ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/11/21

ジュン @jun50r

#twnovel 長年亭主関白を気取っていたが、妻が入院した今、自分一人では何もできないと気がついた。妻の有り難みが身に染みて分かったのだ。だが妻は言う。「あなたらしくありませんよ。私に『何を寝てる。早く家に帰って家事をしろ』と言ってくだされば、私の病気はすぐにでも治るのに」

黄金の米菓子 @OK_1111

#twnovel 新たな星を創造しようとディテールに関して熟考していたら地球がスーパーノヴァを起こして吹き飛んだ。その眩しさに私は目を細める。なるほど。私が右も左もわからない時期に創った不細工な小細工もあんなに美しい光を放つのか。ふむ。今度創る星はモザイク無しで見られるといいな。

のおの @noz_on_tw

臙脂の上着とストール、アイラインも臙脂と言えなくもない。高貴な紫と血の赤が混ざった色、それが温かそうに見えても仕方がないでしょう。温度のない床に寝そべって、精一杯温かいふりをする。身体を撫でるのは午前二時の素気なさだけ。朝日よ、早くこの窓を割って頂戴。寒いよ。 #twnovel

泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 路上で眠るには厳しい季節になってきたのに眠るところが路上しかない。吐き捨てられたガムから砂利を取って口に入れる。煙草臭い他人の唾の味がする。離れたところで夢見る若者がギターを弾きながら希望を歌っているが、それは私かもしれない。今は十年前に見た夢の中かもしれない。

ひょろ @hyoro4779

『タッグ』 #twnovel 「あんたが眠らせる。その後のことは俺がやる。どうだ？」「たしかにいい考えだわ」「人間も、まさか睡魔と淫魔が手を組んでくるとは思ってないだろうさ」「でもね、私にはあなたが一方的に得をしているようにしか思えないの」

@K_Ichida

#twnovel たくさんの人が膝を抱え、ぼんやりと沖をながめていた。だが、いつまで経っても船は来ない。「船を作らなきゃ」「船長を雇わなきゃ」口々につぶやくけど、誰も立ち上がろうとしない。やがて船待という街ができた。永遠に船の来ない街。人々は死ぬまで空想の船の話をしてすごした。

@olive_sw

夕方月を眺めていたらするすると梯子が下りてきた。現れたのはうさぎである。相棒が風邪を引いたので餅つきの助手がほしいという。興味があったので梯子を上って月まで行く。そこで一晩中餅つきをした。お礼としてもらった箱をあけてみると中には小さな三日月が入っていた。 #twnovel

明宏訊 @aliceizer

#twnovel 帰宅した正人は、テーブルの上に置かれた料理に目を丸くした。仰々しく並べられた皿には、マジックやらボールペンやらが、あたかも心を込めた料理のように盛られていたからである。「どう？今夜は手によりをかけたのよ」怖ろしいことに、ものすごい音を立ててマジックを噛み始めた。

N.T.Works/凪司工房＠介護生活中 @nagi_tter

#twnovel 「痴漢！」そう言って僕の手を取ったかつての教え子は駅の外に連れ出し、金をせびった。彼女は金が無くなるとまた現れ、痴漢したことをバラすと金を無心した。その際何故か他の女と付き合うなと約束させられた。訳が分からない。「痴漢してないよな？」妻はそ知らぬ顔でキスをした。

@sorede2

#twnovel ダイヤルＱ2で知り合った。携帯に来た写真は凄い美人だった。「あたし宇宙人だけど、いいかしら？」「ぜんぜん問題無いよ」俺は苦笑いした。夜、都庁前で待った。激震、ビルの破片が降り――巨大なＵＦＯが現れた。凄い美人が微笑みながら降りてきた。体長２００ｍ近い美女が。

@Repoch

集まった連中は一人ずつ自分のイニシャルを刻んだ。天球儀の星座みたいだと誰かが言った。俺は芳一の怪談を想像していた。｢さよなら｣刻み終えると皆で別れを告げた。彼女に乗るのもこれが最後。｢6年間、ありがとう｣翌朝そのブランコは撤去された。 #twnovel

140字物語 @shortshortshot

俺は怖い話が大の苦手。少しでもそんな素振りがあると耳をふさいでしまう。今日も会社で部下が「課長、霊の話なんですが…」と切り出してきた。やめてくれよ仕事中に。逃げるように休憩室に行くと部長に捕まった。「君、霊の件なんだが」何だよ部長まで。嫌がらせも程々にしてくれ。 #twnovel

かわうそ @kawauso0815

#twnovel どうも、猫です。訳あって野良猫やってます。もうすぐ12月。寒くなりましたね。風邪なんかひいてませんか？この時期になるとさすがに野良猫も暖が欲しくなります。人肌が欲しくなります。あっ！でも勘違いしないで下さいね。暖まりたいだけで、馴れ合うつもりはないですから。

小高まあな @kmaana

昼休み、本を読むふりをしながら、グラウンドの方を眺める。上着を脱ぎ捨てて、Yシャツの袖を巻くって。はしゃぐクラスメイト。足元でまう砂埃。どろだらけなのに気にしていないよう。彼がゴールを決めた。嬉しそうな顔。可愛い。もうすぐ、教室へ戻ってくる大勢の足音が聞こえる。 #twnovel

水木ナオ @nayotaf

「それでは、新婦のエスコートを、弟さんにお願いします！」ぶっとビールを吐き出しそうになる。聞いてない。昔っからそうやって勝手に決めて、偉そうでうざくて、さっさと嫁にでも行っちまえと思ってたよ。念願叶ってめでたく今日。笑顔の姉に腕を取られる。鼻の奥がつんと痛い。 #twnovel

穏やかに健やかに(๑´◡`)_旦 @chotto1koto

#twnovel プチトマト刑事は健康診断に来ていた。バリウムを飲み胃の検査を受ける刑事。すると正体不明の影が…。医師が聞く「もしかして、今朝何か食べましたか？」「食べたというか、まぁいつもの習慣でプチトマトを…」。その後、医師からこっぴどく叱られることを、まだ彼は知らない。

穏やかに健やかに(๑´◡`)_旦 @chotto1koto

#twnovel プチトマト刑事は取調室で女の容疑者と向き合っていた。犯行の動機を切々と話す女。その話を刑事はプチトマトをつまみながら聞く。すると、刑事の眼から涙が流れ落ちた。刑事がもらい泣きをしたとチノパンは思うが、実はプチトマトの美味さに感動しただけなのを、彼以外は知らない。

Gabb-- @itisnot

皿の上に見知らぬものが乗っていた。「なんだこれ？」レタスと書いてある。色は濃紺で質感はまるで岩のようなのに、ちぎられて整列したその形は「レタス」という字。フォークで突こうとすると避けられる。断片がめくれあがって、ちらりと眼が覗く。「…」これ食べていいやつなのか？ #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel 殴り屋などという商売柄、何か勘違いしたチンピラに絡まれることもある。八代目は冷めた顔で腕を組んで直立し、一方的に殴られ続けた。「うちの拳はお客がわざわざ金出して、貰って下さるもんです。タダでくれてやる訳にはいきません」八代目は最後まで姿勢も表情も変えなかった。

藤原ヒヨリ @HiyoriF101

ある満月の晩から俺は同じ夢を見続けている。一人の見知らぬ女が出てくる夢だ。夢の中の俺はその女を愛していて、女もまた夢の中の俺を愛しているようだった。それなのに、どうしてなのか、その夢はいつも夢の中の俺が女の首を絞めているところで終わるのだ。大きな月を背景にして。 #twnovel