プロ太郎P:2014年9月8日
猫は私の前まで来るとボトッと鼠を足元に落とす。落ちた瞬間に凄まじいスピードで走り出す鼠。 テレビ台の下に逃げ込む鼠。呆然とする私。
2014-09-08 20:41:58猛烈な勢いで追かける猫。テレビ台の下に鼻を突っ込む猫。シャーッと奇声を上げる猫。手を突っ込んで、引っ掻き回す猫。あきらめる猫。その場に座り込むと毛繕いを始める猫。 私は(よし、殴ろう。)と決心した。
2014-09-08 20:42:04電気の紐でシャドウボクシングしている所をお母さんに見られた。お母さんの蔑んだ眼が痛かった。悲しい気持ちで部屋に戻る。猫が自分のシッポを追かけてぐるぐる回っていた。
2014-09-08 20:42:43昨日よりも今日、少しだけ優しい気持ちになれるかもしれない。(今日は一緒に寝よう?)と目で語りかけると猫は寄り添ってニャーンと鳴いた。 十五分後、兄が(寒い寒い。)とつぶやきながら部屋に入ってきて猫を強奪して行った。
2014-09-08 20:42:47兄は猫が好きすぎてたまに発作を起こす。猫を捕まえると両手で持ち上げて顔をぺろぺろ嘗める。猛烈に抵抗する猫。兄は多少引っ掻かれたぐらいではびくともしない。顔がぐっしょりぬれてきた頃には、手も足も尻尾も力なくぶら下がっている状態。兄は満足すると手を離す。
2014-09-08 20:43:23その場に崩れ落ちぐったりして動かない猫。陵辱された猫を見てなぜかニヤニヤするじじい。ニヤニヤするお母さん。(なんか、嫌な家族だなぁ。)としみじみ思う私。
2014-09-08 20:43:27じじいの部屋から凄い音がして怒号が聞こえてきた。何事かと向かう途中、走り去る猫とすれ違った。 じじいは(あの痩せ猫を、殺してやる。)と物騒な事を言っている。手に持ったこけしの首がもげていた。 その日一日、猫は姿を見せなかった。
2014-09-08 20:44:27夜、なにか不安になってじじいの部屋の様子を見に行った。やっぱり、奴はじじいの布団の上で箱座りしていた。じじいは苦悶の寝顔でう~う~言っていた。 奴は、殺られる前に殺る気だ。
2014-09-08 20:44:34じじいが猫カーペットに正座してテレビを見ていたときだった。後ろから歩いてきた猫がリモコンを踏んだ。 テレビの画面が変わった。 じじいが(ばっ婆さんか?!)と叫んだ。
2014-09-08 20:45:15朝起きると顔の五センチ横に猫が座っていた。なぜか私の顔をジィーっと見ている。 私はちょっと照れくさくなって (いつからそこにいたの?ほんとに私のこと好きだなー。)の「い」を口にした瞬間、いきなり猫は私の左目に猫パンチを食らわせる。 なにがなんだか、意味がわからない。
2014-09-08 20:45:48猫が家を出たきり帰ってこない。 一週間程度帰ってこないことは何度かあった。が、こんなに長いのは初めてだ。兄はプチ廃人になっている。日曜日の朝、じじいが猫を探しに家を出て、夜遅くにパトカーで帰ってきた。
2014-09-08 20:47:30それからじじいは猫カーペットに座らなくなった。(俺が猫のカーペットを奪ったのが悪かったのか…。)と頻りに気にしている。(それは関係ない。もしそうだとしても今更遅いっての!)と私は思った。 今日も猫は帰ってこなかったけど、私は、少しだけじじいのことが好きになった。
2014-09-08 20:47:34中学の夏休み、私は夏目漱石の岩波判全集を読破しようと市の図書館に通いつめたことがあった。感想文で『坊っちゃん』を題材にしたものを書いたのがきっかけだった。 そのなかに『猫の墓』と題した文章があった。
2014-09-08 20:48:16小説家としての夏目漱石を有名にしたあの「猫」は、実際は溺れ死にでなく衰弱して死んだという。台所で硬くなって死んでいたそうだ。
2014-09-08 20:48:32衰弱して座布団に粗相する猫にひどく冷淡な漱石の妻だったが、死んだと聞くとわざわざその死に様を見に行った。そして墓をつくって墓標をたてるから何か書いてくださいと頼んだという。
2014-09-08 20:48:36綺麗ずきな母が(家を汚すから)といって、長いこと猫を飼うことはできなかった。でもふとしたきっかけで飼うことになった。一緒に暮らして、明るさや感情の変化で猫の目がいろいろ変わるを知った。
2014-09-08 20:49:48