サプライズとは相手を驚かせることに意味がある

上原 恵 @Uehara_Kei

【ｻﾌﾟﾗｲｽﾞとは相手を驚かせることに意味がある】日本の二月中旬は独特の空気に包まれる。色で例えるならば桃色一色といったところか。世の女性達が妙に浮足立った感じだ、いや女性だけではない、男共もそわそわと落ち着きなくなる。ﾊﾞﾚﾝﾀｲﾝってすごいな。 #ss_01

上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「おーっす」ｶﾞﾗｯと教室のﾄﾞｱを勢いよく開けて入ってきたのは雅だった。「ほい、ﾁｮｺだ」登校して早々、両手で贈呈されて思わず雅をまじまじと見つめてしまう。「えーと、誰からだ？」すると、愚問だと言わんばかりに爽やかな笑顔で返ってきたのは。 #SS_01

上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「何言ってんだ、俺からに決まってるだろ」「俺にそんなｼｭﾐねーからな」じとっと睥睨してみれば、雅は大仰に笑って手にしていた箱を机に置いた。「んな訳ねーだろ」ですよねー。とこちらも笑うと、雅はﾊﾟｶｯと箱を開けた。 #SS_01

上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 中身はｼﾝﾌﾟﾙだが丁寧に作られたﾁｮｺﾚｰﾄｹｰｷだった。しかも。「ﾜﾝﾎｰﾙか、気合い入ってるな」「じゃあ……」ﾆﾔﾘと口端を吊り上げる雅。「このｹｰｷを作ったのが旭と言ったらどうする？」「へ？」 #SS_01

上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei いやいや、それこそないだろ。まだ雅が作りましたと言われた方がﾘｱﾘﾃｨがある。「ｻﾌﾟﾗｲｽﾞとは相手を驚かせることに意味がある」「それ、旭の座右の銘だろ」ここまで口にしてﾊｯとする。――そうか。 #SS_01

上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 高校に進学して離れてしまった幼なじみﾄﾘｵのひとり、旭。性別を忘れそうになるくらい豪快な性格をしている彼女は、数々のｱｲﾃﾞｱを生み出し、実現させることに暇がない。昔から様々な趣向を凝らしたｻﾌﾟﾗｲｽﾞを受けてきたが、今回のは斜め上すぎる。 #SS_01

上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「お前らなー」知らない所で結託していたか。苦笑していると、箱の内側に貼り付けてあるものに気付いた。「ﾒｯｾｰｼﾞｶｰﾄﾞ？」剥がしてｶｰﾄﾞの文章に目を走らせて――そのまま机に突っ伏してしまう。「真のｻﾌﾟﾗｲｽﾞだ」 #SS_01

上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 雅の声音が完全にひやかすものになって、俺はもう一度記されているﾒｯｾｰｼﾞを見遣った。一体、何段仕込みにしたんだよあのﾔﾛｳ！顔がだんだん熱くなってきて、耳も赤くなってるのが指摘されなくても感じられる。 #SS_01

上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「ﾘｱ充爆ぜろ」ﾄﾄﾞﾒとばかりに放たれる雅の一言にﾍﾟﾝｹｰｽを力任せに投げつけた。斜め上からを訂正する、正面からの強烈な一撃と同等だ。備わっていたﾌｫｰｸでｹｰｷを頬張ると、ﾒｯｾｰｼﾞと同じくらいの甘さが広がりますます撃沈した。【Fin】#SS_01