimes @ElementaryGard

間奏部分から主旋律部分に戻る前後の演奏をお聞きください。ちなみに原曲です。調が私のシーケンサー演奏と違うのでそこはご了承ください。youtube.com/watch?v=RmsvwD…

2014-08-15 15:29:31
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It happens sometimes @ElementaryGard

私のシーケンサー演奏でいえば、この曲はG長調からC長調(間奏部分)に転調し、Ⅱⅿの和音がさらにG長調(この曲の本来の調です)やE長調に振動し、このE長調のVの和音に進んで、その後本来の調であるG長調に戻るわけです。

2014-08-15 15:32:10
It happens sometimes @ElementaryGard

「E長調がG長調に転調?また唐突な転調ですね」とツッコミを入れたくなったあなたは正しい。実はE長調からG長調に転調するのではなく、正しくはE長調→E短調→G長調に転調していくのです。

2014-08-15 15:33:59
It happens sometimes @ElementaryGard

E長調→E短調。ここがちょっと難しい。端折って説明するとですね、この二つの調はⅤの和音についてはまったく同じになるのです。東北新幹線と長野新幹線が、ある区間では同じレールを走るようなものです。「同じレールじゃないよ!」そういう鉄っちゃんのツッコミは却下。比喩表現だから大目に見て。

2014-08-15 15:37:33
It happens sometimes @ElementaryGard

まとめてみましょう。間奏部分の前後でこの曲はG長調→(ここから間奏部)C長調→G長調→C長調→E長調→E短調→(ここで最初の調に戻って)G長調 と目まぐるしく転調していくのです。

2014-08-15 15:42:26
It happens sometimes @ElementaryGard

ああ、ちなみにE短調とG長調は、鍵盤をたたくとわかりますが同じ音でできています。並びが違うだけで同じ音列。だからE短調→G長調はすっと進みます。

2014-08-15 15:43:18
It happens sometimes @ElementaryGard

この離れ業が可能なのは、龍一先生がマイナーコードの四度下降進行をよく使うからです。お気に入りなんですよ。なぜお気に入りなのかご本人もうまく説明できないでいるようですが。この進行は、さりげなく転調を忍び込ませられるから使い出がある。それが答えです。

2014-08-15 15:46:53
It happens sometimes @ElementaryGard

Ⅱⅿ→ⅥⅿとⅥm→Ⅲⅿの二つのことです。「戦メリ」では前者が間奏部で大活躍、そして後者が主旋律部で大活躍します。後者について別の機会にじっくり論じてみます。

2014-08-15 15:48:46
It happens sometimes @ElementaryGard

世界的名曲でありながら、この程度の分析すらなされてこなかった不幸な子。それが「戦メリ」です。

2014-08-15 16:00:11